隣の席の自称神様な美少女の家が無くなったらしいので、同居することになりました
ゆとり
第1話 自称?それとも本物?
ある日の放課後。
お昼頃から続いた大雨は止む気配がなく、帰り道で風に煽られた俺、
この辺の人なら初詣などで必ず1度は訪れたことのある神社。奥には神主さんが住んでいるであろう建物も見え、他の神社の事は知らないが、そこそこ大きな神社なのだと言うことがわかる。
すみません。少しだけ失礼しますと心の中で謝り、御社殿の屋根の下に避難する。
灰色に染まった空を見つめ、結局雨宿りしたところでそのうち濡れて帰るしかないかもしれないと思うが、それでも少しでも雨の勢いが弱くなることを期待して時間を潰す。
濡れた制服が体に張り付きものすごく気持ちが悪い。
誰もいないので、制服を脱いで水を絞ろうかと思っていると、頭にパサッとなにかが乗る。
それを手に取って確認するとピンク色のタオルだった。
「ほれ。それで体を拭くといい」
なんでタオルが?と思っていると、後方からそんな声が届く。
振り向くと、そこには同じクラスで隣の席、そして学園の有名人である
なぜ彼女が学園の有名人かと言うと、まずはその容姿。
モデルか何かかと思うほどのスタイルと整った顔。腰まで伸びたサラサラの綺麗な髪が彼女の美しさを更に際立たせている。
そして、彼女を有名人たらしめる要因がもう1つある。
それは・・・。
「神宮さん?なんでここに?」
「なぜって、妾はここに住んでおる。神様じゃからな」
これである。
自分の事を神様だと言う痛い人なのだ。
入学当初はその美貌から告白する人が絶えなかったが、今では彼女と付き合おうとする人はいない。
「あー・・・。そうなんですね」
「なんじゃその返事は。さてはお主、信じておらぬな?」
「信じるもなにも神様なんていないでしょ」
「いるもん!神様いるもん!妾が神様じゃもん!」
俺の言葉に頬を膨らませて地団駄を踏む神宮さん。
普通なら可愛いはずのその行動も、女子高生、しかも変わってる人だと知っているからか不思議となんの感情も芽生えてこない。
「わかったわかった。じゃあなにか証拠を見せてよ」
俺はどうせ雨で帰れないし暇つぶしになればいいかと思い、軽い気持ちでそう言うと、神宮さんはよし任せておけ!と機嫌よく言い胸に拳を当てる。
「これが妾の神としての力じゃ!!」
彼女は両手を前に出し、ふん!と力むが、なにも起きない。
「えっと・・・。今なにかした?」
「わからないのか?」
「うん。全然。なにも」
「ふむ。お主はまだまだのようじゃな」
なぜか満足気に1人で納得しているが、これだけはわかる。俺はバカにされている。
なんだかムカついたので、もう濡れて帰ろうと思い、頭に乗ったタオルをありがとうと投げ渡し、その場を立ち去ろうとする。
すると、おい!と呼び止められ手を掴まれる。
「なに?まだなんか用?」
「このままじゃ濡れる。傘貸してやるから待っておれ」
神宮さんはそう言って、奥の居住スペースであろう建物に向かって走っていく。
パタパタと走る姿は神様のそれではなく、無邪気な女の子にしか見えない。いや実際そうなのだろう。
少し待っていると神宮さんはすぐに戻ってきて、ピンクのハートがプリントされた傘を差し出してくる。
「ほれ。妾の傘じゃ。ありがたく使え」
「バカなの?こんなの恥ずかしくて使えるわけないじゃん」
「バ、バカとはなんじゃ!妾の好意を無下にするつもりか!男だからハート柄が恥ずかしいと言うのか!」
うん。俺が男じゃなくてこの傘は断る。と言うか、今どきの女子高生がハート柄の傘ってどうよ。
俺ははぁ〜とため息をつく。
「いいよ。元々濡れて帰る予定だったし。ってかもう濡れてるし今更じゃ―――」
そう言ってから、体に張り付いた制服の気持ち悪さが無いことに気がつく。
あれ?なんかめっちゃ乾いてるんだけど、制服ってこんなに速乾性に優れてたっけ?
困惑する俺を見て、神宮さんは楽しそうに笑っている。
「お主今頃気づいたのか?これが神の力よ」
「あっ。えっ?マジで?」
「大マジじゃ」
腰に手を当ててドヤ顔をしてくる目の前の美少女には少しムカつくが、これが本当だとしたら、彼女は自称ではなく本物の神様ということになる。
「どうやって?どうやって乾かしたの?」
「ん?妾は太陽を司る神だからな。ちょちょいと熱を加えてお主の制服に付いた水分を蒸発させただけじゃ」
まじか。だからほんのりと制服が暖かいのか?
それなら!と俺は思いついたことを口にする。
「太陽の神なら雨を止ませてよ!それくらいできるでしょ?」
俺の提案を聞いて、それは無理じゃとキッパリと言い切る神宮さん。
「なんで?」
「力が足りん」
ふふんと鼻を鳴らして偉そうにしている自称神様に対して、俺は残念なやつだと思い、息を吸い込む。
そして。
「役に立たねぇ!!!!」
そう叫ぶのだった。
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