閑話SS 神田祭を見守る人々(学校編)
本日はSSの為、少し短いです。
本編では無いので読み飛ばして下さってもストーリーに影響は……無い?と思います。
また近況ノートの方に質問がありましたが、カレンが祭のことを「貴女」と呼んでいるのは女の子だと勘違いしているからです。誤変換ではありませんのでご安心下さい。
ご質問ありがとうございました!
では、どうぞ!
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神田祭の通う高校『
祭はそんな高校に通う高校二年生である。ちなみに鷲尾井高校を進学先に決めたのはシンプルに家が近いからである。本人はそもそも高校よりも興味があるものを見つけてしまった為、進学先など何処でもよく。加えて成績もお世辞にも良いとは言えなかった為、中学校の先生も進学先に何も言えず。更に両親もそこまで気にすることなく祭が行きたいところにというスタンスで……
そんな感じで決まった進学先、鷲尾井高校であるが――まさかその高校に今をときめくダンジョン配信者『天道カナ』が同時に入学してくるとは思いもしなかった。
まさか本当にこれといって特徴も無い学校に芸能人レベル、いや現代では大御所レベルの有名人が入学するとは誰も予想していなかったのである。
お陰なのか所為なのか、その影響もあってか一気に鷲尾井高校の名は全国デビューを果たし次年度は前年度からは考えられぬ程の入学希望者で溢れかえったとかなかったとか。
しかし、ここで天道カナの話をしてしまうとキリがない。
加えて今回の主役は天道カナでも、神田祭でもない。いや、祭に関わりがあるという意味では関係者といえるだろうか。
祭自身はそういった事に無頓着であるが、その容姿は半端なく優れている。十人が横を通り過ぎれば、十人が頬を赤く染めて振り返ってしまう。しかもチラチラと二度見ならぬ三度見、四度見してしまうだろう。
涼し気だがどこか気の抜ける印象を抱かせる眼差し。すーっと通った鼻筋は女性すら羨み、透き通るような白磁の肌は太陽の光を反射して光ってすら見える。
プロのモデルたちにも勝るとも劣らないその容姿は老若男女問わず、人の視線を惹き付ける魔性の魅力を秘めていた。
その魔性は既に小学生の頃から発揮されていた。
同じクラスになった男子も女子も皆がこぞって祭の周囲に集まり、どちらと一緒に遊ぶかでクラスを二分しそうになったぐらいだ。
そんな自分を巡った争いの中にあっても、祭は自分の容姿も含めて無頓着であった。周りが何をそんなに騒いでいるのか理解できず、結果的に両方のグループから距離を取った。
それによって困ったのは祭を巡って争っていた男女のグループである。当の本人からそっぽを向かれたとあっては、そもそもとして取り合いをする意味が無い。幼いながらに瞬時にそれを理解した彼ら彼女らは、早々に停戦協定を結んだ。
これが第一次神田祭争奪戦争の終幕である。
その後も似たような争いが繰り返されることになるが、その度に当時の小学校の同級生たちが間に入り仲裁を行うと同時に当時の様子を伝え続けた結果……祭の周囲には一種の絶対領域と化した。これが神田祭、中学生の頃の出来事である。
つまり不用意に入って騒ぎ立てることを自粛したということである。そうして祭はこれまた本人のあずかり知らぬところで、聖域の主になってしまったのであった。
それから更に時が経ち、現在の鷲尾井高校に入学することになった。
さほど有名な高校でも無かった為に地元の顔見知りが多く集まった結果、祭の絶対領域は継続された。
この頃になって祭はようやく自分の周囲が「そういえば少し静かになったかな?」と思い始めていた。でも特に気にするようなことじゃなかったようで、すぐにダンジョンとモンスター食材の事で頭を埋め尽くされていたが……
そんな鷲尾井高校二年A組での一幕。
「ねえ、やっぱり神田君って……美しい、わよね」
「うん。何時までも見てられる……」
そんな到底クラスメイトの話をしているとは思えない会話をしているのは祭のクラスメイトの女子たちである。
登校して自分の席に座った祭の横顔を眺めては、ほぅと妙に熱の籠った溜息を吐く。それに同意している方もうっとりとした目で祭の方に視線を向けていた。
ちなみに当の祭本人は、探索者のとしての感覚から視線には気づいていても害があるものではないので特に気にしていなかったりする。こういう所は結構図太いのが神田祭という人間なのだ。
「もう私、神田君が男とか女とかどうでもいいわ。人間国宝として崇めたい」
「もう私の全財産で神田君の全身をコーディネートしてあげたい。そんで神田君の一部になりたい~……」
「あんたら、自分がヤバいこと口走ってる自覚ある?」
そんなトリップしている女子二人にツッコミを入れたのは、このクラスの委員長的存在(委員長ではない。というか委員長制度が無い)のキリっとした顔つきの女子生徒だった。
