新春おみくじバトル
寿甘
姉弟喧嘩
「勝負だ、
高天原では
「今日は何の勝負をするのじゃ?」
毎日毎日勝負を持ちかけてくる弟に、姉の天照大神はもはや慣れっこだ。皮をはいだ馬の死体を投げ込まれて天岩戸に籠った引きこもり太陽神も、今ではベッドに寝そべって餅を食いながら弟の荒神を迎えるほどになっていた。
「今日は人間の世界で年が変わり、多くの者達が神社へ初詣をしては一年の運勢を占う
「左様か。して、それが勝負とどうつながるのじゃ? 参拝客の数でも競うのかえ?」
「そうではない。我等も籤を引いて、その結果を競うのだ」
「勝負のルールは? どこの神社の籤を引くのじゃ」
もはや天照大神は素戔嗚尊が持ち掛ける勝負の内容がどんなものであろうと心乱されることはない。日毎示される勝負の数々は、千年ほど前から何でもありになっていた。なお二人の勝敗については誰も数えていないので、どちらが勝ち越しているかは当事者達にも分からない。そもそも何のために争っているのかすら、今となっては誰にも分からなかった。
「公平を期すため
「それは月読も災難なことだのう」
「姉と弟の戯れに付き合うぐらい、どうってことありませんよ」
どこからともなく現れた月読命は、籤引き用の箱を手に持っている。天辺に穴の開いたよくある箱である。箱の裏側には値札シールが貼られていて、どうやら人間の国で買ってきたようだとわかる。月の神がどうやって買い物をしたのかは二柱の神にも分からぬ。
「ではルールを説明しましょう。この中には大吉から大凶まで八つの種類の籤が入っています」
「八つ? 大吉・吉・中吉・小吉・末吉・凶・大凶の七つではないのか?」
「残りの一つは引いてのお楽しみです」
「それは楽しそうだな!」
何が楽しいのかは分からないが、素戔嗚は何となくノリで楽しそうだと思った。
「それで、よりめでたい籤を引いた者が勝ちというわけじゃな?」
「いえ、一番強いのは大凶です」
「大凶」
「次に強いのは大吉です」
これだけ聞いても二柱の神には強さの順番が把握できない。
「では一番弱いのはどれじゃ?」
「それは、吉です」
「なにゆえ?」
「どれ位めでたいのか分かりにくいからです」
「分かりにくいから」
理不尽である。実際、吉は上から二番目だったり四番目だったりする。何はともあれ、強さの順番が全く分からない。
「では楽しい秘密の籤を引いたらどうなるのだ」
「爆発します」
「爆発」
「もうよい、オチが見えたわ」
「未来を予知するのは反則ですよ、姉上」
こうして、暇を持て余した神々の遊びはダラダラと続いていくのだった。
なお、この後天照大神の神殿は爆発する。
新春おみくじバトル 寿甘 @aderans
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