第2話 魔剣 ダーインスレイヴ
無事に可愛らしい女の子に変身した俺は、まずは現状を確認しようと思った。
「多分アイテムBOXと同じで、頭の中で考えれば良いんだよな?」
[ステータスっ!]
ワカバ・アサヒ(5)
種族 魔族
性別 ♀
LV 1
HP 7000
MP 8500
STR 6216
DEF 3078
ING 8450
DEX 3992
AGI 6154
[スキル]
鑑定Lv1、アイテムBOX
[パッシブスキル]
身体強化Lv99、剣技Lv99、全属性魔法、魔力操作Lv1
[魔法]
ラストブリザード、カースメテオ、エターナルエンド
[補足]
99代目の魔王として派遣転生された元人間。
約86億の軍勢 対 11人の魔族の戦いをどう導てゆくのか!?こうご期待!!
ふむ。チタマの一般的なステータスを知らないから、コレが強いのか弱いのかはハッキリしないが、まぁ身体強化Lv99があるんだから弱いって事はないだろう。
、、さて。いくつか、おかしく表示されてる部分を確認してみるとしよう。
俺は『種族』の部分に意識を集中してみた。
[種族 魔族]
チタマに存在する種の中で、身体強度・魔力量ともにトップクラスである。
しかし第二次人魔大戦敗北により、現存する魔族は11人のみ。絶滅危惧種である。
「、、、。」
俺は言葉を失った。
「、、いやいやいやっ!!絶滅危惧種に転生させるとかっ!!ありえないだろ!!なんで人間じゃねーんだよっ!!!」
俺は空に向かって叫んだ。恐らくだが、あの美女は見物している気がしたから。
「はぁ、、。まぁ肌の色とかが人間と同じだったのがせめてもの救い、、か。」
これで青紫色の肌とかだったら、街に入る事も出来なかっただろう。
まだ顔は見れてないが、顔だけエメラルドグリーンって事はない、、よね?
さ、さて、次は補足の詳細だな。と、補足に意識を集中してみた。
[補足]
99代目 魔王ワカバ・アサヒは、来たる『第三次人魔大戦 最期の戦い』に備え、チタマ各地に散らばる10人の魔族を魔王軍に勧誘しなければならない。
敵は、人族・獣人族・エルフ族・魚人族・翼人族・ドワーフ族の連合軍、約86億の大軍勢である。
絶体絶命の窮地を覆す事が出来るのか!?
こうご期待!!
「、、ふ、ふざけんなーっ!!既に魔族側で参戦するって決まってんじゃねーかっ!!しかも圧倒的な戦力差っ!!数の暴力っ!!各人7億8000万人倒さなきゃいけないなんて、無理だろーーっ!!!」
空に向かって叫び終え、ハァハァ、、と息を切らす俺の元にヒラヒラ〜っと1枚の封筒が舞い降りてきた。
今のタイミングで届いたという事は、やっぱり見物してやがったのだろう。
封筒を拾い上げ中身を取り出す。
魔王就任おめでとうございます!
先程の疑問にお答えしようと思って、筆を取りました。本当は不干渉を徹底しなければいけないのですが、まぁチュートリアルという事にして誤魔化しますね!
まず、どうして魔族で魔王なのか?という事ですが、ワカバ君、、改め、ワカバちゃんが選んだ『エターナルエンド』は魔王しか使うことが出来ない固有魔法だからですね!
次に、圧倒的な戦力差についてですが、実際に戦ってみれば分かると思いますので割愛させて頂きますっ♪
ちなみに、チタマ世界の一般成人男性のLVが5~8程度。冒険者で9~15程度ですねっ!
最後に、どうして女の子なのか?という疑問についてですが、、ハッキリ言って!私の趣味ですっ!!可愛い5歳の幼女から、可愛い14歳の少女へと成長していく!!それを見守る事こそこの世の至高!!という訳です!
さて、簡単にではありますが、疑問は晴れたでしょうか。
魔王ワカバちゃんの健闘をお祈りしています!
「、、、。」
俺は手紙をビリッビリに破り捨てた。
確かに『エターナルエンド』を選んだのは俺だ。
俺なのだが!魔王の固有魔法とか知らねーからっ!!
ひと言教えてくれてれば、もっと普通の魔法にしてたよ!!
