第27話 日本人ですから




魔族に伝わるとされる、ダーインスレイヴの伝承を聞かせてもらったのだが。


まぁ、魔剣ぽいと感じた部分と、このダーインスレイヴとは別の個体じゃね?と感じた部分があったな。


多分こいつだったら、血だけ吸って干からびさせるんじゃなくて、丸ごと食べるはずだ。骨は残すけども。


メイドイン高次元体のダーインスレイヴだからなのか、はたまた高次元体の奴らが大量生産してるうちの一振りなのかは分からないけどな。



「とりあえず、俺の相棒はその伝承に出てくるやつより優秀だよっ!」


上段に構え、遠く離れたピッグラビットに向けて、ダーインスレイヴを振り下ろす。


対象までの距離、およそ180m。

うちの子にとっては超至近距離と同義である。



ザンッ!ドサ、、


振り切るのとほぼ同時に、頭と胴体がさよならしたピッグラビット。


そしてダーインスレイヴの纏った禍々しいオーラが地を這うように伸びていき、倒した獲物を包み込む。


2秒ほどでピッグラビットを食べきり戻ってくる。

綺麗さっぱり残さず食べた。あ、いつも通り骨は残すんだが。



「骨は嫌いなのか?カルシウムも食べた方が、丈夫になれるんだぞ?」


俺がダーインスレイヴにそう言うと、禍々しいオーラは手のような形をしてブンブン振ってみせる。


まるで「いらないいらない!」と言っているようだ。


好き嫌いは人それぞれ、、剣それぞれだから、無理に食べさそうとは思わないけどさ。



「ま、魔王様。先程のは魔王様のスキルでございますか?」


「ん?違う違う。俺のダーインスレイヴは遠距離攻撃も出来る、超優秀な大剣なんだっ♪」


「ワカバお姉ちゃん、私も持ってみたいっ!」


「持てるかなぁ?まぁ持つだけなら別にいいよ。、、絶対に刃には触れないでね?」


「うんっ♪」


サクラちゃんに手渡そうと差し出したその時、謎の襲撃が!


バチーンッ!!!

「ブハァッ!!っな、なんだっ!!?」


あまりに突然で完璧な不意打ちを喰らい、最大級の警戒する。


だが周囲に敵影なし。


いや、これだけの不意打ちを成せるほどの手練れだ。俺が発見出来ていないだけで、、



「ぷっ、、。」


「え?」


「あはははっ!ワカバお姉ちゃん、剣にビンタされちゃったーっ♪」


「、、は?」


サクラちゃんが笑いながらそう言ったので、ダーインスレイヴに目を向ける。


禍々しいオーラは両手で『✖︎』を作るような形をとっていた。


そこから導き出せる答え、、


『他の人に持たすな!俺はお前の剣なんだからな!?』


、、という事なのだろう。



「分かったよ、悪かったな。、、サクラちゃん。悪いんだけど、こいつは俺専用の剣だから、誰にも渡せないんだ。だから、サクラちゃんの誕生日に別の剣をプレゼントするから、それまで待ってくれないかな?」


「ええーっ!?良いのーっ!?」


「うん、約束!」


「やったーーっ♡楽しみだなーっ♪」


大はしゃぎでママンさんに報告しに行く。

まぁ全部聞こえる距離に居るから、報告する意味はないと思うのだが、そこはまぁ自分の口から報告したいんだろうね。



ポタッ、、ポタッ、、


あら、鼻血が?

俺にダメージを与えられるなんて、さすがはダーインスレイヴだな!


自分の相棒の攻撃力に感動しつつ、鼻血垂れ流しもカッコ悪いので回復魔法を、、


と思ったのだが、ダーインスレイヴの纏う禍々しいオーラが伸びてきて、俺の鼻にそっと近づく。


おや?まさか伝承通り、俺の血を吸うつもり?

、、じゃないのは分かっている。


だが真意は汲み取れない。何かするつもりなんだろうけど。



ポゥッ♡


あっ、暖かいこの魔力は、、回復魔法?



