第5章 戦う理由

45話

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 日の出と共に起床して、思考の余地を潰す為にひたすら体を動かして、疲労に引きずられながら深い眠りへ落ちて、逃げるようにまた起きる。


 この数年間、ずっとそうして過ごしてきた。きっと、これから先も。それでいい。そうでなければならない。


 ――眠りが浅いと、夢をみる。


 忘れることなどできはしないのだろう暗い記憶が、走馬灯のようにゆっくりと思考を埋め尽くしていく。走馬灯なら、まだ良かった。走馬灯であれば、途切れた先には死が待っている。


 夢では、途切れた先に明日がある。また、新しい日を生きていかなければならない。絶望感に足を取られながら。失望感に腕を引かれながら。無力感に首を絞められながら。喪失感に胸を焼かれながら。


 あと何度、こんな夜を繰り返すのだろう。分からない。分からないまま、漠然と明日が訪れる。そうして何度でも、同じ夢をみるのだ。



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 三日間の療養で熱が下がり、それから二日間の安静を経て、ロレッタの体調は完全に回復した。休んでいる間は住人たちが見舞いに来てくれていたので、食事も着替えも困らなかったし、淋しいとも思わなかった。本当に温かな人々だ。


 たまに、食事の中にルワガの実が並んでいることもあったが、とても綺麗に食べやすく切り分けられていたので、リューズナードが現物の調達だけして調理は他の住人に頼んだのではないかと思う。少し残念な気がしたものの、ありがたくいただいた。


 ロレッタが魔法を使える人間であることは、初日に公言したので住人たちは皆知っている。そして、今回の川の氾濫を魔法で食い止めたのだということも、すでに伝わっていたようだった。魔法を恐れる人々の生活区域で力を行使してしまったことを、申し訳なく感じていたロレッタだったが、住人たちからは感謝の言葉しか貰っていない。


 「村を救ってくれてありがとう」とも言われたが、同じくらい「リューズナードの無茶を止めてくれてありがとう」とも言われた。どちらかと言えば、後者のほうが感謝の比重が大きかったような気がする。最悪、村はもう一度作り直すことだってできるけれど、仲間の犠牲は永遠に取り戻せないのだから。


 魔法を恐れる気持ちを払拭することは難しいが、少なくともロレッタを恐れる気持ちを抱いた住人はいないようで、心の底から安堵した。

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