第30話 徹の激高
☆渦宮華(うずみやはな)サイド☆
なんてこった。
というのも私がいきなりデートする事になった。
それも、と、徹と。
私はカァッと顔が熱くなる。
どうしたら良いのだ。
「...」
「...」
徹には既に好きと伝えてある。
その為にかなり居心地が悪いのだが。
どうしたら良いのだろう。
え、えっちな事もしてしまっている。
だからこそ居場所がない。
「なあ」
「ひゃい!?」
「...あ、す、すまん。...お前さ」
「は、はい!」
「...母親はどうなっているんだ?」
「あ...お、お母さん?」
「そう。お前の家って母親居ないよな」
「...お母さんは居ないよ。...行方が分からないんだ」
私はそう告白しながら徹を見る。
徹は「それは怒りとか無いのか」と聞いてくる。
私は「怒りとか無い。...お母さんが失踪したのは...山登りの最中だったから」と話してから空を見上げる。
「...クマに襲われたって話だけどね」
「...そうだったんだな」
「うん。クマに襲われて...そのまま亡くなったんじゃないかって話だよね」
「...マジか」
「趣味が山登り、歌だったから。だからこそ...だね」
そう言いながら私は自嘲する。
すると徹は私の頭を撫でた。
「い、いきなり何を!?」と言いながら私は慌てて徹を見る。
徹は「あ。すまん。...急に撫でたくなったから」と言葉を発した。
それから複雑な顔をする。
「...お前も大変だな」
「大変じゃない。...徹より遥かに大変じゃないから」
「俺も大変じゃないよ。...俺は普通だ」
「...そうは見えない」
「...有難う。そう言ってくれて。華」
私は赤面しながら徹を見る。
すると徹は「...お前の母親が戻って来る事を祈りたいな」と呟く。
空を見上げながら。
私はその言葉に「うん」と返事をした。
「徹。有難う。私なんかと出会ってくれて」
「お前と出会うのは運命だった。それこそ歌で引き逢わされた様なもんだ」
「そうだね。確かに。だけど有難うって言いたい」
「そうか」
そして歩いているとそれが見えてきた。
それとは...博物館。
音楽の楽器とか歌手の事を集めた祭典がやっているらしい。
だから徹と一緒に来たかったのだ。
「チケット買ってくるね」
「...待て。お金はどうするんだ」
「今は半額セールをしているらしいから。...大丈夫だよ。お金も予備で持っていたから」
「しかしお前。お金...」
「良いの。巻き添えにしたのは私だから。安心して」
徹が心配げな眼差しを向ける中。
私は笑顔で販売所に駆け出して行った。
それからチケットを購入してから徹の元に駆け出して行く。
徹はそのチケットを受け取りながら私にお礼を告げる。
「サンキューな」という感じでだ。
「荷物もあるから長い時間は滞在できないね」
「そうだな。荷物はまあ冷食とか無いから良いんだけど」
「いや。持たせているのが悪いから」
「俺の荷物だから大丈夫だ」
まあとは言っても長丁場にするのは避けたい。
思いながら居ると徹は私の手を握った。
それから「じゃあ行こうか」と笑みを浮かべる。
私は驚きながらも「うん」と返事をした。
そして私は心臓をドキドキさせながら徹とのデートを楽しむ。
☆
プレス〇ーとかの衣装の模型があった。
音楽界の天才だ。
私はウキウキしながら楽器のレプリカを観ていた。
それから私達は館内を回る。
そしてコーナーを次々に観て回る。
「...楽しいね」
「それは確かにな。...衣装とか本物じゃ無いけど楽しい。説明書きを読むだけでもな」
「ううん。そういう意味じゃない」
「...え?」
「徹と一緒に居れて楽しい」
「な!?」
徹は真っ赤になりながら慌てる。
私はその姿を見てから徹の腕を見る。
それからゴクリと喉を鳴らしてから腕を回した。
徹の腕にだ。
恋人繋ぎをする。
「おい!?」
「今日だけは私の彼氏だから」
「...お前なぁ」
「宜しくね。彼氏さん」
そう言いながら私は笑顔を浮かべる。
それから彼の手を引きながら私は指差した。
「次あっちを回ろうか」と笑顔のまま。
徹は苦笑しながら「おいおい」と言っていたが何だか嬉しそうだった。
「誰かが見ているかも知れないだろ」
「良いじゃない。今日だけは私の彼氏だから」
「まあそうだけど...」
「私は気にしないよ」
私は駆け出して行く。
それから徹の手を引いた。
そして館内を全部見回ってから私達は表に出る。
そうしてから徹を見た。
「楽しかったね」
「そうだな。...とても楽しかった」
「うん。有難うね。...徹」
そして歩いていると寒気を感じた。
というか...これは視線か?
思いながら顔を上げると徹が目の前を見ていた。
それも真顔でだ。
何か...見ている感じだ。
「やあ。初めまして」
「...誰だ」
そこにはイケメンが立っていた。
でも何だか女性か男性か区別がつかない感じの性別不明。
だからイケメンが合っているかも分からない。
ファッションモデルの様な奴だ。
何か恐怖を感じた。
「...僕の事は知ってますか?」
「...まさかと思うが米田か。米田の兄の方か」
「ご名答です。そろそろ自己紹介した方が良いと思いまして」
「...」
「仕事の最中で偶然お見かけしたのでお声を掛けました」
米田という人物は徹が「後ろに居ろ」と言った私を見てくる。
そしてニコニコした。
徹が「のこのこと出て来て偉そうなやつだな」と言葉を発する。
すると米田は「それはすいません」と謝った。
「梓さんの件でちょっと用事がありまして。...僕ですね。実は今ですね。失恋中でして」
「...嘘を吐くな。さっきお前は不良達に指示をしたな。...アイツ。...成宮を犯してという指示を。成宮を使い捨てにしたなお前。俺達は嵌められたぞ」
「僕はそんな最悪な指示はしてないです。でもまあ僕は彼女に飽きたのもあるんですが成宮さん自身は結論から言ってお金を持ってなかったので。成宮さん自身は、ね」
「それに何だか彼女はなんだかいくつも傷を抱えた傷ものでしたのでびっくりです」と米田は話す。
信じられないと私は静かな怒りが湧いた。
今の言葉は本当なのか。
思いながら徹を見る。
徹は...真っ赤になって激高していた。
「成宮の心情も知らない癖にそれに人の彼女を寝取った癖して...」
「可愛いからなのもありました。ちょっと優しくしたら彼女は擦り寄って来ましたよ。あっという間に手に取れました。それに成宮さんも大概ですよね?怒る必要ありますか?」
「...お前!!!!!」
「殴りますか?殴っても良いですよ?警察呼びましょう」
「このクソ野郎!」と通行人が居るにも関わらずキレる徹。
私は「帰ろう。徹」となだめながらそのまま歩き出す。
徹は静かに指示に従ってくれた。
そして歩いているとその米田という人物が私を見て「また今度会いましょう」と話してから鼻歌交じりで博物館の方に去って行った。
「...ありえない」
徹は苛立ちが収まらない感じで居た。
その中で私は考える。
そうか。
彼女は...というか成宮は。
自らで寝取られたんじゃないんだと。
それにしてもあの米田とか言う奴。
何故私を見てきたのだろうか...?
薄気味が悪い。
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