チート魔王〜外は私で中身は俺で〜

@黒猫

第1話 チャレンジ!




陽の光も禄に差し込まない、鬱蒼と生い茂った森の中。


方角も定かではない道無き道を、ひたすらに足を進める1人の若者がいた。


そう、、俺である!



「はぁ〜、、もう何日目だよ。いい加減、終わりが見えても良い頃だと思うんだけどなぁ。」


と、自分の身長と大差ない大剣で、行く手を阻む枝やらを払いながら突き進む。


スキル『鑑定』のおかげで、食べられる山菜や木の実が解るので、空腹で動けない!、、という事態は回避出来てはいるが、、。



「肉ぅ〜、肉食いてぇな〜。」


肉くらい、獣を狩るなりして調達しなさいよ!と思うかもしれない。

俺だってそうしたい。そうしたいのは山々なのだが〜、、おっ!丁度いいところに獲物が!!


まずはスキル『鑑定』を使って、獲物の情報を見てみるとしよう。



[鑑定]!!



モリノベアー

種族 モリノベアー

性別 ♂

LV 29

HP 530

MP 0

STR 146

DEF 86

ING 39

DEX 51

AGI 62


[スキル]

体当たり、噛みつき、ひっかき


[補足]

凶暴。肉食。出会ったが最後、死んだフリすると本当に死ぬ。好物はハチミツ。オススメは煮込み料理。




俺は木陰に隠れ、目の前に浮かび上がった情報に目を向ける。


一般成人男性のLVが5~8程度。冒険者で9~15程度。、、まぁ中には例外もいるが。


普通に考えると、冒険者が3〜4人でパーティを組んで対応する相手である。


だが、俺はなんということも無く、ふらっとクマさんの後ろに歩み寄る。


気配を察知したモリノベアーは、振り向きながら立ち上がると、両腕を高く上げてバンザイポーズで威嚇してきた。



「グガアァアァァーーッ!!」


「あ〜、はいはい。もうね、見飽きたから。」


俺は右手に持った大剣を、軽く、そお〜っと、クマさんの身体を撫でるように振るう。



パンッ!!!ビシャビシャビシャッ!!!



風船を破裂させたような乾いた破裂音が響くと同時に、辺りに飛び散った鮮血。


まさに木っ端微塵。1mm以下に変貌したクマさんだったものを集められる訳もなく。



さて、、これで俺が強制ベジタリアンになっている理由は分かってもらえたと思う。


武器での攻撃だったからでしょ?とかの疑問もあるかもしれないが、俺だってバカではない。

既に色々な手段を試した結果、答えは変わらず爆散だったのだ。


原因は分かっている。



俺は改めて自分のステータスを確認した。



[ステータスッ!]



ワカバ・アサヒ(5)

種族 魔族

性別 ♀

LV 3

HP 7590

MP 9027

STR 6583

DEF 3248

ING 8961

DEX 4155

AGI 6448


[スキル]

鑑定Lv3、アイテムBOX


[パッシブスキル]

身体強化Lv99、剣技Lv99、全属性魔法、魔力操作Lv1


[魔法]

ラストブリザード、カースメテオ、エターナルエンド


[補足]

99代目の魔王として派遣転生された元人間。

約86億の軍勢 対 11人の魔族の戦いをどう導てゆくのか!?こうご期待!!




