鷹の翼ーDetectiveKP

KPenguin5 (筆吟🐧)

告白

第1話 紫音の過去

ある日、紫音が神妙な顔で話し出した。

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俺、今まで言ってなかったけど、前科があるんだ。

少し、長い話になるけど、聞いてほしい。

俺は、父親のこと知らないんだ。

母は、大きな家の家政婦として住み込みで働いていたらしい。そこで、俺の父親と出会ったといっていたけど、母は父親が誰なのかってのは、まったく教えてくれなかった。

母は、俺を生むことを選んだ時に実家とも縁を切ったらしい。だから一人で俺を育ててくれた。苦労ばっかりだったと思うんだ。

その母は、俺を大学に行かせるんだって頑張ってくれてた。でも、俺、母を楽させたくて高校を卒業してすぐに自動車工場に就職したんだよ。


自動車工場に就職して、半年ぐらいたったぐらいかな。

工場の集まりがあって、先輩たちと夜の繁華街で飲んだ帰りだった。

割と遅い時間だったな。路地裏を通りかかったとき、男子高校生だろうな、ハングレグループに絡まれているところに遭遇したんだよ。

やめときゃよかったんだろうけど、助けちゃったんだよね。

勝手に体が動いてた。

高校生をつかんでたハングレの一人を引き剝がして、地面にたたきつけて、高校生を逃がしてやった。

まぁ、そのあとはハングレと俺で乱闘騒ぎだよね。

俺もそれなりに腕には自信あるからね、そこら辺のイキがったやつらには負けない自信はある。結果、向うは5人ほどいたんだけど、2人は入院するぐらいのけがを負わせちまった。少しやりすぎちゃったんだ。

そのけがをした相手が悪かった。その当時の警察庁長官の息子だったんだな。しかも、これは、刑期中に聞いたんだけど、その息子加藤組ともつながりがあったらしい。

で、俺はけがの報復なのか、起訴されて傷害で刑務所行き。薬物検査でも陽性が出たらしいんだよ。俺、薬物なんかやってないんだけどな。まぁ、自暴自棄になってもうどうでもよくなってて、上告しなかったし。弁護士はかなりやる気なかったみたいで、あんまり親身じゃなかった。しかも向うがかなりこちらの弁護士に圧力をかけたのか、実刑だったんだ。執行猶予もつかなかった。初犯だったのにだぜ。


俺の刑期中に、母さんは無理と心労がたたったんだろうな、ある寒い冬の日に死んでるのを近所の人が見つけてくれたらしいんだ。死んでから、数日経っていたらしい。

俺が一緒にいれば、そんなことにもならなかったのにな。

俺、母さんの死に目にも会えなかった。親不孝者だよね。


刑期が終わって、出てきたときに保護観察官としてついてくれたのが、オーナーの横田さんだった。

俺、出所した時、自暴自棄になって、飲めない酒を呷って、へべれけに酔っぱらって、横田さんに迷惑かけたんだけど、その時、横田さんに言われたんだ。

「新しい人生を歩むつもりで、頑張るなら、俺はサポートを惜しまない。君の人生をしっかり送ってほしい。過去には縛られるな。」って。

横田さんは俺に色んな事を教えてくれた。バーテンとしての技術も、経営のノウハウも。それで、このバーを任せてくれるようになったんだけど。

だから、横田さんにはすごく感謝してるんだ。


で、横田さんの知り合いが、堀田さんなんだよ。しかも、堀田さんは俺の傷害事件の時に取り調べをした刑事なんだ。

堀田さんが話してくれだことなんだけど、俺の傷害事件には裏があるというんだ。堀田さんは俺が冤罪だってこと信じてくれて、ずっと調べてくれてる。


俺が、この探偵事務所をオープンすることにした理由だよ。

その傷害事件の裏を探ってみようと思っているんだ。

迅には本当だったらもっと早く話しておくべきだったんだろうけどな。

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僕は紫音の話をただ聞いていた。正直、衝撃だったが、色々納得できることもあった。

「そっか、話してくれてよかったよ。ちょっと驚いたけど、色々納得できた。」

「黙ってて悪かった。」

「で、話したってことは俺にもその調査を手伝う覚悟をしろってことだよね。」

「いやか。嫌ならいいが。」

「は?見くびってもらっちゃ困るね。お前の目の前にいる漢はそれぐらいで友情を溝に捨てるような真似はしないよ。」

僕がそういうと、紫音はふっと笑って

「おまえってさ、たまにそうやって昭和の漢みたいなこと言うよな。古臭いんだよ、言い方がさ。」

「なんだよ。人を爺みたいないい方しやがって。」

僕は少し膨れたような顔をしてやった。

紫音はふふっと笑って、小さな声で

「ありがとな。」といったのを僕は聞き逃さなかった。


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