撃破

米田健の釈放と襲撃

最終話 佐藤一家と米田健

☆佐藤華(さとうはな)サイド☆


結婚式を終えてから1年が経過した。

7年も経ったんだなって思う。

この間も目まぐるしい変化があった。

先ず1つ目に。


成宮家は事実上...財閥は解体された。

何故解体されたか。

その理由は至って簡単である。

1つ目に成宮の父親と母親の関係がこじれた。

その為に解体せざるを得なかった。


2つ目に信頼度が失われた。

成宮の母親は影ながらとんでもない事をしていて逮捕されたのだ。

それは米田家との薬物の違法取引である。

そして米田健次郎。

米田健の父親は薬物によって事故を誘発して殺害されていた可能性が高まったのだ。

薬物接種による中毒でだ。


つまり...米田健次郎は被害者である。

そして米田健による被害者は大勢居た。

暫く司法の裁きが下るだろう。

因みに私達は実家で新婚生活をしている。


まだマンション用のお金が貯まって無いのでだ。

貯めてから家を出ようとしているが...どうなんだろうとは思う。

そう考えながら私は横に居る旦那さんを見る。

佐藤徹をだ。


「徹」

「ん?どうした」

「ぜんざい美味しく出来るかな」

「...そうだな。お前と一緒ならな」


因みに花だが大学に奨学金を貰って進学した。

それから一人暮らしをしている。

つまりこの家に居るのは母親と父親と徹と私だ。

私は笑顔を浮かべながら徹を見る。


「美味しそうだな」


お父さんがやって来た。

元気そうな顔をしている。

因みにお父さんの癌だが消えた。


治療の故なのか分からないがいきなり消失した。

なのでこうして癌にはさいなまれず家で一生懸命動きながら暮らしている。

社会生活に戻る為に家で働いている。


「お父さんも食べる?」

「それは当然だろう。食べるに決まっている」

「そっか。じゃあできるまで待ってね」


お母さんは今は働きに出ている。

あっという間に元気になった。

その原因が薬物の中毒だ。

つまりお母さんも薬物を飲まされて記憶を消されていた可能性が高まった。

だけどその中毒症状が消え働けるようになった。


そして徹だが。

徹は...スクールカウンセラーの仕事に就いた。

人の心を研究したいのもあったそうだ。

偶然か分からないけど花も福祉系に進んでいる。


「...じゃあぜんざいを作ったらバンドの練習だね」

「そうだな。しかしまさかこうやって表じゃなくてVチューバーバンドで活躍するとはな。チャンネル登録者も500万人達成したしな」

「...そうだねぇ。でも仕事しながらだったらこれが一番ベストだよ」

「まあ忙しいしな。看護師さん」

「そうだね」


私は看護師になった。

今は助産師の勉強をしている。

何故なら命を...命に。

接したいと思ったからだ。

そして私のお腹には...赤ちゃんが居る。


「無理はするなよ。お腹に影響するから」

「まさか妊娠しちゃうって思わなかったから」

「そうだな。だけど第一子だからな。大切にしよう」

「うん。徹」


妊娠3カ月目だ。

だからこそ無理は出来ない。

チャンネルの登録者にも説明している。

妊娠して無理は出来ない、と。


「じゃあ後は...」


そう言っていると玄関のインターフォンが押された。

私達は顔を見合わせてから「アイツらか」と言いながら徹がドアを開ける。

そこにはバンドメンバーの祥子。

それから同じメンバーの梓と小春。

そして千尋が居た。

私達を見ながら笑顔を浮かべる。


「やあやあ」

「入っても良い?」


そう言いながらもづかづかと入って来るみんな。

私は「もー」と言いながら苦笑い。

それからみんなを見る。

するとみんなは「良いじゃん。赤ちゃんの事は配慮するから」と笑顔になる。

私は苦笑いを浮かべながら「ぜんざい食べる?」と聞いてみる。

みんなは「そうだね」と答えた。


因みにだが祥子はピアニストになった。

そして梓はプログラマー。

小春はマネージャー。

千尋はドラマーになっている。

本業はそっちだが裏はピアノ、ピアノ、マネージャー、ドラマーとなる。


「...みんな。ありがと」

「どういたしまして」

「なにもしてないけど」

「そうだよね」


そんな会話をしながら宴会の様になる我が家。

私は嬉しくなりながら笑みを浮かべる。

そうしていた午後。

私達に不幸が訪れた。

何がといえば。



「またインターフォンが鳴ったな」


何故かまたインターフォンが鳴った。

徹がそう言ってから出ようとする。

