幼馴染みで従妹の『彼女』は俺にだけ甘えてくる
天風 繋
1.幼馴染みが従妹になった日
1.幼馴染みが従妹になった日
1話から4話の一気読み用です。
一部改修してます。
約4000文字になります。
---------------------------
放課後。後わずかで夕日が沈もうとする黄昏時。
俺、前嶋
街中にも桜が咲いているが、ここも公園をぐるっと桜並木があって綺麗である。
今の時期だけ、木の根元にランタンが飾られ夜桜が楽しめる。
そんな、少し幻想的な雰囲気の中。
俺は、物心つく前から隣家に住む幼馴染み 椎堂 茜とベンチに座っている。
何か話があると言って呼び出されたのだ。
「あのさ、あっちゃん」
「あっちゃんは、もうやめてくれよ。
流石に恥ずかしい」
「えー、あっちゃんはあっちゃんだもん」
茜は、俺の事をずっと「あっちゃん」と呼ぶ。
まあ、慣れてしまっているから違和感はないがちょっと恥ずかしい。
高校3年になっても「あっちゃん」は。
「それで?」
俺は、隣に座る茜の顔を覗く。
長い睫毛、ぷるっとした瑞々しい唇。
すっかり、大人びたな。
茜は、先日同じ高校に入学してきたばかりだ。
俺とは2つ年が離れている。
彼女は、母方の苗字を名乗っている。
父親は、幼い頃…確か茜が2歳になる前に亡くなっている。
だが、彼女の住む家は持ち家の為そのまま住んでいる。
母親には、親戚はおらず2人暮らしをしている。
「えっとね、私苗字が変わるの」
「え?」
俺は、驚いた。が、自分の頭に過った頃ではないことをすぐに理解した。
茜が、結婚!!と思ったが、よく考えたら結婚は出来ない年だった。
「お母さんがね、再婚することになったの」
「そうなんだ…おめでとう」
「うん…それでね」
どうにも今日の茜は、歯切れが悪い。
どうしたというのだろう。
「えっとね、再婚相手があっちゃんの叔父さんの
「え?尊叔父さん!」
尊叔父さんは、俺の父さんの弟である。
何年も独り身で、もうそのまま独身を貫くとばかり思っていた。
尊叔父さんは、よく家にも遊びに来るから茜とも面識はあった。
「えっと、そうすると茜はあの家を出て行くの?」
「ううん、尊叔父さんが家に越してくるみたい」
俺は、安堵した。
良かった、茜がいなくなったりしたら俺は…。
「えっと、私も前嶋になるんだって」
「あ、そっか。
尊叔父さんとだもんな」
一瞬ドキッとした。
いつか、俺と茜が結婚しても同じ苗字か。
なんって、思ってしまった。
そう、俺は茜の事が昔から好きだ。
幼馴染みでいるのはもう嫌だった。
のだが…まさか、従妹になるだなんって。
まったく、思いもしなかった。
「と言うことで、私。
今日からあっちゃんの従妹になりました」
そう言って、茜は俺に抱き着いてきた。
なんだか、心を見透かされている気がしてならない。
まあ、長く一緒にいるからなのかもしれないな。
それから俺達は、ベンチから立ち上がりゆっくり歩き始めた。
夕日が沈み、暗くなり始めた公園の街灯が付き始めている。
「あっちゃん、綺麗だね」
そう言いながら、茜は俺の右腕に抱き着いてきていた。
いつまで経っても可愛い妹分だなぁ。
いや、従妹だからある意味『妹』か。
僕らは、高台公園の桜並木を歩き始めた。
木の根元に置かれた大型のランタンによって桜は照らされている。
薄紅色ではなく、闇と混ざり合い紫色に見える。
「茜、そんなにベタベタくっつかなくても」
「えー、いいじゃん」
俺の腕にぐいぐいと彼女は身体を寄せると、柔らかな感触が腕に宿る。
それと共に、茜の左側に寄せられた長いサイドテールがゆらゆら揺れる。
心臓が早鐘を鳴らす。
うー、こういうスキンシップは心臓に悪い。
「あ、あっちゃん。照れてるね。ほれほれ」
彼女は、俺の頬を突く。
ウザイ…けど、嫌いじゃない。
俺は、いつから茜の事が好きだったんだろう。
たぶん、かなり昔からだった気がする。
「あ、あっちゃん。あの桜」
茜が指差したのは、桜並木から少し外れたところにある大きな桜だった。
あの桜は、昔茜が家出した時に…。
「あっちゃんが、私を見つけてくれた桜の木だよ」
「ああ、そうだな。
全くなんであの日はこんなとこまで来たんだかな」
「忘れちゃった。なんでだっけ」
茜は、舌をチロッと見せる。
これは、覚えてるのに忘れている振りだな。
まあ、いいけど。
「あっちゃん、ほらほらいくよ」
そう言って、茜が俺の腕を引っ張って歩いていく。
強引でお転婆なんだから。
まあ、それが彼女の魅力なんだと思う。
「茜、そんな急ぐと危ないよ。ゆっくり帰ろうよ」
「うん、しょうがないなぁ。あっちゃんは」
どっちがしょうがないのだか。
まあ、俺としてはその言い合いも嫌いじゃない。
「あっちゃん、明日から学校一緒に行こうよ」
「ん?俺とでいいの?」
「うん、あっちゃんとがいい」
まあ、茜がいいならいいか。
こんなさえない俺の隣にいていいのなら。
俺達は、ゆっくり自宅へと戻った。
茜は、そのまま俺の家に来た。
どうやら、今日は家でパーティーをするらしい。
まだまだ、今日は長そうだ。
家に帰り着くなり、茜にダイニングへと連れて行かれた。
そこには、俺の両親と尊叔父さん、茜の母親 月美さんが対面で座っていた。
「えっと、ただいま。何、この状況」
