Gemstone

第一幕 序章

プロローグ

　水魔法を操る王族が統べる国・水の国（アクアマリン）の第二王女であるロレッタは、今日この日をもって生まれ故郷を離れることになる。どの国にも属さない、辺境の小さな村で暮らす男の元へ、輿入れが決まった為だ。

　目の前には、正にこれから自身の夫となる剣士・リューズナードが跪いている。互いに面識などない。全ては水の国（アクアマリン）の政を取り仕切っている姉の一声で、突然決まったことだった。

　大陸随一とも言われるらしい凄腕の剣士が、膝を折った体勢のまま、視線だけをロレッタへ向ける。並々ならない嫌悪と憎しみを宿した瞳を携え、彼は誓いの言葉を口にした。

「……ロレッタ・ウィレムス王女殿下。私と――離婚を前提に、結婚してください」