「はぁぁぁ〜〜〜、、。」


俺は体内の酸素を使い切るほどの、深い深〜いため息を吐いた。


相手が爆散してしまう原因は、桁違いのSTR(筋力・物理攻撃力)によるものである。


ひょいっと小石を投げるだけなら!?と試したりもしたが、バッチリ爆散した。


攻撃と認識される行動にはSTRが加算される仕組みらしく、歩く度に地面にクレーターが出来るというような事にはなっていないのがせめてもの救いか、、。



さて、、桁違いのステータスの他にも、気になった部分があったと思う。


まるでB級映画の番宣のような補足。


ツッコミどころ満載なので、順を追って振り返ってみよう。


そう、あれは今から数日前〜、、





「若葉〜っ、早くご飯食べないと遅刻するわよ〜っ?」


「分かってるよ!」


俺は1階から聞こえてくる母の声に返事をしながら、学校の制服に着替える。


着替え終わりリビングへ行くと、幼なじみの遠山(とおやま) 吟子(ぎんこ)がコーヒーを味わっていた。



「ほらほら若葉〜。早くしなさ〜い?」


「うっせ。毎度、人んちでくつろぎやがって。」


などというやり取りも、かれこれ10年ほど続く毎朝の事で、一種のお約束的な感じになっている。



朝食を終えて、2人で家を出る。


家から高校までは徒歩20分ほどで、この日もいつも通りの通学風景を堪能した。


堪能していたはずだ。


ゴスッ!!!という衝撃を感じるまでは、、。





「ハッ!!?」


「あ、ようやく目が覚めましたね!」


「え、、と?」


気が付くと、空も地面も全てが真っ白な不思議空間で、俺の前には謎の知的生命体?が居た。


どうして謎なのかというと、全身がモザイク処理されているからである。


言葉を発してきたので、恐らくは知的生命体であろうと推測出来るが。



「あら?もう少し次元レベルを下げないとダメみたいね。」


そう言うと、謎の生命体の姿が徐々に変化していき、1人の美女へ。



「ふぅ。これでどう?私が分かるかしら?」


「あ、はい。」


「なら良かったわ。それじゃ、、朝日 若葉君っ!!」


ビクッ

「はっ、はいっ!」


「おめでとうございます!あなたは、異世界チャレンジ権に当選しましたっ!やりましたね!!」


「、、は?」


目の前の美女は嬉しそうに伝えてきたが、全く理解できなかった俺は、なんともマヌケな声を出してしまった。



「あ〜っ、疑ってますね〜?まぁその気持ちも分かります。1/8♾の確率ですからね〜っ!」


「い、いや。そうじゃなくて、、。」


そもそも8♾(無限)分の1ってどんだけだよっ!?

とツッコミたかったのだが、かなり興奮しているようで、俺の話も聞かずに喋り続ける謎の美女。



「でもっ!当選したのは本当なんです!私もビックリしちゃって、慌ててお知らせに行ったんですよーっ!?」


「、、はぁ。」


俺は謎美女が落ち着くまで聞き役に徹する事にした。



「しかもよっ!?お知らせに行った私のお尻まで堪能出来たんだから!本当にツイてるわよーっ!!」


「はぁ。、、は?」


「うっふふっ♡忘れちゃったの?まぁ一瞬ではあったから、仕方ないと言えばそうなんだけど。」


「いや、全く意味わからないんですけど。」


「だから〜っ、、あ!いえ、私のお尻を堪能したってくだりは冗談、、よ?」キョロキョロ


明らかに怪しい態度をとる謎美女。

何かあるとみた俺は、帰る!とか、お菓子をあげるよ〜?とか、まぁ色々説得してみた。


その結果、、



「え〜っと!?つ・ま・りっ!!俺の頭頂部にケツで着地して!!俺の頭蓋骨は粉々になって!!、、俺は死んだと?」


「、、はい、ごめんなさい。」


「ったく、どんだけケツ硬(かた)いんだよ。」


「すみません。でも、実際にはそんなに硬くないっていうか〜、むしろ柔らか、、


「はぁ!?」


「、、すみません。」


突然の死。そんなのを告げられた俺は、相当頭にきていた。美女に対して言葉使いが雑になる程度にはね。


だって!死因が、車に轢かれたとかならまだしも、硬いケツの下敷きになったとか!!


葬式は皆大変だろうな。笑いを堪えるのに。



「あっ、それは大丈夫ですよ!」


「、、何が?」


「私の存在を認知出来る者は、地球にはいませんのでっ!!」


「えっと、つまり?」


「あなたは突然、頭が爆は、、ゴホンゴホンっ!倒れてお亡くなりになりましたが。」


俺の頭は爆発したようだぞ?



「問題ありません!私と接触した時点で、若葉さんに関する記録は地球から削除されましたので!!」


「、、俺は元から存在していなかった事になったって?」


「はいっ!!なので、爆発した時に飛び散った中身、、っじゃなくて!!え〜〜、、と、とにかくっ!!若葉さんの居た痕跡は一切有りませんのでっ!!」


もう俺の壮絶なる最期を言っちゃってるからね!?



