第16話 恐れる事の無い者

☆山吹小春(やまぶきこはる)サイド☆


私は停学処分を受けた。

それから反省文の処分を受けた。

私は複雑な思いだったが後悔は無い。

佐藤くんの事だったから。

考えながら私は反省文を書く。

1週間の停学処分。


1日10枚の隅から隅までの反省文の埋め尽くしだから時間は無い。

私はまた複雑な思いを抱きながら書いていく。

それから外を見た。


いくらカッとなったからといってやり過ぎた。

私は恐らくスクールカーストを思いっきり落ちただろう。

だけどこれは正義の鉄槌と思いたい。

考えながら私は反省文を見た。

400字の原稿用紙。


「...でも馬鹿だな。私も大概」


そんな事を呟きながら居ると玄関が開く音がした。

それからバタバタと音がしてからお姉ちゃんが一目散に入って来る。

お姉ちゃんは心配げな顔で私を見た。

きっとビンタとかされるかも。

考えながら唇を噛んで居るとお姉ちゃんは抱きしめてきた。


「大丈夫?」


そうお姉ちゃんは聞いてきた。

私は驚きながらお姉ちゃんを見る。

するとお姉ちゃんは「人を殴るのは全然良く無いけど。革命の火蓋を切ったきっかけになったね」とニコッとする。

私はその言葉に「だね」と苦笑いを浮かべた。

それからお姉ちゃんに涙を浮かべる。

「ゴメンなさい。期待を裏切って」と謝る。


「私は貴方のやった暴力行為は許せないって思う。だけどおかしいと思う。教室の連中も。だから貴方のやった事が一概に否定はできない」

「...お姉ちゃん...」

「私は貴方に全面的に非があるとは思えない」

「だけど私はアホだよね。こんな真似...」

「貴方が行動を起こさなかったら何も変わらなかったって思う。だから貴方に全面的に非はないよ」


お姉ちゃんはそう言いながら私を抱きしめる。それから「辛かったよね。本当に辛かったよね。ゴメン」と涙声になる。

「気が付かなかった」ともだ。

私は泣きながら「うん」と言う。

するとそんな最中でインターフォンが鳴った。


(宅配便だろうか?)と思いながらドアを開けて私は青ざめた。

何故ならそこに居たのは。

成宮祥子だったから。

私は「何故...住所を知っているの」と聞く。

すると成宮は「SNSの背景から割り出した」と柔和に話す。

何...。


「悪かったって思ってる。だけどそれより。ねぇ。山吹さん。貴方がしたその悪さ。清算しようよ」

「話をズラすのはやめ...まさか悪さっていうのはつまり暴力行為?」

「そう。暴力行為だよ。私は貴方の事が好きになったんだ。こんな裏があるなんてって思って」

「...」

「良かったね。お咎め無しで。だけど貴方も私も同類だね。だからこそお願いがあるの」


「お願いって何」と私は冷めた言い方をする。

するとニコッとしながら成宮は「私の復讐劇に付き合って?」と言ってくる。

復讐って何だ。


「私は彼。佐藤徹が幸せになるのがイマイチ許せなくてね。だから貴方も仲間として手伝ってくれない?嫌とは言わせない。だって貴方も同類でしょ?私と」

「...」

「ね?お願い」


SNSで拡散されているのは知っている。

だからこそ私はそっちの道に行くしかないのかもしれない。

そう考えているとお姉ちゃんが「成宮さん、だっけ?」と言葉を発した。


「うちの妹は確かに悔いのある事をしたよ。だけど噂に聞いている貴方よりかはクズな真似をしてないから」

「貴方は誰?山吹さんのお姉さん?」

「そうだね。私は山吹小春の姉だよ。貴方は噂をよく耳にするよ。成宮さん。貴方のクズっぷりといい、ね」

「そんな事を言って良いの?私は拡散するよ?今の状態を」

「良いよ?すれば良い。こちらも黙って見ている場合じゃないって判断するし貴方に全面的に非が及ぶと思うよ。警察とか介入するかもよ?」

「...」


真顔になる成宮。

それから「ハァ」とつまらなさそうにため息を吐き出す。

「今日は帰る」と言葉を発した。

そして私を見ながら「罪は清算できないよ」と満面の笑顔になる。


「...」

「じゃあね。山吹さん」


それから帰って行く成宮。

私はその後ろ姿を見ながら唇を噛む。

するとお姉ちゃんは「あんなつまらないクソ馬鹿も居るんだね」と頭を掻いた。

そして「そんな事をすれば自らの首を絞める羽目になるってのが分からないんだろうか?」と苦笑いを浮かべた。


「でもお姉ちゃん。彼女は頭がおかしいから本気で仕掛けてくるかも」

「ないない。彼女にそんな根性はない。何故かって?彼女の影響力は大きいかもだけど彼女がやっと培った現状を破壊する様な行為をする様な人じゃないって知ってるから。現実を全てベットする様な人間じゃないよ。あの瞳は」

「...お姉ちゃん...」

「あの子の瞳も聞いた性格も。他人を常に犠牲に成り上がって来た瞳。それがよく分かる。自らで危険な目にはなりたくない瞳だから。まあ人生経験だね。私の。だから彼女が拡散する可能性は万に一つも無いね。ただ問題は今の様に近づいて来る事かな。その辺りは注意しないと」

「...とことんクズだからね」


そう言いながら私は去って行く階下の背中を見下ろす。

それから目を細めてから睨んだ。

私も彼も気を付けなければ。

周りも...。

あの子は悪魔だと思う。

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