ゴリラ物語PART2🦍🍌✨ 〜スーパーでの出来事〜
ほしのしずく
第1話 バナナ🍌を求めて
12月20日(金)
時刻【19:00】
天気【雪 最低気温0℃ 最高気温10℃】
仕事を終えたゴリラは自宅から徒歩10分ほどの距離にある講和堂という、彼の住む大阪ではマルデ・プラザという名前になっている地元スーパーにきていた。
ゴリラは、いつものリュック背負っている。
その中には月曜日のリモート会議に備えてノートパソコンと買い物用のエコバックが入っており、右手には作業着が入った紙袋を持っていた。
まずは、入口付近のオリジナルブランドの衣服が売られているファッション雑貨ゾーンを通り抜けていく。
「あ、ゴリラさん! 今日もお買い物ですか?」
彼に話し掛けるのは、茶色のハンチング帽を被り、赤、黄色、黒色のカラフルなボーダーラインが胸元に入ったニット生地のセーター。
クリーム色のテパードパンツにムートンブーツを履いた身長150cmの女性店員。
彼女も例の如くゴリラとバナ友だ。
そして、実は彼がオーダーメイドのバナナの椅子を発注したデザイナーの娘でもある。
話し掛けられたゴリラは仕事終わりということもあり、とても上機嫌で白い歯を見せて応じていた。
「ウホ、ウホ!」
「金の房ですか?! えっ、でも高くないですか?」
「ウホウホ、ウホ!」
「なるほど、週末のご褒美ですか!」
金の房の話を聞いた彼女は、バナ友ということもあり前のめり気味になっていた。
その反応が嬉しいのかゴリラは首から下げていたスマホを見せた。
そこには、スクショされた今日の広告が映し出されていた。
子供ような笑顔をしながら、大きな指で小さなスマホの画面を指差している。
「ウホ、ウホウホ」
「このネットのチラシにも載っていた?」
「ウホウホ!」
「そういうことですか! 特価で売っていたと!」
「ウホ!」
「それは急がないとですね! 売り切れたら大変です」
「ウホウホ」
「あ、はい。気にしないで下さい! またお時間がある時にでも! 30cmの靴も発注したので」
「ウホ、ウホ!」
「いえいえ! お礼なんてとんでもない」
「ウホ!」
「あ、そうですね! お気をつけてー!」
「ウホウホー!」
マイカとのやり取りを終えたゴリラは頭の上に音符を浮かべながら、左手にコーヒーショップ、右手にシュークリーム屋がある通路を歩いていく。
すると、コーヒーショップの中から声が聞こえた。
「ゴリラさーん、グアテマラ産の浅煎り豆がセール中ですよー!」
元気に話し掛けるのは、身長170cm。
中肉中背の清潔感の漂う雰囲気に白のタートルネックのセーター。
下は黒のスキニーパンツと白色のスニーカーを履き、コーヒーショップのエプロンをつけたコーヒー好きの男性店長。
ちなみに、当然ながらゴリラはこの男性ともバナ友だった。
しかし、今までのバナ友とは関係性が少し違う。
というのも、大輝はバナナを食べることができないからだ。
本人が言うには味わい自体は好きなのだが、どうしてもあの独特な食感が苦手ならしい。
ただ、そこはゴリラ。
自分の推しシロップ。MONIN(モナン) イエロー バナナを教えてバナ友になっていた。
「ウホ!?」
「本当ですよ! どうします? 寄っていかれますか?」
「ウホ……」
「あ、いやいや強制じゃないので」
「ウホウホ?」
「そうですね。30%OFFはなかなかにないですね」
「ウホ!」
「あ、はい! わかりました。すぐご用意致しますね」
「ウホ!」
彼はお気に入りの豆であるグアテマラ産浅煎りコーヒー豆200g。豆のままで購入することにした。
ちなみに、ゴリラの好きな豆の精製処理は、ウォッシュド(水洗式)ではなく、ナチュラル(乾燥式)の果肉が残った状態で処理された少しフルーティーな物を好んでいる。
理由は自然に優しい製法と言うことに加え、バナナシロップとの相性がいいからということらしい。
ただ、実際は完全に彼の好みだ。
しかし、このことがコーヒーショップの店長とバナ友なった要因の一つとなっていた。
それは大輝とゴリラの味の好みが同じだったからだ。
「お会計は1026円となります」
「ウホ!」
「d払いですね! ではこちらにかざしてください」
「ウホ」
大輝から言葉を受けた彼は首から下げているスマホを手に取り、画面を切り替えてQRコード読み取り機へとかざした。
《ポヨンピーン♪》という決済完了の音が鳴る。
「はい、大丈夫です」
「ウホウホ?」
「あ、そうですね。ポイントカード! それとエコバックはお持ちですか?」
「ウホ!」
その問い掛けに自慢げな表情をして胸ポケットから財布を出してポイントカードを渡し、その流れでリュックに入れていたエコバックも取り出した。
「さすが、いつもありがとうございます。では、こちらに入れさせて頂きますね!」
「ウホホ……」
大輝の「さすが」という言葉を受けて顔緩ませるゴリラ。
