呪われた笑顔

第14話 海に行こう

☆渦宮華(うずみやはな)サイド☆


そのニュースは一瞬で構内に広がった。

どういうニュースかといえば。

山吹小春という真面目な女子が友人を椅子で殴り飛ばしたというニュース。

あまりの衝撃に私は唖然とした。

さすがの私ですらだ。


その後に山吹小春は教師達に事情を聞かれた。

事態終息まで1時間ほどかかったらしい。

授業を受けていたが気が気でない。

山吹小春もそうだが。

彼は大丈夫だろうかという感じだ。


考えながら日中を過ごした。

それから私は授業が終わってから昼休みになりすぐに彼の元へ向かおうと教室を出た。

そして教室に向かったが。

彼は居なかった。


教室は沈黙に包まれており。

それどころではない様な感じだった。

何人か生徒が抜けている。

多分...ショックを受けた生徒が抜けたのだろう。

私はその教室を見渡しながら教室を後にした。


それから私は駆け出す。

そして私は彼を探す。

だが彼は居なかった。

そこで私は早退しようと思い担任に相談した。

生真面目な私が早退する。

その事に担任は驚いていたが直ぐに今日の事件の特例で承認してくれた。


「待ってて。徹...」


そんな事を呟きながら私は急いで駆け出す。

鞄を持ってギターケースを持ってから彼の家に向かった。

それから私は彼の家に向かってから息を飲みインターフォンを鳴らした。

するとドアが開いた。

やはり学校には居らず在宅だったか。


「お前?どうした。華」


愕然としながらそう言われる。

私は嬉しい顔をしながらも直ぐに複雑な顔をした。

それから徹に聞いてみる。

「徹。今日は...」という感じでだ。

すると徹は「すまない。今は何も言わないでくれ」と話した。


「徹...」

「...ちょっと衝撃でな。まさか山吹さんが、とな」

「そうだね。確かに」

「彼女は俺を守ってくれた。その事が本当に嬉しいと同時に...彼女が...」


徹は複雑そうな感じで顔を顰める。

私はそんな彼を見ながら鞄をかけ直した。

それから彼を見据える。

彼は「?」となりながら私を見る。


「徹。もし良かったら一緒にどこか出かけようよ」

「出かける?どこに?」

「どこでもいい。遠くに出かけよう。海とか行かない?」

「しかし今の時間からは駄目だろ。問題があるぞ。あくまで学生なんだから」

「そんな生真面目に考えても仕方がない。徹。私は海に行きたい」

「...華...」


私はあくまで徹が好きだから。

彼が悲しんでいるのは私の悲しみだ。

だからこそ今は励まさなければならない。

考えながら私は徹を見る。

すると徹は顔を上げてから「そうだな」と納得してくれた。


「優しいな。華は」

「この時みたいな時の為にバイト代を貯めていたのもあるしね」

「...」

「ね?」

「...有難いけど俺が出すよ。お前の家は貧乏なんだから。俺の為にお金を使わせる訳にはいかない」


私が誘っているんだから私に出させて。

そう言いながら私は笑みを浮かべる。

それから私は徹の手を見る。

私はそのまま手を握った。


「な、何をしている」

「でーと」

「は?で、え!?」

「デート。ね?徹」


私はそう言いながら徹の手を握りつづける。

暖かくてゴツゴツしている。

男の子の手だな。

私はそう考えながら徹を見る。

これ以上に恥ずかしい事をしている癖に何だろうか。

恥ずかしいとしか言いようがない。


「徹。私は貴方が好き」

「あ、ああ」

「だから私は貴方が好きだから結婚したいって思っている」

「...!」

「デートしたい」


私は必死に訴えながら潤んだ瞳を徹に向ける。

徹は私を見ながら赤面する。

そんな徹をジッと見る。

それから私は徹の手を引いた。


「その前に荷物を置かせてもらって良い。家に」

「あ、ああ。良いよ」

「有難う」


私はお礼の言葉を放ちながら私は彼の家にギターケースを置いた。

それから私は「じゃあ行こうか」という感じで手を握る。

すると徹は赤くなりながら頷いた。

それから私を見る。


「海に行ってから。波で遊ぼう」

「なあ」

「何?徹」

「何でそこまで...」

「君の笑顔が見たいから」


そう言いながら私は徹に精一杯の笑顔を浮かべながら徹を見つめる。

徹は驚きながらも納得した様な感じで「そうか」と返事をした。

それから徹は「上着を羽織るから待っていてくれるか」と笑みを浮かべた。


やっと笑ってくれたなって思う。

それから私は頷きながら徹を待つ。

それから上着を羽織った徹が出てきた。

手に何か持っている。

私は「?」を浮かべる。


「お前も着な。警察とか補導員とかに見つかったら怖いしな」

「え?い、いいよ。徹」

「使ってない上着だぞ。嫌か?」

「い、や、じゃないけど...」


徹の服の様だ。

恥ずかしいのだが。

思いながら私は興奮気味に受け取る。


それから上着を羽織った。

やばい。

心臓がドキドキする。


嘘という悪い事をしてからデート。

やっばい。

ドキドキするしかない。

何で?えっち間近で下着姿まで見られた癖に。

こんな事で恥ずかしいとか意味が分からないのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る