紙の蕾を濡らすのは

鯖都つき

紙の蕾を濡らすのは


胸骨が軋む冷えてく(夜はずっと夜のままだよ)触れてもいいよ


ふとももの付け根で君の唇は「雨」となんどもくりかえしてた


ひらかれて無数の傘が海という海に浮かんだまぶたの裏で


なお薫る性欲性愛的なもの深夜に「燃えるごみ」として出す


ふーん同窓会で…… そっか良かったですね ね、このカフェオレぬるくない?ぬるくない?


コンビニのカラーボールを君の背に投げたい午後だ眩しい青だ


東京は湿度高いね君のふぐりもおへそのなかも洗ってあげる


慣れていくことを怖いと思わずに今日もイヤホンからまる鞄


足指の隙間がとても冷えるからときどき君に触れたいのです


おひさまの薫りの毛布にくるまってふたりで孵化の真似事をする


フレルナと書いてあるのにさわるから星座消えてく 終わるの すべて


夕暮れはもう少しさき つりかけたふともも伸ばし深呼吸する


ひとりずつ優しい人からいなくなる歩道橋から見ていた花火


電線と月 あたしたち答え合わせのつもりでしたの


ずっと誰かに見つけて欲しいと願ってた くらげが海に溶ける静けさ


終わるまで小石や街路樹に変わる ガードレールを君を抱いてる


さようなら、ごめん、別れの言葉っていつも同じで。月も、あ、落ちた


残された紙の蕾を濡らすのは花になれずに刻まれた雨






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