第47話 最後の鉄槌

☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆


最後はやっぱりこうなるか。

思いながら俺と梓と。

祥子と華、それから小春と千尋と一緒に成宮家にやって来た。


そして家の中に入れてもらい驚くみんなを他所に俺は成宮の父親と母親に接触した。

2人は俺達を見る。

それから父親が「君達は何をしに来たのかね」と聞いてくる。

俺は「すいません。いきなりの訪問」と謝る。

そうしてから成宮の父親を見る。

「成宮弘子さんを自由にしてください」と言いながらだ。

すると成宮の父親は俺を見据えながら「お帰り頂こう」と言葉を発した。


「...帰りません。だって弘子さんが解放されてないです」

「これは家庭の問題だ。君達の様な赤の他人は関係のない事だ」

「...」

「なら私なら良いでしょ」


そう言いながら祥子が前に出る。

それから2人を見つめる。

2人は驚きながらも次に母親が「のこのこ帰って来たわね。負け犬が」と言い出しながら睨む。

俺はその言葉に考える仕草をしていると「お姉ちゃんを返して。私にとっては居なくちゃいけない存在なの」と祥子が必死に言う。

みんなもだ。


「...勝手な真似をしたお前にそれを言う資格はない」

「確かにそれはそうだけど」

「...私達を殺したい程に憎んでいるの?負け犬。残念だったわね」

「...確かにそうだった。殺したい程アンタ達を憎んでいた。だけどそれは違うって気が付いた」

「...?」


祥子の言葉に俺は驚く。

それから見ていると祥子は胸に手を添える。

「だけど憎むのが全てじゃないと思った」と言いながらだ。

そして自らの父親と母親に対峙する。


「...どれだけ恨んでもアンタ達に私は仮にも17年は育ててもらったから」

「...」

「...そして殺しても全てが何も解決しないって思った」

「...随分と変わったなお前は」

「そうね。あなた。変わったからコイツ...私の首を絞めたのよ!!!!!最低よね」


そう言いながらぎゃいぎゃい言う成宮の母親。

その姿を静かに見る祥子。

それから祥子は頭を下げた。

「お願いです。弘子お姉ちゃんを自由にして下さい」とだ。

そんな言葉と様子に驚きながら祥子の父親が反応する。


「...仕方がない。...そこまで言うなら解放してやらなくもない」

「...え?」

「お前達の最大の力を感じた。それに今更私達が歯向かっても仕方が無さそうだ」

「ちょっとあなた!負け犬に負けてどうするの!」

「...私達の力ではその感情は抑え込めない。後は勝手にしろと言っているだけだ」

「はあ!?意味分からないわ!あなた!」


激高する成宮の母親。

俺はその姿を静かに見る。

すると成宮の母親はとんでもない裏目に出た。

何をしたか。

それはパン切ナイフを持って来たのだ。

俺達はざわつく。


「生きては返さないわ。アンタに首を絞められた恨み。絶対に忘れない」

「...」

「...私がこれだけ怒っているのは首を絞められただけじゃないわ。アンタ。...祥子が憎たらしい程に鍵盤を叩く音が私の母親に似ているからよ」

「...やはりそういう事か...」

「絶対に許さないわ。アンタなんか...」


すると怯んでいる俺達よりも先に成宮の父親が隙をみて杖でパン切ナイフを叩き落とした。

それから「本当に間抜けかお前は。話が通じないな」と言いながら青じみになっている手を見ながら項垂れる成宮の母親を見る。

そしてそれから俺達を見てくる。


「...正直。...私はこれまでも今までも事業で間違った事をしてないと思う」

「...」

「...だが今回。米田に金を貸したのは間違っていたと思っている。何故なら奴の行動は常軌を逸してしまった。そもそも私は人殺しの様な真似を認めていない」

「...」

「...私がやった過去の事を考えるとそんな事は言える立場では無いが」

「...」


そう言いながら「...まあ後は勝手にしたまえ。死ぬも生きるもお前達の勝手だ」と言いながら踵を返してから「今回、弘子をこの場所に連れて来る様に言ったのは私の妻だ。...私は何も知らなかった。後は好きにしたらいい」と言いながら自らの妻を立たせてから去って行く。

俺達は顔を見合わせて唖然とした。

そうしていると背後から「祥子...」と声がした。


「...お姉ちゃん...」

「...無茶をして。...心配だったよ」

「うん。...だけど私は強かった」

「え?」

「...みんなが居たから」


それから俺達を見てくる祥子。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

まあ何はともあれ、か。

そう思いながら俺達は祥子と弘子さんを見る。

正直状況は何も改善して無いと思うがまあ解放されたから良しとするか。


「...お婆ちゃんの話。聞いた?」

「そうだね。一応は」

「...そう。...じゃあ何も言わない。...ゴメンね」

「...」


問題が全て解決した訳じゃ無いが取り敢えずは。

そう思いながら俺は祥子と弘子さんが抱き合う姿を見ていた。

それから俺達は見合いながら笑みを浮かべる。

結局、成宮の父親が最後は真面目だったって話だな。

そう思いながら。


それから...7年が経過した。

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