ダーインスレイヴのオーラが元に戻り、自分の鼻を触ってみるが、鼻血は止まり、ビンタされて熱くなっていたほっぺたも、元通りになっていた。



「おおーっ!回復魔法まで使えるなんて、超凄いよっ!!いやっ、凄すぎるよーっ!!」


俺は剣身に頬ずりしながら褒め称える。


こんなに優しい子が魔剣だなんて、チタマの設定考えたバカはどいつだ!


と、心の中で怒りを叫ぶ俺なのだが、大事なことが1つ抜けているのに気付かないでいた。


、、ビンタして鼻血出させたのが、ダーインスレイヴだという事に。



「それじゃあ、またアイテムBOXに入っててな?おっ?っわ!ちょっ、暴れんなって!わっ、分かった!分かったから!!、、ふぅ。アイテムBOXに入るのは嫌だって言いたいんだろう?」


そう聞くと、ダーインスレイヴはオーラで○を形作る。



「俺だって装備してたいんだけど、抜き身のままだと色々問題があるんだよ。切先から柄頭までだと、俺の身長より長いくらいでしょ?だから背中に斜めに装備するしかないじゃん?抜き身でそんな事したら、俺の背中はズタボロになっちゃうよ。」


腰の横だと切先を地面に擦り付けながら歩く事になるし、腰の後ろに真横にすればイケるっちゃイケるけど、扉で引っかかるし、通行の邪魔になりまくる未来しか見えないもんなぁ。


えっ?森ではどうしてたかって?そりゃあ普通に右手で柄を持ってたよ?

だけど、街中で抜き身の大剣をそんな風に持って歩いてたら、衛兵に取り囲まれるのは間違いない。


どうして鞘がセットじゃないんだよなぁ。


、、そう思っていた時期が僕にもありました。



「えっ、ダーインスレイヴ?これって、、。」


俺の話を聞いて、ダーインスレイヴは纏っていた禍々しいオーラを硬質化し、剣身を覆い尽くす。


自分で鞘を身につけてくれたではないか!!

ちゃんと体に固定する為のベルトまで付いている。


細かい気配りが出来る良い子だよ!



「これなら装備出来るよ!ありがとう、ダーインスレイヴっ♪」


という事で、早速装備してみる。



ふむふむ。ベルトの部分、手動じゃないのね?


俺がダーインスレイヴを背面に持っていくと、ダーインスレイヴが自動でベルトを巻き付けてくれた。


試しに抜剣してみる。



ふむふむ。丸ごとなのね?


俺が柄を握ると体に固定していたベルトがシュンッと消えて、ダーインスレイヴを前に持ってきた時には既に硬質化していたオーラが元通りになっていた。


そりゃそうだよ。硬質化を解くだけで良いんだもんな。


「まぁなんにせよ、これでいつでも装備してられるぜ!ありがとなっ、相棒!」


お礼を言いながら背面に持っていくと、自動固定される。



「皆〜、お待たせ〜。これからはこのスタイルで行きたいと思いますっ!」


「おおーっ♪ワカバちゃん、かっこ可愛いわ〜っ♡」


「ありがと、母さん。、、んじゃ、行くとしましょうかっ!」


再び歩き始めた俺たち。


40分ほど進んだ所で、前方に分かれ道が見えた。



「ここを左に行けば良いんだよね?」


「はっ!ここから先、7kmほど進めば魔の大森林でございます。」


「オッケー!さぁ皆ーっ!後7km歩いたらお昼ご飯だからねっ!、、の前に、ここで8時のオヤツタイムにする?」


「するーーっ♡」」」


「オッケーオッケー!!んじゃ、この草むらが途切れた所まで行くよ!」


街道沿い左側は現在、草ボーボーの草むらとなっており、見た感じ100mほど先で終わりのようだったので、そこでオヤツタイムを取る事にした。



本当は10時のオヤツタイムって考えていたのだが、4歳のサクラちゃんもいる事だし、無理する必要はないからね!



