異世界転生した料理好きのおっさん、カレー用に選んだスキルでケモ耳種族を助けて毎日美味しい食事を楽しむ

ひたかのみつ

第1話 異世界に転生?!

頭がほわほわする。

あぁ、今月も死ぬほど忙しかったからな、仕事のし過ぎで寝落ちしたのか?


「いいや、ちがう。 唐井からい料理りょうり、お前は死んだんだ」

(おかしい、頭の中に声が響いてくる)

 その声は中性的で、年齢も分からない。


「しかし、まさか異世界の魔力を浴びさせてしまうとは…… うっかりしたよ」

(なんだ、何を言っているんだ? )

 目を開けようとしているつもりなのに、全く瞼が動かない。

 思考は出来るが、体に力も入らない。 ただ、ぼんやりと明るい光が側にあるのだと分かった。


「まぁ、なんだ、間違えて殺しちゃって申し訳ない」

(変な夢だな、仮に謝罪するなら、もっと誠意が欲しい内容だし…… )

俺はもう34になる。 おじさんだし、あまり人に文句は言いたくないけど――


「そうだな! その言葉を待っていたんだ! よし、ではお前の望む力を与えよう! 何か好きなものはあるか?! 」

(なんだか、素直に従ったら、この声を許したことになりそうだけど…… )


俺は好きなものと聞いて、真っ先にカレーを思い浮かべた。

子供っぽいかもしれないが、カレーと名の付くものはみんな好きだなぁ。

「なるほど、カレーか。 よし、では美味いカレーを好きなだけ食わせてやろう。 これでいいか? 」

(ちょっとまて、カレーといっても、いろいろあるんだ、国や地域でカレーが指すものは違う。 ベースになるスープも、じっくり煮込んだものもあるし水とスパイスだけのもある。 火加減は当然、具材だって切り方ひとつで違うんだ。 最近話題の健康を考えたスパイス調合もあってだな―― )


「わかった、わかった! 落ち着け! よし、じゃあその辺は自分で何とか出来るようにしておこう! な? それでもういいだろ? 」

(こいつ、ほんとにわかっているのか? )


「わからないので、今の話で必要そうな力は与えておく。 大サービスだぞ、感謝しろよ? えっと、国の境無く、水と火と…… 切り方に薬だっけ? 」

(なんか違うけど、ギリギリあってるかな…… やっぱもう一度説明しようか? )


「あぁもう良いい! 大丈夫だ! 良いから、異世界で第二の人生とカレーを楽しんで来い! 」

(うわ!? )


急な浮遊感の後、どこかに落下していく。

意識が、だんだんと……

俺は夢心地の中で、さらに深い眠りについた。


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