ばけもの

凉白ゆきの

第1話 化物

 俺はこの街が好きだ。ゴタゴタしていて煌びやかで腐ってる。住んでる奴らも最低だ。大事なものを全部どっかに置き忘れてきちまったような連中しかいねぇ。もう自分たちの失くしたものが何だったかすら覚えちゃいないだろう。あいつらが求めてるのは薬か殺しか女か。まぁいい、俺の店にゃ全部揃ってる。金さえ出せば何だって願いを叶えてやる。俺のことを化物、なんて呼ぶヤツもいるがそんなの知ったことか。ほぉらまたお客だ。


「いらっしゃい」


 入ってきた客を見て一瞬鼻白む。女、しかもまだ子供だ。せいぜい十五、六ってとこか。女は幼いながらも媚びるような視線を俺に向けた。


「このお店、何でもあるって聞いて」


 よく見ればなかなかの上玉だ。悪くない。たっぷり楽しませてもらってからどこかに売り飛ばしてやるとしよう。俺は舌舐めずりしながら女に近寄った。

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