「はい、まずはポイントカードをお返ししてと! そしてこちらが豆です!」
「ウホウホ!」
「いえいえ! また来てくださいね」
「ウホ」
こうして、彼は左手にコーヒー豆が入ったエコバックを大輝から受け取りあとにした。
🦍🦍🦍
時刻【19:20】
ゴリラは、店内の端に位置する隣にファーストフード店があるフルーツコーナーへと来ていた。
買い物カゴを持つ為、別々に持っていた荷物を纏めて右手で持ち左腕に買い物カゴを掛けている。
だが、その表情は明るくはなく、肩を落としていた。
大好きなバナナ。
その上、高級品である金の房を前にしているはずなのにだ。
「ウホ……」
ため息をつく彼の前には、値札とポップのみとなった金の房が陳列されていた置き場があった。
そう、バナナは売り切れていたのだ。
ゴリラがコーヒー豆を買っている間に。
佇む彼の頭には、あの時断っていれば……ということがよぎっていた。
だが、そうすると30%OFFのグアテマラ産のコーヒー豆が手に入らなかった……。
複雑な気持ちを抱きながらもゴリラはつぶらな瞳を見開いて周囲を確認する。
彼はまだ諦めていなかった。
「ウホ! ウホ!」
それは、この場所以外にもバナナが置かれている場所が存在するからだ。
金の房があった所から、左から順にスミフルの甘熟王。Doleのスウィーティオに極撰。田辺農園のバナナといつものモンキーバナナへと視線を移していく。
だが、やはり目的の金の房は見当たらない。
「ウホ! ウホウホ!」
彼はここで諦めるにはいかなかった。
それは仕事終わりのご褒美にと。
ずっとバナナのことを頭に置いて仕事を頑張ってきたからだ。
今日はとても忙しく、メンターメンティの関係にある
他の部下たちも、週末ということで慌ただしい日を送っていた。
もちろん、ゴリラ本人も朝からの新たな工場への移管、委託の為のスケジューリングを決める為の打ち合わせがあり、それが終われば新しい委託先に合わせたシステムの構築。
そして、それを逆算し材料などが不足しないかを予測していき、息つく暇もなく次の打ち合わせへと向かう。
これらを経てこの場所へと辿り着いたのだ。
しかも、バナ友となった
だから、尚更諦めるわけにはいかなかった――。
🍌🍌🍌
――彼が探し始めて15分後。
時刻【19:35】
どれだけ探そうと見つからない。
バナナが陳列する場所の後ろに位置するいちごゾーン。
その右隣の柑橘類が置かれている棚。
左隣のりんごが並べられている所。
おつとめ品が置かれた台車まで見たというのにだ。
「……ウホ」
ゴリラは諦めかけていた。
無理もない。
これだけ探したというのに見つからないのだ。
――その時。
後ろから、誰かが話し掛けてきた。
「ゴリラくん、どうかされましたか?」
白い帽子に白色の衣服。
髪の毛は帽子の中に入れており、青色のエプロンをつけてる薄化粧の女性。
彼女は鮎川真奈美、45歳。
マルデ・プラザの果実などの陳列係であり社員だ。
ゴリラとはよく果実の鮮度について語り合う仲。
もちろん、バナ友だ。
「ウホ……ウホ」
「ああ、それならちょうど並べようとしていたところよ?」
「ウホ!?」
「ホントよ? ほらこれ」
彼女が指差す所には、台車の上に積まれた段ボールがあり、そこには金の房と書かれている。
あったのだ。
ここにゴリラが望んだ至高のバナナが。
念願の金の房を目の前にして、彼の鼓動は高鳴っていた。
後もう少しで、ドラミングするほどにだ。
「ウホ!!」
「うふふ、いいわよ! どうせ今から並べるんだから」
「ウホウホ! ウホウホ!」
「大袈裟ね! 今日は雪の影響で入荷が遅れただけよ」
「ウホ、ウホ!」
「それでも、女神さまだって? うふふ、ありがとう。その言葉は受け取っておきます」
「ウホ?」
「はいはい、どうぞ」
「ウホウホ! ウホウホー!」
彼は出したてホヤホヤのお目当ての金の房を受け取り、誰よりも嬉しそうな顔をしてセルフレジへ向かった――。
🦍🦍🦍
――その後、店内にはスキップをしながら上機嫌にスーパーのテーマソングを口ずさむゴリラの姿が目撃されたらしい。
🦍🍌🦍🍌🦍
🍌ウホウホ🍌
🦍🍌🦍🍌🦍
―――――――――――――――――――――――
作者のほしのです🌟
いつもながら拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございます。
感謝です✨
今回はゴリラ主任のとある日常を綴ってみました!
お楽しみ頂けましたでしょうか?
とにかくクスッときて笑顔になってくれれば、私もゴリラも喜びます!
ウホウホ🦍🍌
読んだ皆さんにバナ友ができますように🦍🍌
難しいことなんて、バナナを渡せば解決〜!🍌
ゴリラ物語PART2🦍🍌✨ 〜スーパーでの出来事〜 ほしのしずく @hosinosizuku0723
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