「ま、まぁ分かったよ。そんで?」


「あっ、ようやく異世界チャレンジ権に興味が湧いてきたんですねっ!?」


「はぁ〜〜、、。正直、興味はない。ないけど、その話に乗っかるしか選択肢がないのも分かった。」


「うっふふっ♡本当は興味津々なのに〜っ!?」


そう言った美女をギロリと睨みつけると、ビクッとしてから謝罪してきた。



「え〜っコホン。改めまして、私、太陽系を担当している16次元体です。あっ、神はもう少し上の次元ですので、神ではないです。」


「ふむふむ。要は神の使いっ走りみたいな感じね?」


「使いっ走りって、、ま、まぁそれで良いです。それでは、今回の異世界チャレンジ権というものについて説明させて頂きますね。」


俺が獲得したという、異世界チャレンジ権。

その説明を始めた美女であるが、話が脱線するわ脱線するわ、、。体感だが4時間は掛かったと思うぞ。

まぁ、要約するとこんな感じだ。



チタマという地球そっくりの星。


化学の代わりに魔法文化が発展した、いわゆるファンタジーな世界らしいが、特に不便がある訳でもないようだ。

この辺の事は実際に自分の目で確認して欲しいとの事。


数年後に起こるであろう、人類と魔族の戦いに決着をつけるのが俺に与えられたミッションで、ミッションクリアすると何でも1つ願いを叶えられるという、、。


まぁ普通の高校生がどうこう出来る規模の話ではない。


そこで、役立つ能力だったり道具だったりが用意してあるらしく、その中から気に入ったものを選んで良いと。



「この中からか〜。言葉とか文字を1から覚えるのは大変だよなぁ、、。」


「あら、その心配はないですよ?チャレンジ特典として、基本セットは持たせるようになってますからねっ!」


能力・道具カタログを見ながら悩んでいると、紅茶を飲みながらまったりしていた美女から声が掛かった。



「基本セット?」


「ええ。チタマ言語の修得、アイテムBOX、鑑定ですね!あっ、もちろん魔法が使える身体にもなるから、安心して選んで大丈夫ですよっ♪」


「ふむふむ。それなら、強そうな魔法を選ぶのもアリか、、。ちなみに自分の属性とかって1つだけとか?」


「うふふっ♪チャレンジ特典で魔法が使える身体になるんですよ?全属性使えるに決まってるじゃないですか〜っ♪」


「おおっ、それは良いね!んじゃ〜、、。」



俺はカタログの中から、いくつかピックアップしてみた。


・剣技Lv99

(やはり剣で無双とか憧れる!)


・身体強化Lv99

(身体が無敵なら安全安心!)


・エターナルエンド

(強そうな魔法も気になる!)


・ダーインスレイヴ

(魔剣という響きが良い!)



う〜〜む。とりあえず4つにしぼったけど、ここから1つを選ぶとなると、、う〜む。


、、いや。待てよ?


俺が勝手に1つと思い込んでいるだけで、直接1つだと言われたわけじゃないぞ?


ダメもとで言ってみる価値はある、、よな?



「じ、じゃあ〜、、この4つにしようかなぁ〜、、なんて。」チラッ


「どれどれ〜。、、うん!なかなか良いのを選びましたね!」


「えっ、良いの?」


「??ええ、良いと思いますよ?準備しますね!」


「そ、そか。」


ふむ。どうやら大丈夫だったようだ。

むしろ、何個でも良いんじゃね!?


「あ、あのさ?これって何個でも良かったの?」


「うっふふっ♪そんな訳ないじゃないですか〜っ!最大5つまでって言いましたよね?」


「いや、初耳。ならお金も追加で。」


「はい、ごめんなさい。」


パッと思いついた『所持金無いよ案件』を解消出来たのだが、他にも言い忘れてる事が有りそうな予感がする。


とは言っても、何を聞けば良いのかもいまいち分かってないのだから、現地に行ってから自分で考えるしかないだろう。



そんなこんなで準備が整ったらしく、いよいよ出発の時となった。



「では、朝日 若葉よ。異世界の旅を楽しんで下さい!きっと気に入ると思いますよーっ!!」


「ああ、行ってくるよ。じゃあな!」


軽く挨拶を交わすと、俺の足元に魔法陣?のようなものが光りだす。


スーッと俺の体が透けてきて、急激な眠気に襲われる。


どうやらこれで、目が覚めれば異世界って事なんだろう。


俺は、まぶたを開いている事が出来ずに目を閉じた。、、その時っ!!!



「あっ、可愛いお洋服はアイテムBOXに入れておきましたからねーっ♡、、もう聞こえてないかしら、、



は?と聞き直す余裕もなく。俺の意識は途切れたのであった、、。





「ぅ、、うぅん。、、ハッ!!」


俺はガバッと身体を起こし、周囲を確認する。


視界に入るのは、、木!木!!木!!!



「、、めっちゃ森じゃん。ん?なんか声が子供っぽい?って!!ハダカじゃねーかっ!!」


俺は慌てて股間を手で隠し、、隠し?


あ、あれ?おかしいな。ビックリして隠れちゃったのかな?



俺は手探りで、ここにあったはずのモノを探す。


だが、手応えは全くない。


意を決して!見てみる事にした。



「はあぁぁ〜〜、、。女になってるじゃねぇか。それに視界の低さと手の大きさからして、完全に子供だぞ!?ハダカの女児を大森林の中に放り出すとか、正気の沙汰とは思えねーぞ!?」


大声で不満をぶちまけた俺であるが、アレが最後に言っていたセリフを思い出した。



「確か、アイテムBOXに入れとくって言ってたよな。使い方は自然と分かるらしいけど、、。」


そんな訳で、アイテムBOXの事を考えてみると、あら不思議!目の前に半透明な液晶画面みたいな感じのが現れたのだ!


試しに指でタッチしてみたが、触れる事は出来ないみたいだ。



「なになに〜?」


その画面には、、


ダーインスレイヴ×1

100cm女の子用洋服セット[春]×100

100cm女の子用洋服セット[夏]×100

100cm女の子用洋服セット[秋]×100

100cm女の子用洋服セット[冬]×100

銅貨×♾

銀貨×♾

金貨×♾



とりあえず洋服セット[春]を1つ出してみようと、意識を集中してみる。



「おっ、出来た!」


フワッと目の前に現れたのは、可愛らしいワンピース、肌着代わり?のキャミソール、ドット柄のパンツ、薄ピンクのフォーマルシューズ。


、、を装着したマネキン。



ふむ。まずは脱がすとこからなのね?



俺はマネキンから洋服セットを強奪し、それを装着!


無事に可愛らしい女の子が完成しましたっ♪



「はぁぁぁ〜、、。なんか違う意味で冒険しちゃった気分だよ。」


と、冒険する前から精神的に大ダメージをうけた俺なのであった、、。


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