「ええ~、だっていいんちょも分かるでしょ? 神田君を見てるだけで幸せになれるこの気持ちっ」
「いや、まあ……分からないことも無いけど、ちょっとは自重しなさいよ。あんたら放送禁止スレスレの顔だったわよ」
「おっと、そりゃ失敬」
そう言って未だにトリップし続けるもう一人の女子生徒の頭を引っ叩いて現実に戻しつつ、モザイクが入りそうになっているらしい自分の顔を解して元に戻していく。
「ふう、戻った。それにしてもさあ、同じ学年に神田君とカナちゃんが一緒だなんてこんな幸せあっていいのかね~。あたしら前世でどんな徳を積んだのかな?」
「神田君はここに来るの知ってたからともかく、まさかあの天道カナさんが来るとは予想外過ぎたわよね」
「ああ~、確かにね~」
三人が思い出すのは自分達の入学式の日の出来事。
祭がこの高校に入学すると知っていたこともあり、新しい制服に身を包んだ祭のファッションショーを楽しみにしていたのだがそこに現れたのが大人気ダンジョン配信者の天道カナだった。
何かの取材か、はたまたドッキリか!?などと騒がれたが、結局は本当にこの学校に入学してきたのだから驚き過ぎて顎が外れそうになる始末だった。
「ねえ、その話で聞きたいことがあるんだけどさあ」
「うん、分かってる」
「天堂さんのあの配信の事だよね~?」
「そう、それ! あれって絶対にソウだったよね!?」
「「間違いない」」
会話の中に出てきたあの配信とは、数日前の奏の配信での出来事である。
優秀で実力もある探索者である奏がダンジョンでピンチに陥った時に助けに入った素性が一切不明の謎の探索者……しかし分かる人間が見れば分かってしまった。
あの謎の探索者の正体が神田祭であるという事実を。
クラスメイトの大半や、祭のことをよく知る過去の同級生たちなどはかなりの割合で気が付いている。というか、気づいていない者はそもそも普段から配信を見ない者達であり、見れば間違いなく気付くというレベルのものだが。
「でもさ変じゃない? あれが神田君だったなら天堂さんが何か気付いてもいいと思うんだよ。でも配信を見てる限り全然見てる様子無かったじゃん?」
「それは仕方ないんじゃない。だってあの二人、顔合わせたこと無いでしょ?」
「そういえばそうだったかも~。奇跡的なレベルで出会わないというか噛み合わない二人だったもんね~」
そうなのだ。
実はあの配信で奏がクラスメイトである祭に気が付かなかったのには、そもそも顔を合わせたことが極端に少なかったという理由があった。
奏の方は勿論配信者としての仕事で滅多に学校に来れないこともあるが、その数少ない登校日には逆に祭が探索者としての長期遠征などで休むことが重なっていた。
そんな本当に奇跡的なレベルのすれ違いによって、この二人が顔を合わせる機会は入学式を除けばこの二年間で皆無に等しかったのである。
「まあ神田君が何も言わなかったって事は、何か知られたくな事情があったのかもしれないかもだし、外野がとやかく言う事じゃないか」
「ねえねえそれよりもさ~……あの配信の神田君、ヤバくなかった~?」
「「もう最高だった」」
「何あれ何あれ!? 神田君が探索者をしてたのは知ってたけど、あんなに強かったの!?!? しかも戦ってる姿が美し過ぎるっ――」
「まるで天使が舞ってるのかと思ったわ。思い出すと――あっ、鼻血が……」
「いいんちょ、ティッシュあるよ~」
その後も朝のホームルームが始まるまで三人の神田祭談義は続けられた。
こんな感じで神田祭という学生兼探索者は多くの人間から愛されているのである。(一部に過激派アリ)
今日も鷲尾井高校はいつもと変わらぬ時間が過ぎていく。
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補足になりますが、4話で登場して祭に話しかけていた友人君は基本アホの子です。だから本気で祭が配信に出てきた謎の探索者だと気づいていませんでした。でも何故かテストの点数だけは良い不思議な子です。温かく見守ってやってください。
そんな訳で祭の正体が薄々周りに知られつつも大きな騒ぎにならなかった理由も含めた周辺関係SSでした。
楽しんでいただけたならとても嬉しいです! 最近思っているのはシリアスパートよりもギャグパートを書いている方が執筆がえらく進むなあということです。以上。
そんな感じで祭の周辺の様子、学校編のお話でした。
次回は本編に戻るか、それともも一つぐらい閑話を挟むか悩み中です。もしかすると前から言っているように、本編は次話から第二章に突入する為、2、3日お休みを頂くかもしれません。
もし明日の更新が無かったら、そういうことだと思ってどうか次の更新をお待ちくださいっ。近況ノートでもそこら辺はお知らせしますので、よろしくお願いします。
ではでは、次回の更新をお楽しみに!!
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