第15話 夏祭りと港の花火
仕事終わりに また直美のところへ来てしまった。毎日会うのはやめようと思っていたのにまた来てしまった。夜9時に仕事が終わってその時間になると直美のところへ行くのが習慣になってしまった。直美の持ち物の中で最も美しい唇にキスをして そして若い直美を抱く。これがもう 癖になってしまった。一度ついてしまった癖はそう簡単には消せない。毎日会っている。麻薬より習慣性が強いのか本当にまた会いたくなってしまう。自分でも本当に俺は直美のことがこんなに好きなのかと思ってしまう。確かに好きなのだろうが、ただ好きだけではないとこの頃 思ってきた。やっぱり癖なんだ。毎日会って毎日キスして 毎日抱くのはただ単に 癖 なんだ。それほど直美ことが好きでも愛しているからでもない。単なる習慣 単なる癖 なんだ ただそれだけのことなんだ。今日はやけに車が多いなと思った。今日は港区の夏祭りなんだ。街路樹に付けられたイルミネーションがやけに派手なのも、浴衣を着た女性が多いのもだからなんだ。花火まで上がっている。
夏の花火は悪くなかった。夏の終わりの切なさとパッと上がって散っていく花火の切なさがよく合っていた。夏はやっぱり花火がいいな。名古屋の蒸し暑い夏をひと時忘れることができる。直美 も 花火だ と喜んでいた。人の流れに誘われて歩いて行くと屋台がたくさん出ていた。屋台につけられた赤ちょうちんが気分をさらに盛り上げてくれる。
「今日が 花火だ なんて知らなかった。」
「お祭りの屋台も結構出てるんだね。」
「港区って結構 派手にお祭りやるんだね。さっき公園の方で スターダストレビューが歌ってたよ。」
夏の祭りはまさにひと時の夢、その切なさが このひと時をさらに美しく 描いてみせる。
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