だがっ!!女の子にされたのが趣味ってのはダメだろっ!!
「今さら言っても無駄なんだろうけどね、、。」
諦めムードを漂わせながら捨て台詞を吐いた俺だが、いい加減気持ちを切り替えなければ、話が進まない。
あの美女によると、どうやら俺の、、というか魔族の戦闘力は余程のものらしい。
そう言われると試してみたくなるのは、仕方ない事だ、、と俺は考える。
アイテムBOXから魔剣ダーインスレイヴを取り出す。
「おおぅ、、これは厨二心を刺激するよ。」
目の前に現れたダーインスレイヴ。
今の俺の背丈ほどの漆黒の刃に、龍を型どった黄金の鍔(つば)。
そして禍々しい魔力を纏っている。これが魔剣たる由縁だろう。
柄を握り締め素振りしてみると、シュンッシュンッと空気を斬り裂く音が響く。
、、いや。前の大木達が斬り倒されましたね。
どうやら俺の斬撃は、遠隔攻撃が出来るようだな、うん。
直径3mほどの大木が7本、スパッと綺麗に斬り倒されたのを見て、美女の言葉を理解した。
「でもなぁ、、。一斉に襲ってきたら、対処しきれなくなって終わるよなぁ〜。」
ガサガサガサッ!
「ん?」
不意に背後から葉が揺れ動く音がしたので、振り返ってみる。
「ぉ、、大きすぎじゃね?」
「グガァアァァアーーッ!!!」
そこに居たのは、毛皮の上からでも分かるムキムキマッチョな森のクマさんであった。
両腕をバンザイしているのは、美味しそうなエサを見つけたからだろうか。
パッと見、身長5mはありそうな巨体で、両手からは鋭く伸びた爪が妖しく光を反射している。
ふむ。その巨体に幼女を食べたところで、腹1分くらいにしかならないだろうに、、。
などと考えてる間に、クマさんが襲いかかってきた!!
「グルァアァーーッ!!!」
叫び声をあげながら、バンザイしていた右腕を振り下ろす!!
ピョンッとバックステップにてそれを躱(かわ)す。
地面には4本の深い爪痕が描かれる。
「は、初めての戦闘がコイツって、難易度高くね?まぁでも、、。」
先の一撃を見て分かった事だが、俺とクマさんの間には絶対的な能力差があると思われる。
すっげースローに見えたからね!
俺は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の表情で、ダーインスレイヴを右下段に構えたままクマとの間合いを一気に詰める。あまりの速さに俺の姿を完全に見失ったクマ。
懐に入ると同時に逆袈裟斬りをお見舞いしてやる。
パンッ!!!ビシャビシャビシャッ!!
「え?」
目の前で起こった現象に、自分の目を疑った。
クマさんが弾け飛んだのだ!
その様はまるで、膨らませた風船に針でも刺したかの如く。
跡形もなくとは正にこの事だと言わんばかり、、である。
「じ、実はバルーンアートだった、、とか?」
と、若干の現実逃避を挟みながらも、なんとか正気を保つ。
こうなった原因は、俺の攻撃力とクマさんの防御力の差が、明らかに隔絶したものだったから。
もしくは、魔剣ダーインスレイヴの能力が『斬りつけた相手を爆散させる』だったから。
俺は足元の小石を拾い、ポイッと大木に投げつけてみた。
パンッ!!!ぱらぱらぱら、、、
ふむ。ダーインスレイヴのせいじゃなかったようだな。
「って!これじゃ怖くて何にも触れないじゃん!!、、いや、そうでもないか?」
もし仮に、俺が触るものが爆散するのだとしたら、俺は今だに素っ裸のままだろう。
マネキンから脱がす時点で、服は爆散しているはずだからな。
という事は、俺が攻撃だと認識している行動に対してしか、攻撃力は加算されないのでは?
これは色々と試してみないと分からん。
この件に関してはちゃんと答えを出さないとだな。じゃないと、街での生活なんて夢のまた夢だ。
森を抜けるまでに答えが見つかるように願おう。
「さて。とりあえずの目標は、街に向かいながら攻撃を色々試すってところだな!よしっ。」
そうと決まれば!
俺は周辺に意識を向ける。
そう、、狩りの獲物を探そうと考えたのだ。
え?なんでかって?
