不安
けいこ
不安
ゆらゆらと透明な波が私の体の中に流れ、私はその波に揺られ頭がくらくらするのを感じる。私はぼんやりとこの不思議な気分が一体どのようなものであるかを考えている。頭の痛みを微かに感じながら見つめる先にはいつも何もないのだが、最近は私を襲ってやまない不安しか広がっていない。不安は何か建設的な作業ー例えば料理とか、そういったものーをすればその時は消え去ってしまうのだが、一度それが終わると手持ち無沙汰でそわそわしてしまう。かといって本を読んだり勉強したりといった暇つぶしすらできない。頭を使う気が起きないのである。それで結局寝るという手段に出るのだが、寝ることと、料理と、思いつきで物を書く以外できないということを悟ったとき、これからどうやって生きていけばよいかという不安が私を襲ってやまない。こいつは普通とは違ってちょっとおかしい。こいつには目先の未来よりそのずっと先の将来を案じるという特徴がある。目先の心配ならまだ時間を使う価値があるかもしれないが、遠くの未来など読めもしない。それなのに無性に気になるのである。ああだこうだと現実と夢の間をふらふら彷徨った挙句、ネットでそれらしきものを調べ、検索が下手なのか結局良い情報が得られないまま終わる。こんな有様だから全然心配している案件は進歩せず、余計に不安感を増長させるのだった。この不安感というものは自分が「無能」だという事実よりも「無力」であるという事実からくるものだと思う。そもそも能力がないのであれば開き直れるのだが、もともと能力はあるのに使えない、その歯がゆさと絶望感が焦燥感を掻き立てる。人間に本来備わっているような健全な精神、毎日の安定した暮らし、少しばかりの自信と希望、これらのものがいつしか自分の中から無くなっていた。本当は「普通」が羨ましくてたまらない。いつしか気づいた頃にはもう私の精神はからっぽになってしまっていた。こういう自分に直面して精神が麻痺しているのだろう。きっとどこかで現実を受け入れられないのだろう。どうだ、私を痛めつけている脳の血管は今も脈を打っている。
不安 けいこ @keiko_04
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