短編作品まとめ

うるえ

誰かの証

「僕が生きた証が、少しでも君に残っていればいいんだけれど」


 病弱な君はまたそんな弱音を言う。


 君の存在?そんなもの、痛いくらいわたしの中にこびり付いているというのに。

 毎日毎日、痛くて痛くて堪らないというのに。


 そんなことを口にすれば何だか認めたみたいになってしまうだろう?

 それも癪なので、わたしはただ黙っておく代わりに「馬鹿だなあ、君は」とぽつりと零した。声が震えた。


 君が笑った気配だけが背後に残っていた。

 カーテンが誰も居ないシーツにふわりと陰をおとした。

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