抜きゲーの主人公に転生したけどヒロインが可哀想なのでエロ展開にグーパンしたら、なぜかエッチに迫られまくる生活が始まった

兎夢

#01 神は激怒した(読み飛ばし可)

 神は激怒した。

「折角エロゲー世界に転生させてやってるのに、どいつもこいつもセックスしやがらねぇ!」と。


 神には人心が分からぬ。神は、転生の神だった。けれども、エロいことには、神一倍敏感であった。今日も神は日本の男をエロゲー世界へ転生させ、ティッシュ箱を傍らに置き、シコい展開を今か今かと待っていた。


 しかし、転生者は言った。

「エロ展開なんてどうでもいい! 俺はレベル上げしてやるぜ」と。

 神は思った。

「アホか??????」と。


 エロゲー世界に生まれた者がエロいことをしないのは、剣と魔法の世界に生まれた者が武器も魔法も放棄するようなものだろう。もっと分かりやすく言うなら、トイレでたばこを吸うようなものだ。


 自分ではないが、他の神は現世の人間に「置かれた場所で咲きなさい」と伝えたらしい。

 少しも教えを守る気がないではないか!

 ゆえに神は激怒したのである。決してシコるために買ったエロゲーが鬱要素たっぷりのシナリオゲーだったために不機嫌になったわけではない。シナリオゲーもそれはそれでいいと思う神であった。


 そこで神は彷徨う魂に尋ねた。

「どうしてセックスしないのか。昔は道端に落ちているグラビアでも拾い、血眼になって胸や尻で妄想を膨らませていたはずだが」と。

 魂は答えなかった。逃げるように成仏してしまった。

 しばらく歩いて別の魂に出会い、今度はもっと、語勢を強くして質問した。魂はやはり答えなかった。神は魂におさわりし、質問を重ねた。魂は、辺りを憚る様子で答えた。


「え、あんた誰……? てか、俺死んだんだよな?」

「何を言っておるのだ。当たり前だろう? 儂はお前たちを幾度もエロゲー世界へ転生させてきた。しかし、お前たちはセックスをしない。なぜだ」

「は?」

「もしやお前たちは性欲を失くしたのか? ついにそこまで……!?」

「いや、突然話しかけてきてなんなんだよ!?」


 魂は混乱した。結構シリアスな流れで死んだはずなのに、死後の世界でこんなセクハラ紛いの質問を受けるとは思っていなかったのである。

 だが、目の前の存在はなんだか神々しい。その証拠に、自分を掴む相手の両手からヤバいパワー的なものが流れ込んでくる感覚がある。


「転生は、エロへの欲望を殺します」

「なぜ殺すのだ」

「転生できるだけでワクワクするからです。男の子はレベル上げやダンジョン攻略が好きな生き物なのです」

「たくさんの美少女とエロいことがしたくないのか」

「いいえ、本当はしたいのです。しかし現実にはエロいことが喜ばれるとは限りません。迫った美少女があまり乗り気でなかったら? 生理がきててヤれない日だったら? 二周目の人生にもかかわらずデリカシーのない男だと思われてしまうのは耐えられないでしょう。女体より男の子のロマンが素晴らしいと思い込むほうが楽なのです」


 魂はノリノリだった。流れ込んできたヤバいパワー的なものによって軽く洗脳されていたのである。

 聞いて、神は深く悔いた。エロゲー転生の都合がいい部分しか見えていなかった自分を深く悔いた。


「まったくそのとおりだ。こうしてはおけぬ」


 神は単純な神だった。何せ天性の神である。かつて徳川幕府三代将軍家光は『我は生まれながらの将軍である』と述べたそうだが、この神は生まれながらの神だった。


「お前を抜きゲーの世界に転生させてやろう」

「は?」

「無駄に凝ったRPG要素や現実寄りのシナリオがいけないのだろう? ならば、エロにひたすら都合のいい抜きゲー世界に転生させてやる!」

「はっ? い、いや、抜きゲーはヌきたいときにプレイするものであって転生する世界じゃねぇだろ!? 抜きゲー世界なんてナチュラルに狂ってるのばっかりだろうが!」


 魂は激怒した。冷静に戻るのが遅ぇよ。

 焦る。とてつもなく焦る。繰り返すが、魂はシリアスな死に方をした。実を言えば、いじめを苦にした自殺で死んだのである。いじめは日増しにエスカレートし、死ぬ前には教室で全裸になった写真を撮られ、クラスラインに流された。

 その上、庇ってくれたオタク友達の女子がレイプされるのを目の前で見ていることしかできなかった。

 性なるものは、憎悪すべきもの。

 にもかかわらず、エロい転生神の神気に中てられ、魂は戯言を口走ったのである。

 それは、


 ――本当はエロいものを心の底から愛したい


 という希望ねがいの萌芽であったのかもしれない。


「んなわけないだろ!? ただの洗脳なんだよ、クソ神ッ! お前のやってることはあいつらと同じだ! エロを求める気持ちをなんだと思ってるッ!?」

「仕方のない奴じゃ。お前には、儂の孤独が分からぬ」

「分かって堪るかクソ神! エロゲー転生とか言ってるくせにエロがなくてもいいだろうが! 絶っっ対にセックスしないまま生涯を終えてやる!」


 それを聞いて神は、エロい気持ちで、そっとほくそ笑んだ。もはや神にはあーだこーだとほざく魂が『ハレンチなことはダメです!』と顔を真っ赤にしながら叫ぶ真面目委員長系女子にしか見えていない。

 どうせエロいことをするに決まってる。だが、神はもっといいことを思い付いた。どうせなら徹底的にドチャシコエロくしてしまった方がいい。


「お前に無尽蔵の精力と数多の美少女と出会う運命キャラを与えよう。ふっふっふ……儂にドチャシコなセックスを見せてくれること、楽しみにしておるぞ?」

(ふざけんなぁ!!!)


 ――魂の叫びは、しかし、音にならずに消えた。

 転生の渦の中へ導かれ、魂は抜きゲー『ハーレム・セックス・アカデミア~淫紋勇者と子づくりパラダイス~』へと旅立った。


 説明しよう。

 これは、エロゲー転生にエロを求める神を斃す物語である。












――・――・――・――・――・――

 汝、リリス・リンカネーションは転生前の魂に触れ、膨大な神気を人の身に与えた。これは大罪である。かの者から神気を取り戻すまでの間、神界への立ち入りを禁ず

――・――・――・――・――・――





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