「お帰り、暁」「お帰り、あっくん」
4人の声が揃う。
ちなみに、暁と言ったのは親父と叔父さん。
あっくんと言ったのがお袋と叔母さんだ。
「え?私は…別にいいけどさ」
唇を尖らせながら悪態を付く茜。
そのトーンは、俺と話す時よりも低い。
茜は、俺以外にはすっごい冷たい。
それは、月美さんに対してもだ。
「茜もお帰りなさい」
「…うん」
月美さんが、そう言ってもこんな感じの返事だ。
親達は、まあそんな茜には慣れている。
ちなみに…。
「あっちゃん、私達はこっちに座ろ」
ダイニングテーブルは、1辺に2人座れる広さがあり最大で8人座れる正方形の天板である。
実は、少し前まで炬燵布団がついていた物で、椅子に座りながら使える炬燵である。
俺達2人は、人塊に1辺に陣取る。
左に、俺の両親…左側に俺が座り、右に茜の新たな両親が座る形になった。
お袋達女性陣は、茜と俺の様子を見て微笑ましそうに見ている。
まあ、俺に甘えている彼女を見れて安心し切っているとも言える。
「じゃあ、夕飯にしましょうか。
今日は、尊と月美さん、茜ちゃんが家族になった日だから豪華にしたんだ。
母さん、すまないが」
「はいはい、準備するわね」
「手伝う」
茜は、そう言うと座ったばかりなのにお袋の手伝いに立ち上がる。
距離の測り方がバグりすぎてるんだよな。
俺への距離と親父達親に対しての距離感を足して均等に割り付けて欲しいな。
「いつもごめんね、あっくん」
「いえいえ、大丈夫ですよ。
あ、叔父さんも月美さんもおめでとう」
「ありがとう、暁」
「ありがとう、あっくん」
叔父さんと月美さんがお礼を言ってきた。
ちょっと、照れくさいな。
「それで?暁は、高校3年になったんだし彼女とか」
そう、親父が切り出すとキッチンでガチャンと大きな音が鳴った。
何か落としたみたいな…大丈夫かな。
「いないいない、俺ってモテないんだよね」
「そうなのか?」
「あら、そうなの?あっくん、カッコいいからモテそうなのに」
ガシャンとまたキッチンから音がする。
それと共に、お袋が何かを叫んでいた。
しばらくすると、茜が戻ってきた。
その手には、何も持っていない。
静かに、俺の横の席に腰を下ろした。
そして、俺の右腕にぎゅっと抱き着いてきた。
地味に力が強くて痛いのだが、茜の双丘の柔らかさも感じて痛みが和らいでいく。
意味が分からないとは思うが俺にもわからない。
「茜?どうしたの?」
「うー、あっちゃんは私のだもん」
頬を膨らませながら彼女が抗議していた。
目には、涙を浮かべている。
俺は、茜の頭を撫でる。
「あー、大丈夫だぞ。俺を好きになる奴なんてそうそういないからな」
うーうーと唸りながらぎゅうぎゅうと更に腕を圧迫してくる茜。
なんだか、右腕の感覚がなくなってきている。
俺は、それからしばらく彼女を宥めるのに時間を費やした。
その間、月美さんがお袋の手伝いに行った。
主賓なのにごめんなさい。
結局、茜を宥めるのに1時間くらい掛かった。
テーブルの上には、唐揚げ、フライドポテト、ピザなどパーティー仕様の料理が並べられている。
そして、現在…俺は、彼女にご飯を食べさせている。
「ほら、あーんして」
「うん、あーん」
俺は、茜なりに大きく開けた小さな口に小さめな唐揚げを入れる。
彼女は咀嚼をする。
なんだか、親鳥にでもなった気分だ。
それを親達がニヤニヤと笑みを浮かべながら生暖かい目でいる。
茜は、そんなことを気にせずに俺に介護されていく。
「次は、どれにする?」
「うーんとねぇ…これ!」
茜は、フライドポテトを指差していた。
俺は、箸で掴み彼女の口へと運ぶ。
「茜、あーん」
「あーん」
終始そうして茜に食べさせ続けていたらテーブルの上の料理は無くなっていた。
結局俺は食べれず仕舞いだ。
後で、コンビニでも行こう。
「あっちゃん、私帰りたくない」
「うーん、もう夜遅いから帰ろうな。
明日は、一緒に登校するんだろ」
「はーい」
渋々と言う感じの声色で茜が返事をする。
やっと、彼女から解放された。
月美さんも尊叔父さんも茜と帰って行った。
「お疲れ様、あっくん」
「お疲れ、暁」
「あはは、疲れた…結局食べれなかったし」
「それなら、取ってあるから温めてくるわね」
「ありがとう、母さん」
俺は、心の中では『お袋』。
口に出すときは、『母さん』と呼んでいる。
親父に関しても心の中では『親父』。
口に出すときは、『父さん』と呼んでいる。
お袋は、キッチンへ行って料理を運んでくれた。
俺は、ダイニングで夕飯を済ませるのだった。
茜は、一体何を考えているんだろう。
彼女の事は好きなんだけど、俺にだけどうしてあんな感じなんだろうか。
俺は、就寝準備を整えて自室のベッドに倒れ込みながら茜の事を思いながら眠りに就くのだった。
--------------------------------
やっと、一日目が終わりです。
次回から二日目学校が始まります。
茜のイメージ(AIイラスト)
https://kakuyomu.jp/users/amkze/news/16818023211707941392
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます