ツイスト
かとうすすむ
第1話 本文
テーブルに洋酒のコップが二つ。郊外の山小屋の中。黒メガネの男が言う。「片方のコップには、毒薬。同時に飲んで、生き残った方が、美佐子をものにできる」。口ひげの男が頷く。二人は同時に飲んだ。やがて、口ひげの男が、口から血を吐いて床に倒れ込む。そこで、黒メガネの男が告白する。「君には悪いことをした。さっき、君が気づかないうちに、君のコップに毒をいれておいたんだよ」。黒メガネの男が腰を上げて、警察に連絡するために山小屋を出る。やおら、倒れていた口ひげの男が、起き上がると、笑って言った。「そうだろうと思って、あらかじめ解毒剤を飲んでおいたんだ」。そこへ黒メガネの男が山小屋に帰ってきた。驚く。ふと、口ひげの男が、近くに置いた洋服ダンスの扉から流れる血の跡に気づく。驚いて、タンスの扉を開く。中から、若い女が裸で、胸から血を流して死んでいるのが見つかる。口ひげの男がすべてを悟って言う。「なるほど。君は、誤って美佐子を殺した。そこで僕と美佐子が心中したように見せかけようと、僕をなきものにしようとしたんだ」。狼狽する黒メガネの男。そこへ警察の一団が到着し、現場を見て驚く。すると、突如、死んでいた美佐子が起き上がって笑い出す。「笑えるわね。わたし、生きてるわよ」。そして警察の連中も一緒に笑い出す。訳の分からない口ひげの男。「すべて、サプライズパーティーさ。今日は君の誕生日だ。ミステリ好きの君のために、仲間に変装してもらって驚いてもらったんだ」。突如、口ひげの男が胸をかきむしって倒れ込む。黒メガネの男が駆け寄って彼を調べて言う。「死んでる。彼が心臓をやられていたのは知っていたが、ショックで麻痺を起こすとは‥‥‥‥」。うなだれる一同。再び、口ひげの男が起き上がった。そして、皆が整列すると、一斉に頭を下げる。
観客席から拍手が起こる。舞台劇であった。
ツイスト かとうすすむ @susumukato
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