こうして草むらの終わりまで進み、8時のオヤツタイムにする。



「じゃあ、とりあえず野営用に覚えた魔法を使うから、皆は後ろにいてね?」


俺は街道沿いの原っぱに手を向けて、野営用に開発しておいた魔法を使ってみた。



[ワカバの別荘Lv1DKッ!!自販機もっ!]



頭の中でそう唱えると、ポンッと軽い感じで一軒の平屋が現れた。


赤い瓦屋根の白いお家。


ふむふむ。なかなか良い感じだな。ちゃんとカメラ付きインターホンと表札までセットじゃないか!素晴らしい。


玄関の横には自販機も設置されていた。狙い通りである。



「さっ、皆?中でオヤツタイムにするよっ♪あっ、入る前に好きな飲み物買ってからね!」


「、、、。」」」」」


俺は皆にお金を渡して、買った人から順に入って行ってもらう。


なんか皆、突然家が現れた事に驚いているようだ。



「ワカバちゃん、ドアに鍵が掛かってるみたいよ?」


「あ〜、まだ開け方を説明してなかったよ。ごめんごめん。ちょっと待ってね!」


見ると玄関前で大渋滞していた。


俺は慌ててシャクエリアスを買って玄関に向かう。



「んじゃ見ててね。玄関ドアの左側にある、この四角の金属部分。これに左手の親指をこうやってくっつけると〜、、。」


ピピッカシャン、、


「、、て開きます。オッケー?」


「私もやるーっ♡」


「じゃ、一度閉めるね。この玄関ドアはオートロックだから、鍵の締め忘れはないからね。」



ドアを閉め、サクラちゃんと交代する。



「えっと、こう、、かな?」


ピピッカシャン、、


「あっ!開いた開いたーっ♡」


「ふふっやったね!それじゃ、中に入ってオヤツタイムに、、まぁ分かったから。開けた人から入ってくるんだよ?」


俺はサクラちゃんを連れて中に入る。

残りの4人は放っておく事にしよう。



玄関で靴を脱ぎ、並べられたスリッパを履く。

サクラちゃんも俺を真似て、スリッパを履いた。


廊下の右側に2つ、正面に1つ扉があるので、手前から開けてみる。



「おお、洗濯機付き洗面所に、お風呂まで付いてるじゃん!」


「わぁっ♪凄い凄いーっ♪」


「だねーっ♪それじゃあ次の扉は〜?」


廊下に戻り次の扉へ。多分アレのはず。



カチャッ

「おおーっ!トイレだーっ♪これは野営革命が起こるな!」


「ワカバお姉ちゃんっ!」


「ん?」


「これじゃ野営って言わないんじゃないの〜っ?」


「まぁ細かい事は気にしないで良いんだよ?サクラちゃんだって、外のテントで寒くて眠れないー!ってなるより、お家の中でぬくぬくしたいでしょ?」


「うんっ!!」


分かってくれたようで何より。


さて、最後。正面の扉を開けてみよう。

正面は引き戸なんだな。



カラカラカラカラ、、


「おおーっ!!」」


2人で感嘆の声を上げる。


引き戸を開けると、左側にカウンターキッチンがあり、右側にダイニング。ダイニングの隣に12畳の和室があった。


キッチン6帖・ダイニング10帖もなかなか広く感じる。

カウンターキッチンで遮蔽物がないおかげだな!


ダイニングにはふかふかのソファーにテーブルまでセットだし。


キッチンには冷蔵庫にレンジにオーブン、二口コンロ。


家具・家電付きで、すぐにでも一人暮らしスタート出来る仕様だな、うん。


しかし、極めつけはやっぱり、、和室っ!!


うぅ〜〜んっ♡畳の匂いっ♡

やっぱり日本人には畳なんだって!


あー、これは最高の魔法を開発したなぁ!

サイショノ街に帰っても、エチゴ屋の裏にコレ建てたいなぁ。渡り廊下で繋げて、離れとして俺はこっちで生活するのもアリだなぁ、、。



と、畳にうつ伏せに寝転がって、クンカクンカしながら密かに企む俺なのであった、、。


クンカクンカスンスンッはぁ〜ええ匂いっ♡


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る