冒険者ギルドと武具屋

ハローワークや転職サイトのようなものはないが、この世界には仕事を請け負うことができる冒険者ギルドがある。

ここにはさまざまな依頼が掲示板に提示されて書かれた紙にはランクが書かれている。

冒険者のランクはEからSまで存在している。

因みに俺の冒険者ランクはDだ。

俺はここの受付嬢から「数字の合計だけならBからスタートしてもいい数字ですね」と皮肉を言われてしまった。

少し悲しいが、仕方がないことなのかもしれない。

冒険ともなれば体力やスタミナや筋力を要求される。

だがその水準がBになる為には達していない。

冒険者の資質は依頼の達成ではなく、いかに五体満足で生きて帰ってこれるかが重要になっている。

その為、俺のランクはD止まりなのだ。

他の人たちがCもしくはB判定をもらっているのを横目で見ながら自分に足りないものを考える。

それは無論、筋力であり、体力であり、スタミナだ。

筋トレと走り込みは毎日の課題になってくるだろう。

ただ受付嬢は俺にとってのおすすめ装備を教えてくれた。

どうやら受付嬢は各人間のステータスを見てどの様な武器防具がオススメなのかをアドバイスするのも仕事の一環らしい。

そのオススメ武具を本に記載してもらい、指定された武具屋を教えてもらうと俺はすぐにその武具屋に足を運んだ。


「いやぁ、兄さん、尖ってるねぇ」

と、武具屋のオヤジに言われてしまった。

勿論尖っているのはステータスのことである。

「死にかたも尖っとったねぇ」

と、ぼそりと市杵島姫が言う。

その魂を拾った貴女も大概では?

と言う言葉をぐっと飲み込んで早速俺は信仰ビルド装備を購入した。


武器 儀式の直剣 (儀式系の魔術を使用する際に魔術発動速度と攻撃力をアップしてくれる短剣、使い方はオーケストラの指揮棒のように構えたり振るうだけで魔術が使用できる。因みにこの剣で直接切る際には信仰のステータスが威力に反映されるため、俺の場合はそこそこの威力になる※ただし、剣の威力自体は低いのであくまでそこそこの威力である)

盾 信仰の印の盾 (実際の盾ではなく、防御したいと思った時に白くて透明な盾が飛び出てくる腕に巻き付けるタイプの鎖、勿論防御力は信仰のステータスに依存する)

指輪 炎の指輪➕祝福の指輪 (炎系の儀式魔術が使用できるようになる指輪と体力とスタミナが徐々に回復する指輪)

鎧 信仰者の布の服 (見た目は羊の毛の様なものでできたちょっとぼろっちいシャツ、ただし信仰力に依存して防御力がアップするので見た目に反してかなり頑丈)

靴 風のブーツ (信仰力の影響を受けて風が発生し移動速度が格段に上昇するブーツ。高い所から飛び降りる際に落下速度を軽減してくれる効果もある)


これで3500コールだった。

6000コールくらいは覚悟していたので随分と安く済んだなと思って安心している。

何故これだけ安いかというと信仰ビルド装備は素材が安価なのに対して装備を利用するものがいないのが原因だと教えてもらった。

要するに供給過多きょうきゅうたかなのである。


「なあ、兄さん、ちょっと教えて欲しいんだけどよ、どうやったらそんなに信仰を鍛えることができるんだい?俺はここに勤めてから結構長いが信仰の数値が99なんてあんたが初めてだよ」

「それは、まぁ、毎日、神の存在定義についてとか、国際政治と経済と宗教についての相互作用とか、自由主義における現在の宗教の立ち位置なんかを考えていれば自然と上がってくるんじゃないですかね?」

「すまない兄さん、素人でもわかる様に教えてくれるかな?」

「えーっと、とってもわかりやすく言うとですね、どうやったら人が神様のもとで幸せに生きていけるかって言うことを考え続ければいいんだと思いますよ」

「それは、祈る事とどう違うんだい?」

「神様が我々を救い導いてくださるのなら、神が露頭(ろとう)に迷った時、我々が神を救うべきである、と考える事です」

「兄さん、あんた大変なことを考えるね、神が露頭に迷う?そんなことがあるもんか」

「そうですね、まぁ、滅多にないことかもしれませんが・・・」

まぁ、分からんか、一般人には。

そして、それでいいのだと思う。

尖っててもいい事など大してない。

その証左にバランスのいい連中は皆、俺より冒険者ランクが上だ。

人間社会においてバランスというのは何よりも重要視されるべきものだ。

真人間まにんげんは信仰についてあれこれ考えるべきではない。

ただそれでも信仰心を上げたいというのなら、盲信などはしないことだ。

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