新聞屋とかだろうか。

そう思いながらドアを開けると...散弾銃の銃口があった。

私はまさかの事態に「きゃぁ!!!!!」と絶叫する。

その男は右目に傷跡を持った状態で平然としながらこう告げた。


「こんにちは」


とだ。

私は唖然として「な、何で貴方が」と震える声で告げる。

すると徹が「お前...その銃は本物か」と言う。

その男、米田健はこう返事をした。


「ええ。これは猟銃で本物です。これは生前の親父がイノシシの狩猟に使っていたものでして」

「...華。警察を呼べ。今直ぐに」

「させませんよ。まあどっちみちにしても警察が来るまでは2分かかりますよね。平均で。だったら皆殺しにするには十分です」

「どこに隠していたか知らない。その前に何故お前がこの場所に居るのかもわからないんだがどうなっている」


110番する華。

米田兄が...何故この場所に居るのか。

思いながら居ると米田健は「復讐です。皆殺しにしてやる。僕が作ったものを壊された恨みです」と言う。

「ああ因みに司法では精神鑑定の結果、心神喪失って事で僕は無罪になったんですよ」と言いながら、だ。

司法の判断がおかしいだろ!!!!!


「それで7年もかかった理由は」

「...僕が準備をしているのに7年間かかったからですよ」


黒い服に黒い帽子の男はそう言う。

サバイバルナイフも取り出した。

マジに俺達を皆殺しにする気かコイツ。

軍人の様な感じだが。


「お前。こんな事をしてただで済むと思うな。今度こそ刑務所から出れないぞ。下手すれば今度は死刑だ」

「良いですよ別に。貴方がたを殺せれば何でも」

「....」


ポケットから弾薬を取り出して散弾銃を折って装填する。

それからニタッと笑う米田健。

俺は睨みを効かせながら見つめる。

そして米田健は軍人が履いている様な長靴のまま家に入って来た。


「みんな!!!!!逃げろ!!!!!」


俺は前を見たまま絶叫する。

すると米田健はいきなり俺に襲い掛かってきた。

思いっきり殴り飛ばされる。

そして地面に叩き伏せられた。


「うぐ...」


そしてあまりの全力の殴りに意識がはっきりしない中。

米田が「貴方から処分しますね」とサバイバルナイフを振り翳す。

と同時にいきなり米田健の左腕にどすっと音がしてボウガンが刺さった。

え?!

貫いている。


「うぁ!!!!?」

「...」


そこに居たのはボウガンを持っている華の親父さんだった。

ボウガンとかどっから持って来たのだ。

思いながら居ると血を流している米田が「お前!」と言いながらサバイバルナイフを持ってから遅いかかった。

その米田にまたボウガンを打ち込む華の親父さん。


「...」


そのまま米田は左胸にそのボウガンの矢が思いっきりに刺さりその場で絶命した様に見えた。

俺は膝から崩れ落ちる。

そして華の親父さんは「大丈夫か」と聞いてくる。

その手のボウガンを見て俺は聞いた。


「どっからそんなものが...」

「元来、友人仕様ではない。これはあくまで競技用だ。私が昔、競技していてね。だけど...使わざるをえなかった」

「...助かりました。でも」


そしてサイレンが聞こえてくる。

それから米田健の遺体は運ばれて現場検証。

更に俺も骨折している可能性があると運ばれてあわただしくなった。

華の親父さんは逮捕されたが釈放された。

正当防衛という事でだ。



「...ごめんなさい。あなた」

「...気にしない。...お前とお腹の子が無事で良かった。本当に」

「...」


華は俺を見ながら悔し涙を浮かべる。

ここはバンドの演奏する貸し切りの場所だ。

頬にガーゼをくっ付けた俺はマイクの前に立つ。

それからみんなを見る。


「本当に大丈夫か。あの時から1週間しか経ってないけど」

「うん。今こそ歌うべきだと思う」

「私達は演奏するべきだと思う」

「気を逸らすのにね」


俺はみんなを見ながら頷いた。

そして俺は周りを見てからスタッフさんなどを見てから息を吸い込む。

それから歌い始めた。

その歌声が誰かの助けになります様に。

そう願って。


「哀しみは癒えないけど~」


そういう感じで目の前のパソコンのVチューバーの動きに合わせながら歌う。

それから俺は全ての事に目を閉じながら目を開けてから世界を見渡す。

こんな悲しみは俺達で終わらせないとな。

そう思いながらだ。


今度こそ俺達は幸せになる。

そう思いつつ。


fin

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