駅で振り向く君に恋する

十矢

第1話 こじれた恋愛関係


 「じゃ、次はいつ会おうか。」

「秋からはいそがしいからなぁ。」

「でも、楽しかったな。」


カラオケにいった帰り道、スタートバックスに寄って三人で話す。


「いつでもいいよ。また来るよ。」

「じゃ、来年で」

「一年後かーい!」


レイがつっこみをするも、ユーリは、笑いながらも寂しそうな表情だ。

店内のテーブルに、コーヒーとカフェラテと、紅茶が並ぶなかで、ユーリがコーヒーを飲む。


「ユーリ、そんな寂しい顔しないで。」

「レイこそ、なんで、泣きそうなの?」


レイは慌てて、紅茶のカップに口をつける。

カップにあるスプーンが、リンと音をたてる。


「マコ、ほら、いつものトークで何か言ってよ。」

「ふふっ。レイとユーリが仲良さそうでよかったよ。」

「よかった、じゃないし。ユーリがこのままだと、おウチ帰れないでしょ。」

「じゃ、レイが一緒に泊まればいいじゃん。」

「レイは、場所遠いし、てか、ウチに連れてくのかい!」

「いつもの画面上だと、レイが、じゃ、泊まれば、ってかっこよく言うんだよ。」

「それなら、マコがオレのとこくればって言えば、いや。まずいな。マコに、ユーリが襲われちゃうな。やっぱりわたしのとこか。」

「ユーリが、マコを襲うんじゃん。」

「ユーリ、そんな大胆なの!?」

「知らない。レイのほうが知ってるんでしょ。」



 三人して、カラオケにいったのが、十二時集合にしたあと、カラオケ店を探して十三時。

それから、三時間話して歌って、投稿してを繰り返したせいで、もうノリが、画面上のままの三人になっている。


「あーあ、春も誘えば、よかった。」

「春さん、あんまり関わってないんだよね。」

「だからって、まさか、ユーリとレイが一緒に待ちあわせって、マコ、バカなの?!」

「いいじゃん。ぜったい二人あわせたほうが、楽しいって想ったんだよね。」

「てか、マコほんと、それやめたほうがいいよ?」

「それってなにか?」

「それだよ。マジで、マコって男の子に思えん。逢うまで、信じてなかったんね。」

「そうだよね。」


ユーリとレイが一緒に笑っている。


「それで、戻すけど、今度はいつがいいの?」



 結局スタートバックスにいる間は、なにも決まらずに、席をたち、ゴミを片付ける。


夏の夕方の十七時過ぎ。


「まだ遊びたい。」

「レイ、カラオケで、声ガラガラだよ?」

「ユーリは、なんでヨユーなんよ。」

「ユーリは、いつももっと、何曲も歌うらしい。」

「マジで」

「マジで」

「はぁ。もう、なんで、ウチ遠いんだろ。ユーリとずっと一緒にいたい。」

「だから、レイ連れてけばいいじゃん。」

「マコ、マジで言ってるん?」

「レイなら、任せられるよ。いつも、トークで、レイ任せだし。」

「まぁ。わたし、ユーリなら、彼女いいけど。」

「ホント? わたし本気だすよ。マコ、ごめんね。わたしレイの彼女!」


そんなことを話しながら、駅についた。

三人して改札を通るけど、行き先は違う。

真ん中の通路がわかれ道だ。


階段を上がれば、もう別の世界にいくのだろう。


「じゃ、とりま、来年。」

「一年かぁ。」

「あ、レイとユーリは、またすぐに会お?」

「彼女だし?」

「じゃ。」


バックから、スマホを取り出して、マコは二人の写真を撮ってから、階段に向かう。


「マコ、ありがとう。」

「マコ、写真おくって」

「はーい。」



マコは、バックをぶらぶらさせて、階段をあがる。

すぐに、電車は入ってきた。


乗れば帰れるのは、わかっているのに、すぐには、乗る気になれなくて、ベンチに座った。


「はぁ。もう会うことないかもな。たぶんこれ一回。」


マコは、腕時計をたしかめて、空を眺める。


ユーリもレイも電車に乗れたかな。


ホンの一瞬だけ、レイとユーリを連れて、このまま、どこかへ消えてしまいたい衝動にかられて、それでいて二人が会うように、この日にしたのには、後悔はない。


「ま、これでレイとユーリが、大学生活、少しでも楽しくなれば、来たかいは、あったよね。」


次の電車がきたため、乗ろうと、

立ちあがったら、階段から声がする。


わたしを呼んだわけじゃ、ないよね、と、電車のドアふきんに、近づいたら、マコ! と、大声がした。


振り向くと、レイとユーリが、走ってきた。


「えっ、なに、どうしたん?」


電車のドアはしまり、出発してしまう。


「はぁ。はぁ。ちょっと言い忘れた。」

「うん。わたしも。」


思わずだまっていると、レイが右手、ユーリが左手をつかむ。


「また会おう。」

「すぐに、連絡するから。」

「うん。」

「ぜったい、急に消えないこと。」

「それから、いい想い出ありがとう。」

「うん。」


「「ねぇ、マコ」」


「なに、二人して。」

「それで、本命の彼女は、どっちなんよ!」



「まだ、これから、決めるじゃ、だめ?」



お互い本名も住所も、電話番号も知らない。

知っているのは、ネットのなかの呼び名だけ。

でも、たしかに存在する。


三人のこじれた恋愛関係。

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