47話
「はいはいっと。……ああ、そうだ、リュー。今日これから、お前の家改築しに行くから、しばらく避難所で寝泊まりしてくれ。悪いけど、ロレッタちゃんもな」
「え?」
「??? ……改築? なんの話だ」
「お前の家、物が無さすぎるんだよ。物を置くスペースもねえし、生活しづらいだろ。風呂とか食器とか無くて、ロレッタちゃん困ってたんだぞ」
そう言えば以前、風呂の相談をした時にそんな話が出ていた気がする。その場限りの冗談ではなく、本気で言っていたようだ。
眉間に皺を寄せたリューズナードが、ロレッタのほうを向いた。
「……おい、必要な物があれば言え、と言ってあっただろう。何故俺に言わない」
「あ、あの、それは、ええと……」
確かに初日にそんなことを言われたが、あの頃は、必要以上に話しかけるのが怖かったのだ。それに、風呂が無いのが村の普通なのかどうかが判断できなかったから、というのもある。彼の家が異常に質素なだけなのだと、今なら分かるが。
「何も無さすぎて絶句したんでしょう? 言わせなかったあんたが悪いわよ」
「そうそう。この前の嵐で外もボロボロになってるし、他の家も順番に補修していくけど、まずはお前の所からだ。とりあえず、もう少し間取り広げて、内風呂付けるぞ」
「風呂桶なんか、中にあったら邪魔だろう。外でいい」
「はあ!? リューあんた、ほんとデリカシーの欠片もないわね! お風呂の度に、女の子に外で全裸になれって言ってるの!? 馬鹿じゃないの!?」
「どこででも生活できちまうお前の意見は聞いてねえよ」
「……俺の家だぞ」
「「ロレッタちゃんの家でもある!!」」
「…………」
ムスッとした顔で押し黙るリューズナードに、申し訳ない気持ちが込み上げてくる。ロレッタはただ、どうするのが正しいのかを知りたかっただけであって、彼の生活を侵害したかったわけではない。家主が望まないのなら、居候の自分が引き下がるべきだ。
「あの、皆様、私のことはどうか、お気になさらず……。補修や改築が必要なのであれば、リューズナードさんのご意思を尊重してください」
恐る恐る口を挟むと、リューズナードがロレッタを見て、怒っているような、困っているような、なんとも形容し難い表情を浮かべた。数日前に家事の提案をした時も、こんな表情をしていたように思う。一体どういう感情なのだろうか。
「……もういい、好きにしろ」
大きな溜め息と共にそれだけ言い残し、リューズナードは住人たちの輪を抜けて村の外へと歩いて行ってしまった。周囲は「よっしゃあ!」と沸き立っているが、ロレッタはリューズナードの気分を害してしまったのかと気が気ではない。
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