第20話 感染爆発

 最初のインフル感染者二名が出てからわずか四日で、ワンフロア(約五十名)の三分の二近くがインフル陽性になったとさ。

 集団生活と多床室の恐ろしさよ。基本四人部屋だからね。一人感染したらまあ、あとの三人も道連れになるよね。おとなしくマスクしとける人なんてほとんどいないし。

 あとやっかいなのは、症状が軽くて動きまわれちゃう(部屋でじっとしていられない)人ね。そういう人にかぎってマスクなんてしやがりませんから。飛沫まきちらかし放題なのさ。


 とりあえずわたしは二日間休みなんだけど、つぎに出勤したら全員罹患してるのではないかしら。


 三十九度超えの発熱者続出してるし、サチュレーション(酸素飽和度)低下で救急搬送された人もいるし、結構なカオス状態。


 看護も介護も、現場職員の精神疲労がハンパないです。いまのところ職員に感染者が出ていないのが救いといえば救いだけれど、たぶんそれだけ気を張ってるんだよね。そのうちインフルより心労でダウンする人が出てきそう。


 梅雨から夏のはじまりにかけて十人近くが立てつづけに亡くなって、これはまじで呪われてるのでは——ともっぱらの噂だったのだけど、今回のインフル騒動でついには塩をまきだしましたよ。上の指示か現場判断かは知らんけど。


 しかし二重マスクとフェイスガードで介助にはいるとさ、めっちゃ曇るんだよね。真っ白でなんも見えなくなるし、そのうち結露で水滴流れだすし、排泄介助のときとかちゃんと汚れが拭けてんのかほとんどわからんというね。


 とりあえず癒やしがほしいです。

 あと、危険手当もほしい。←


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