ある日出会った〇の出ない少女に、いいように使われる話。
白メイ
第1話 〇〇〇の悪い彼
「本当に大丈夫?一人暮らしなんて」
「父さんも心配だよ」
大丈夫だよと、両親に伝える。
「何かあったらいつでも帰って来ていいからね?」
「連絡をくれたらどこにいても迎えに行くからな」
胸の前で手のひらをまっすぐ下におろし、わかったと伝える。
私は、それだけを伝えるとリュックを背負い玄関の扉を押して外に出た。
荷物は今日の夕方に届く。だから朝早くから向こうでの準備をしないといけない。
そう思って朝5時に起きた。
まだ日の昇っていない時間に家を出るのは初めてで熱い季節のはずなのになんだか肌寒い。
あぁ、着いたら何か温かい飲み物でも飲みたいな。
ゆっくりと足を動かして、最寄駅に着いた。
まだ汽車が来るには少し早かったみたいで、あと10分程掛かるみたい。誰もいない駅で待つこの静かな時間をとても寂しく感じてしまう。
ううん、ダメだよ。あの子を見つけるまで帰らないって決めたんだから。
もし、見つかったら…伝えたいな。きちんと言葉で。
そんな事を考えているとプシュッーっと列車の止まる音がして来る。私は駅のホームまで移動し、扉が開くのを待つ。
少しすると音を立ててドアが開き、誰も乗っていない車内にポツンと座り降りる駅までの時間をただ過ぎるのを待っていた。
数分おきに動きが止まり、人が乗って来ては他の人が降りる。
それを何度も何度も繰り返して、終点に辿り着いた。
降りるとそこは少し寂れた住宅街といった場所で初めての一人暮らしは緊張するけど頑張らなくちゃ。無理を言ってさせて貰っているんだし。
私はスマホの地図を見てこれから住む事になるであろう目的地へと足を運んだ。
30分ほどして、古めかしいマンションが見えてきた。
歩き疲れた私はどこか休憩出来る所は無いかと周りを見渡すと、マンションの前にある自動販売機に目が止まる。
ちょうど喉が渇いていたんだ。
そう思い、近寄ると温かい季節になっているせいか冷える朝なのにも関わらずホットが1番上の段にしかない。
背の低い私は背伸びをしたり、ジャンプをしてみるが届きそうになく半ば諦めようかと膝に手を付くと後ろから声を掛けてられてしまう。
「あの…俺が押しましょうか?」
「ひっ!」
振り返った私は恐怖と驚きで後ろに下がってしまう。
でも、これが彼との初めての出会い。
目つきの悪い彼との。
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