告白したいです

藤泉都理

こんにちわあ




 市立図書館の個室の学習室にて。

 友達と二人、並んで勉強していた私の心臓は、今にも壊れそうなほどに大きな音を立てて動き回っていた。

 告白、しようと、決めたのだ。

 今日こそ。

 ここなら、話していても、ほかの人たちに迷惑はかからないし。

 ここなら、自然と、二人きりになれるし。

 ちらと、壁にかけられた丸時計を見る。

 十五時二十分。

 十四時に入った。

 すぐに告白しようとは思わなかったけれど。でも、ここまで時間をかけるつもりもなかった。


(今!もう!今!)


 弱虫な自分がこれ以上大きくなってしまう前に。

 告白しよう。

 決心して、全く頭に入ってなかった教科書を机に置いて、友達に顔を向けた時だった。


 ポマードでガッチガチに固められたテカテカオールバック。

 顔から溢れる大きな黒サングラス。

 ビッチシ身に着けた白のタキシードを押し上げる各々の筋肉。

 見るからに、ヤの付く自由業であり、明らかに霊でもある男性が葉巻をくわえつつ、胡坐をかいた体勢で、ぷかりぷかり空に浮きながら、私の額に拳銃の銃口を向けたのだ。




 あ、友達の守護霊ですか。

 こんにちわあ。

 安心してください。

 私は友達の敵ではありませんよ。




 私は微笑を浮かべた。

 今にも消え入りそうな儚いものだった。











(2024.1.7)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る