第023話 緊張の控え室

第23話 緊張の控え室


野火井園/永遠池澄が開会式を終え、控え室でスタンバイ。

緊張の面持ちで試合会場のモニターを虚ろに眺める四人。


「なあ、メモリーブレイクについて何か話さないか?」

井園カッツォがキャッチーなフレーズを口にする。

「ええと、確か記憶に直接訴えかけて、脳を攻撃するやつでしょ?」

瀬海池澄の言を受けて永久永遠が

「とても繊細で、とても危険な業だよ」

野火ロイターも続けて

「裂傷や凍傷は禁止なのに、精神崩壊は治外法権ってか」

会話の流れだけでも、誰かが扱おうとしている

メモリーブレイクの危うさが浮き彫りにされる。


「一回戦のクエスとエクスは双子の姉妹だったな。

姉妹二人の肩書は嘘の記憶、か……」

嘘の記憶=メモリーブレイクの予感。

「未だ見ぬ敵に身構えたって始まらない。

脳をぶっ壊された余生も、又、豊かなる人生さ」

詩的にとんでもないことを言ってのける野火ロイター。

脳の損傷による精神崩壊は人生の一大事だ。

家電製品の故障みたいな言い分は賛成出来ない!


「ふぅぅぅぅぅ……」

俯いて大きく嘆息する井園カッツォ。

ことの重大さに対する正しいリアクションだ。


「行くぞ、相棒。

俺たちの特殊空間移動が今日、世界デビューだ!」

血の滲むような努力の末に会得した業については

実戦を交えながらじっくりと。


「よし、行くか。

じゃあな、ご両人。一発かましてくらあ」

決意の果てに、パイプ椅子から立ち上がる井園。

会場に行けば、嘘の記憶姉妹が待っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る