第7話 最初のデート
僕はとても嬉しかった。今まで 一人でしか走らせたことのないこの車で、こんなに可愛い彼女とドライブできるんだ。僕はどこへ行こうか迷った。藤が丘には彼女ができたら一緒に行きたいような店がいっぱいあった。とりあえず 喫茶店 かな。
「喫茶店に行く?」
「うん。」
僕は彼女と行くのにふさわしい喫茶店を頭の中で探した。最近見かけた 気になる店が この辺りにあった。ガラスの窓が1枚の大きいガラスではなくて小さめの窓が何枚も集まったような作りになっていた。入り口のドアも凝っていてロココ朝というのか細かな飾りがついていた。店内には木目が多く落ち着いたシックな感じに仕上げられていた。かなり広い店内にゆっくり座れそうなソファーがいくつも置いてある。どうやら エスプレッソが売りの店 らしい。キラキラとメッキされた金属でできたエスプレッソマシンが3台も置かれている。大型のエスプレッソマシンからは うまそうなコーヒーが出てきそうだ。
僕は席に着くとウェイターにエスプレッソのケーキセットを頼んだ。
「君はどうする、何でもいいよ。」
直美 も同じものを注文した。後で調べたらガロンコーヒーはやっぱり エスプレッソが売りの店だった。他はケーキも有名らしかった。僕は会うことだけ考えたけどその後のことを全く考えてなかった。エスプレッソコーヒーとケーキを食べてしまうともうやることがなくなってしまった。僕は当てもなく車を走らせた。なおちゃんは大人しく横に乗っていた。僕はグリーンロードから伸びた道を右に曲がって平和公園の方へ向かった。そこに大きな公園があることは前から知っていた。別に行きたいわけじゃなかった。他に行く場所がなかった。
「平和公園に来たの?」
「君知ってるんだ。」
「知ってるよ。おじいちゃんのお墓があるもん。」
「えーそうなんだ。」
「赤穂浪士のお墓もあるって知ってた?」
「知らなかったな。」
「お父さん達がそんなこと言ってたよ。」
「なおちゃん 物知りなんだね。」
「へへへ。」
直美は喜んでいた。
「なんでここに来ようと思ったの?」
「ここは静かだし道幅も広いから車駐めとくのにちょうどいいかなと思って。」
「確かに道も広いし、 交通量も少ないから駐めやすいわよね。」
「ここ、桜もきれいなんだよ。」
「そうかじゃぁ春になったら花見に来ようか。」
「うん。」
直美は喜んでいた。そろそろお昼になったので グリーンロード沿いにある店で何か食べようかなと思った。
「お昼どうする?食べたいものとかある?」
直美は考えていたがすぐ決められないタイプ らしい。
「じゃあ 最近できた店があるから行ってみる?」
「うん。」
僕たちは グリーンロード沿いにある その店に向かった。オールドファクトリーとかいう名前の店だった。よく知らなかったが入ってみたら パスタ店だった。
店の作りはおしゃれで結構気に入った。女の子を連れてくるにはちょうどいいかなと思った。メニューの料金表を見てちょっとびっくりした。 意外に高い。今から出るわけにはいかないので 諦めた。今日初めて だしここでいいかなと思った。次からはもう少しよく調べとくから来ようと思った。もっと安くもっと美味しい店はいくらでもあるはずだった。
「ここちょっとお高めだね。」
直美も気になったらしかった。
「次はもっとよく調べてから入るよ。」
「その方がいいよね、今日は仕方がないけど。」
なおちゃんも気にしてたんだ、と思ったら僕も急に嫌になった。
ウェイトレスさんが席に案内してくれたけど
「ごめん 悪いけど今日は他の店に行くわ。」
そう言って 僕はなおみを連れて店を出た。
「いいの?」
「いいんだよ あんな店あんな スパゲティが2000円なんて 高すぎるよ。」
「そうだけど。」
「もっと安くて美味しい店はいくらでもあるからそっちに行こう。」
僕は直美を連れて駅横にあるトッポに向かった。
「ここは美味しいんだよ。さっきの店みたいにバカ 高くもないし。」
「うん。」
直美も嬉しそうに頷いた。
少し待って、空いた席に座った。最初に出てくるコンソメスープ もとてもうまかった。
「美味しいね。」
なおみちゃんも気に入ったみたいだった。
「そうだろう スープも結構うまいんだよ。ここのあんかけスパゲッティは有名なんだ。僕も 何度か食べに来た。この店は狭くて お世辞にも綺麗な店とは言えないけど味はいいんだ。僕はここなら毎日来てもいいぐらいだ。」
「私も好きだよここのスパゲティ。」
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