幽霊に追われてるんですが・・・・
タツカワ ハル
第1話
帰り道。背後から視線を感じて、背筋が凍るような寒気がした。見ると電柱の影に奇妙な女がいる。白装束を着て、膝下まで伸びきった黒髪。ボソボソと何かを呟いていた。
怪しげな奴とは関わりたくないので逃げる。しかし、一向に振り切れそうにない。注視していたらその理由がわかった。目視していればその場から動かないが、一定の距離を離れると電柱の陰から電柱の陰へ、瞬時に移動してくる。
背後に気を取られていたら、案の定、誰かにぶつかった。
「うわっ!」
「君、怪我はないかい?」
「すみません! 知らない女に追われてるんです。助けてください」
そう言って幽霊のいる方を指すと、おじさんは目を丸くする。
「あそこかい? 君はそこで待っていなさい」
ごくりと唾を飲み込み。大股で歩いて行って、恐る恐る電柱の影を覗き込む。そして、何事もなかったように戻ってきて言った。
「誰も居なかったよ」
「そんなはずは」
「大人を揶揄うのもいい加減にしなさい」
おじさんは怒って去っていった。確かに幽霊と目があっていたはずなのに。・・・・いや待てよ。もしかしたら自分以外に幽霊は見えないのかも知れない。
これでは、家に帰れそうにない。よくある映画のストーリーだと、幽霊は独りになった時を襲う。だから、ここは敢えて自宅には帰らない選択をする。
幽霊と追いかけっこをしていたら駅に戻ってきた。走ったせいで息絶え絶え。とりあえず中に入ることにした。
空いたばかりの窓側テーブル席に案内されると、外が暗いせいでより鮮明に見えてしまう。あそこだけ人魂が青く光ってる。まるで私を見てとでも言うようだ。ファミレスにまでは入ってこない。意外とシャイなのかもしれないし、光がダメなのかもしれない。
警察に言っても信じてもらえないだろう。ストーカーよりもタチが悪いし、トイレに行くのだって誰かと一緒じゃなきゃ怖い。鏡を見たら背後に映っていると思うと笑えない。
注文したアイスコーヒーが手の震えでこぼれた。一気に飲み干してスマホを取り出す。お寺に行って除霊してもらおう。きな臭いがこうするより仕方ない。と思っていたら携帯は圏外になった。こんな時に故障か? きっと幽霊のせいだ。
椅子に深く腰掛けて不貞腐れる。朝になるまでここで過ごすか。またしても徹夜だ。そんな時だった。
「あれ? 平野っちじゃん。久しぶり」
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