そりゃ〜、どんだけステータスが高かろうが、腹は減るもんなんですよ。
いや、むしろステータスが高いせいで燃費が悪くなってるのか?
ま、まぁそれは後で考えるとして!今は獲物探しだっ!!
神経を集中し、全方位に意識を尖(とが)らせる。
ピクッ
「多分あっちにイノシシっぽいのが居るかも?」
俺は半信半疑で自分の感覚が示す方へと足を運ぶ。
5分ほど歩いた先に、体長4mほどの丸々太ったドデカいイノシシっぽい生物が居るのを発見した。
イノシシっぽい生物は、草を食べるのに夢中で、俺の接近に気付いた様子は見られない。
俺は木陰からイノシシっぽい生物に鑑定を使ってみる事にした。
[鑑定!!]
クラッシャーボア
種族 クラッシャーボア
性別 ︎︎ ♀
LV 23
HP 470
MP 0
STR 106
DEF 124
ING 19
DEX 17
AGI 108
[スキル]
体当たり、フライングボディアタック
[補足]
凶暴。草食。敵を見つけると硬い身体を武器に突進してくる。たまにジャンプしてからボディアタックをしてくる。オススメ料理はしゃぶしゃぶ。
ふむ。あの巨体でジャンプなんてして、ヒザを壊してしまわないんだろうか?
まぁあの巨体の下敷きになったら、相手はひとたまりもないだろうけど。
俺はダーインスレイヴを構えて、木陰からクラッシャーボアに向かって素振りをした。
大木は爆散せずに斬り倒せたんだから、クラッシャーボアもスッパリいけるはずだ。
スパッ、、ドドーンッ!!!
狙い通りにクラッシャーボアの頭と体は別れを告げて、それぞれが地面に寝転んだ。
「よーっし!!やったぜーっ!!、、ん?」
ガッツポーズをしながらクラッシャーボアの亡骸へと近づこうとした時である。
ダーインスレイヴの纏った禍々しい魔力が、爆発的に膨張し、クラッシャーボアの亡骸を包み込んだではないか!!
その魔力がダーインスレイヴに戻ってくるまで、1秒足らずのほんの僅かな時間ではあったのだが、、。
「ま、マジか。」
クラッシャーボアの亡骸は、肉も皮も消え去ったスケルトンボアとなっていた。
その後も何体かの獣相手に試してみたのだが、どれも同じ結果となった。
どうやら、遠隔攻撃の正体はダーインスレイヴの纏った魔力によるもので、自分の仕留めた獲物を食している、、といった感じなのだろう。
これは困ったぞ?
遠隔攻撃で倒した瞬間にダーインスレイヴをアイテムBOXへぶち込んでしまうという裏技もあるにはあるのだが、、。
いや、止めておこう。魔剣に怨(うら)まれるような事をしたら後が怖いからな。
ぐうぅ〜〜、、、
ふむ。腹ペコだな。
俺のお腹から催促の声が届くと、ダーインスレイヴがグイグイと俺の右腕を引っ張り出した。
引っ張り出したというと変な感じに伝わってしまうかもしれない。
正確に言うと、右手に持ったダーインスレイヴが、勝手に進行方向とは別の方に向かって飛んで行こうとしている、、だな。
犬の散歩で、犬があらぬ方向へ進もうとしているのを、リードを引いて抑えてる状態に似ているかも。
「ちょっ、急にどうしたんだよ!?」
あまりにもグイグイグイグイ引っ張るので、仕方なくダーインスレイヴの進みたい方へと向かってみる。
すると先には、リンゴのような果実がたわわに実った木があるではないかっ!!
「もしかして、俺の為に?」
そう聞くとダーインスレイヴの魔力が伸びて、リンゴのような果実を1つ、2つ、3つと、木から落としてくれた。
なんて良い魔剣(こ)なのでしょう。
俺は感動で目頭が熱くなるのを感じながらも、ダーインスレイヴが落としてくれたリンゴのような果実を拾い集めた。
全部で31個の収穫高である。
俺はダーインスレイヴに感謝を伝え、果実を口にした。
今日食べた甘酸っぱいリンゴの味は、きっと忘れないだろう。
心の中で、『獣の肉も分けてくれればいいのに。』と思っていたのは内緒だ。
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