2.従妹は俺に朝食を食べさせたい

翌朝。

俺は、制服のブレザーを着る。

紺のネクタイを締める。

まあ、緩くだけど。

そうしていると、部屋のドアがコンコンコンとノックされる。


「はぁい?」


俺が、返事をするとそこには同じブレザーを着た茜が立っていた。

といっても、彼女はスカート…膝小僧が覗いているし、赤いネクタイをしている。


「あっちゃん、おはよう…えへへ、会いたくて来ちゃった」

「おはよう、茜。俺、朝ごはんまだなんだけど」

「うん、あっちゃんのご飯は私が作っておいたよ」


茜は、いつからうちに来ていたのかな?

俺は、スクールバックを持って部屋を出て一階に向かう。

彼女は、右腕に抱き着いてきた。

正直階段を下りづらい。


「茜、階段は危ないよ」

「やだ、あっちゃんに引っ付いてるの」


はぁっと溜息をつきながら俺は慎重に階段を降りて行く。

別に、茜に引っ付かれるのが嫌いでは無い。

いや、むしろ嬉しい。

ダイニングに入ると、親父がテーブルで新聞を読み、お袋が親父の世話を焼きながら朝食を食べていた。


「あらあら、朝から仲良しね」

「おはよう、母さん父さん」

「おはよう、暁」


俺の朝食を作ったらしい茜は、流石に両親とは会っているようだな。

彼女は、腕を離しキッチンへ向かった。

俺は、自分の席に腰を下ろす。


「はい、あっちゃん」


そう言って、茜がトレーに載せて朝食を運んできた。

トレー毎、俺の前に置かれた。

違う。トレーじゃない。

これ、プレートだ。

アカシアのプレートなんかあったんだな。

プレートには、ご飯、ポテトサラダ、スクランブルエッグ、厚切りベーコンが仕切り毎に盛り付けられていた。


「あーちゃん、1時間も前から来て作ってたのよ。

あっくん、愛されてるわね。うふふ」

「あ、愛…えへへ」


お袋は、茜の事を「あーちゃん」と呼ぶ。

茜は、真っ赤な顔をしながら笑顔を浮かべていた。

俺は、さっさと食べることにした。

が、箸もスプーンも手元にない。

よく見ると茜の掌の中に握られている。

俺は、手を伸ばす。


「あ、あっちゃん」

「ん?なんだ?」


そう返事をすると、茜はスプーンでポテトサラダを掬った。


「えっと、あーん」

「茜、朝からそんなことしてたら遅刻する」

「うー、1回だけ1回だけでいいからぁ」

「しょうがないなぁ、1回だけな。あーん」


それと共に、口内にスプーンが差し込められる。

スプーンに載せられたポテトサラダだけが口内に残ったことを感じてから咀嚼をした。

うん、美味しい。

シャキシャキする玉ねぎ・胡瓜。

いい塩梅の塩コショウとマヨネーズ。

俺は、スプーンを受け取るとガツガツと食べ始める。


「どうかなぁ?」

「すごく美味しいよ。茜は、家庭的で良いお嫁さんになれるね」

「ふぇ!?お嫁さん…」


まあ、今の時代女性が家庭的である必要は無い。

男性が家庭的であってもいい。

ちなみに、俺は家事全般苦手だ。


「あら、良かったわね。あーちゃん。

あっくんがお嫁さんにしてくれるって」

「ば、そんな事…まだ茜には早いだろ」

「そんな事ないわよ、あーちゃん。可愛いもの。

幼馴染みだからって、現を抜かしてたら他の子に取られちゃうわよ」


茜が、他の奴と?

心臓がズキンと痛むのを感じた。

隣にいる茜の顔を見る。

顔を真っ赤にして、「お嫁さん、お嫁さん。うふふ」とエンドレスリピートしてうっとりしている。

俺は、朝食を食べ切り茜を抱き寄せながら家を出ることにした。

茜の腰ってこんな細かったのか。

俺は、彼女の腰を掴んで抱き寄せていた。


「あっちゃん、大胆」

「や、違う」


俺は、茜を解放して歩き出す。



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