第9話 神田祭は決めました!
投稿、遅れてしまってすみませんでした!
本日分更新します! では本編をどうぞ!
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最初は心配というか不安しか無かった配信への参加だったが、終わってみると何というか不思議な満足感というか達成感を感じていた。
「祭さん、お疲れさまでしたわ。どうでした? 実際に配信者の配信に参加してみたご感想は?」
「お疲れさまです。そうですね……何というか凄かったです。姿は見えないはずなのにそこに視聴者がちゃんといて、その沢山の人達と交流している。これまでに体験したことのない感じで圧倒されちゃいました」
「それは良かったですわ。ですがもっと別に無いんですの?」
「え?」
「楽しかったですか?」
そう聞いてきた鳳月さんだったが、僕が何と答えるのか確信しているような自信満々の顔をしていた。
僕は別に天邪鬼では無いから素直に言うけど、ちょっとだけ反対の事を言ってやろうなんて思ったのは内心を見透かされたようで恥ずかしかったからなのか。
「……楽しかったです」
配信の中でも言っていたはずの言葉なのに、こうして面と向かって改めて言うのは苦手だ。
鳳月さんは僕の言ったことが自分の想定通りだったのか満足そうなドヤ顔を披露する。
「ふふふ、そう思っていただけたのなら配信をした甲斐がありましたわね!」
「実際に体験してみて想像とは結構違っていて驚きました。あんなに和気藹々と楽しそうに進んで行くもんなんですね」
「まあいつもあんな感じという訳ではありませんわ。中には祭さんの想像するような所謂アンチという方々もおりますし。あんまり言いたくはありませんが、誹謗中傷のようなコメントなんかもよく見かけますわね」
「鳳月さんみたいな人気配信者でもそうなんですね」
「むしろ人気が出てきたからこそ、でもありますわ。有名税みたいなものですわね。でも……それ以上に私の配信を楽しみにして楽しんでいる方々がもっと沢山いる。祭さんもさっきの配信でそれはお分かりになったでしょう?」
確かに、そうなのかもしれない。
まだ一回、しかも体験みたなことしかしていない身で何が分かるんだって言われるかもしれないけど。
それでも突然ゲストとして乱入していった僕を温かく歓迎してくれて、僕の言葉に楽しそうな反応を返してくれる視聴者コメントを見ていると僕の方まで楽しくなっていった。
「――祭さん、別に今この場で決めろなんて無茶なことを言うつもりはありませんわ。でももし、今日のことで配信者に興味が出てきたのであれば何時でも私に連絡をくださいまし。お待ちしておりますわ」
「……あの、聞いてもいいですか?」
「はい? なんですの?」
「鳳月さんはどうして配信者をしているんですか?」
正直、気持ちとしてはダンジョン配信者というものに大分興味は出てきていると思う。改めて話を聞いてみたいなあ、なんて思えるぐらいには心境の変化というか揺れがあった。
それでも僕がはっきりと出来ないのは、自分なんかが本当に配信者になってもいいのかと考えてしまっているからだ。
何か芸能人よろしく凄い理由とか信念を持っていないと踏み込んじゃいけないというか、軽々しい気持ちで手を出しちゃいけないような気分になってくるのだ。
だからこそ折角身近な場所にその本人がいるから聞いてみたかった。どうして配信者をしているのか。何で配信者になったのか。
そんな僕の不躾にも聞こえるかもしれない言葉を聞いた鳳月さんは少し悩んだ後、はっきりとした口調で言った。
「私の場合は……単純にやってて楽しいからですわね。言うなれば趣味の延長みたいなものでしょうか? まあそんな感じですわね」
「……なるほど」
「もしかして祭さん、配信者の皆が皆、高尚な理念を持って活動しているとでも思っているんですの?」
「いや、まあ、そうですかね?」
「それは大きな勘違いですわね。もちろん中にはそういう理由で頑張っている方もいらっしゃいますが、少なくとも自分の目標が高尚か?なんて聞かれて迷いなく『はい』と答える人間の方が少数ですわ。それに今の時代、配信者なんかそこら中に溢れていますでしょう? 人気があるかどうかは抜きにして」
「……そんなもんですか?」
「ええ、そんなもんですわ。ですから何でもかんでも興味があるなら飛び込んでみるのがいいですわよ。あとで後悔しても遅い、なんてことも世の中には溢れているんですから」
「凄い大人の話を聞いている気分になってきました」
「失礼ですわね! これでもまだ学生ですわよ! まあ見たところ祭さんよりは年上でしょうからお姉さんであることに間違いありませんけど!」
思い返せば僕が探索者になった時だって別に凄い理由とかがあった訳じゃなくて、美味しいモンスター食材を見つけたいって理由だったなあ。
確かにそれが人に自慢できるような高尚な理由かと言われると、ちょっと自信ないかもしれない。でも恥じるような理由でも無いけどね。
う~ん、今の鳳月さんの話を聞いてなんだか肩の荷が下りたような気分になった。
「ちなみにですが、ダンジョン配信者としてギルドに登録すると色々と特典があるんですのよ?」
「特典、ですか?」
「ええ、例えば――ダンジョンには国が管理する関係上、一部立ち入ることが出来ない場所やそもそも立ち入り禁止のダンジョンがあるのはご存知で?」
「それは知ってますけど……もしかして――」
「ご想像の通り、ギルドに配信者として登録しているとそうした場所への立ち入りを許可される場合がありますわ」
「なん……ですと……?」
そんな話聞いたことも無い。そりゃあ配信者じゃないんだから当然か。
僕自身も何度かダンジョンを探索していてその場所を目にしたことがある。その内の一部は探索者ランクでゴリ押しして入ることが出来たんだけど、それでもやっぱり踏み込めない場所は存在した。
いくら僕だって立ち入り禁止区域に無断で入って犯罪者になるような真似はしたくなかったからね。
でも、配信者になればソレが出来るようになる……?
なにその美味し過ぎる特典っ!!
「まあもちろんそれには厳しい審査を通過したり探索者と配信者、双方できちんとした実力のある人物と認められる必要はあるのですが「鳳月さん……いえ、先輩!!」――ど、どうしましたの祭さん? せ、先輩?」
「僕、決めました! 配信者になります! まだ見ぬ未踏の領域に存在するモンスター食材の為に!!」
「……」
――そう堂々と宣言した祭を見て、カレンは内心で「チョロ過ぎる……」と思っていた。
先程の特典があるという発言は、確かに祭のダンジョン配信者への興味を惹くために言った言葉であるしあわよくばとも思っていた。だからこそ探索者として祭が一番興味を持ちそうな立ち入り禁止領域の話を持ち出したのだ。
けれど、まさかそれに釣られて本当に配信者になるという宣言を聞けるとは思っていなかったのだ。
むしろそんな素直過ぎる祭の姿を見てこの子は大丈夫なんだろうかと逆に心配すらしてしまう始末だった。
とは言え、だ。
元々、カレンは祭を配信者として勧誘し自分達の事務所に所属させようなんて考えていた強かな女でもある。
言質は取ったと、ここぞとばかりに祭を囲い込むように行動に移る。折角乗り気になった祭の気が変わってしまわないうちに――
「本当ですの!? では善は急げといいますから、早速私の所属する事務所を訪問する日程を決めてしまいましょう!」
「喜んで!!」
そうして僕は、その場のノリと勢いで配信者になることを決めた。
特に後悔している訳じゃないよ? だって鳳月さんだって若い内は挑戦だって言ってたし、やっぱり自分自身の興味もあったからね。
鳳月さんとの話し合いの結果、本当に早速と言うべきか明日の放課後に鳳月さんの所属する事務所へお邪魔することになった。
そもそも配信者なんて「なろう!」と思ってなれるものなのかと疑問に思ったりもしたが、鳳月さんの「任せて下さいまし!」という頼りがいのある言葉通り任せることにした。
取り合えずは明日、行ってみてからどうなるかは決まる。
(配信者……うん。何だか楽しみになってきたかもしれない!)
今夜は眠れるかな~♪
鳳月カレンはダンジョンの外で祭と別れた後、その足で真っすぐに自身の所属する事務所に駆けた。
事務所に辿り着き他の配信者たちからの今日のゲリラ配信についての質問を押しのけ跳ね飛ばし、社長室に突撃した。
そして扉を乱暴にバタンッと開き、開口一番――
「超大型新人ゲットですわああああああ!!!」
「でかしたぞおおおおおおお!!!!」
獣の如き叫び声が二匹分、鉄筋造りの事務所を揺らすほどの圧力と共に響き渡った。
幸いだったのは事務所が配信を行えるように防音に優れていたことと、そこまで遅い時間では無かったことだろう。もしそうでなかったら、近所の住人が警察か保健所に連絡をしていたところだ。
「よくやったぞカレン!! あの配信を見た時はまさかと思ったが本当に勧誘してくるとは!!……本当だよな?」
「ええもちろん嘘など言っておりませんわ! ちゃんと言質も取りましたもの!」
「よしっ! よしっ!! よーしっっ!!!」
この社長とカレン、実は年は離れているが古くからの知り合いなのである。だからこそのこのノリとテンポの良さなのであるが。
二人はそうして事務所に来ていた他の配信者やスタッフが怖くなって様子を見に来るまで喜びを全身で表現した。最終的には副社長のゲンコツと雷で静かになったが、それでも気分は有頂天のままだった。
「ふぅ~、にしても本当によくやったなカレン! というか昨日の今日で接触出来るなんて思ってもいなかったぞ?」
「それについては本当に偶然ですわ。配信でも言った通り本当に危なかったところを助けて貰って訳ですので」
「そうか……彼にはカナもカレンも助けて貰って頭が上がらんな。本当に配信者になりたいというのであれば全力でバックアップしなければ」
「ええ私達の命の恩人なのですからちゃんと――……ん? 彼って、祭さんは彼女ですわよね?」
「え? でもカナは男の人に助けられたって言ってたぞ?」
「え?」
「「え??」」
確かに祭は中性的な容姿をしており美少年でも美少女でも通じるような、外側だけはどこぞの御曹司、ご令嬢と言われても違和感は無い見た目だ。
それ故に今日のゲリラ配信のコメント欄でも起こっていたようなどもどちらとも認識してしまった者達が現れるのも仕方無かったのかもしれない。
だが、断言するが神田祭は男である。
しかし本人がカナやカレンにわざわざ言っていないように、その真実を知る者はこの場にいなかった。
「「ん??」」
深まる謎に二人の頭が混乱するが明日になれば分かることかとその場は割り切り、一先ず明日に備えた祭の歓迎準備を事務所総出で始めるのであった。
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ついに、ついに祭が配信者になることを決心しました!(´;ω;`)
ここまで長かった……いや、タイトル的にも配信が始まってからが本番のはずなのにプロローグ章でこんなに時間が掛かってしまうとは思いませんでした。いや、一週間ぐらいだから短いのか?
ま、まあとにかくようやく一区切りつけることが出来そうです! あ、もちろん完結とかじゃないですからね!?言った通りむしろここからが本番なので!!
という訳で、次回は前回の祭とカレンの配信に関する掲示板回にしてみたいと思います。私自身があまり掲示板に詳しいとは言えないので、ちょっと挑戦みたいな取り組みですが頑張ります!
明日の掲示板回の投稿の後は、もしかすると章を区切るので2、3日ぐらい投稿のインターバルが空くかもしれません。
もしそうなりそうな場合は、あとがきでお知らせします!
それでは次回、明日の更新をお楽しみに!!
また!皆さんがこの作品を読んで多くの反応をしてくださったお陰で、なんと現代ファンタジー週間ランキング枠で50位圏内に入ることが出来ました!
本当にありがとうございます!
更にコメントを下さる読者の方々にも、ありがとうございます!いつも楽しく読ませてもらって、執筆の励みにさせてもらっています!!
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