第13話 激昂の裁き

☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆


翌日になった。

昨日のあまりの衝撃で寝れなかった。

考えながら俺は学校に向かう。

そして校門から入ると「おはよう」と声がした。

俺はビクッとしながら顔を上げる。

そこに山吹さんが居た。


山吹さんは俺を見ながら柔和な顔をする。

俺は冷や汗をかきながら「どうしたの?」と聞いてみる。

すると山吹さんは「うん。決意したからその事を伝えに来た」と言う。


「決意?な、何を?」

「私は君にアピールしようって思って」

「アピール?何を?」

「私は君にお世話になった。だからその分、恩返しがしたい」


するとその言葉に「駄目だよ」と声がした。

顔を上げるとスクールカースト上位。

そしてイケメンのモテ男が居た。

山吹さんを見ながら「彼は彼なりに忙しいよ。だから大丈夫」と言う。

それから俺を睨む。


「それからあまり調子に乗らない様にね」

「待って?彼は忙しいとか一言も言ってないよ」

「いや。忙しいんだ。ね?」


俺に笑みを浮かべるその男。

その姿に俺は溜息を吐いてから「山吹さん。ごめんね。忙しいから」と立ち去る。

山吹さんに「待っ...」とまで言われたが。


そうだな。

俺は調子に乗り過ぎたんだきっと。

だからこそいつもの調子に戻らないとな。

考えながら俺は階段を登る。

それから教室に入る。


「やれやれだ」


俺はそう言いながらそのままクラスメイトに睨まれながら教科書を用意した。

それからいつもの様に外を見る。

いつもの日。

いつもの時間。

過ぎ去ってすぐに放課後だ。


そう考えていたのだが。 



「やっと捕まえた」

「や、山吹さん!?な、何?」


家庭科室で授業があり。

俺は後片付けを押し付けられ片していると。

山吹さんが思いっきり家庭科室のドアに鍵をかけた。

それから俺と2人きりになる。


「な、何!?」

「ね。何で避けるの?私を」

「それはそうだろう!?君に接触はダメだって彼が...」

「まあ確かに言われたけど。寂しいよ。そんなの」

「や、山吹...さん?」


「私は貴方に興味がある。だからこそね?」と向いてくる山吹さん。

気のせいか顔が赤い気がする。

俺は(まさかまた俺、襲撃される?!)と思いながら後ろに後退りする。

すると山吹さんは「わ、私はえっちな事はできないけど」と言う。

好きでもない相手にする事ではない。


「ね。佐藤徹くん」

「な、何でしょうか」


髪の毛を掻き上げながら俺に近づく。

それから俺は電気コードに引っかかってバランスを崩した。

そして膝から崩れ落ちる。

四つん這いになる山吹さん。

数秒間沈黙した後。


「私ね。恥ずかしいけど貴方が好きなの」


と俺を真っ赤になりながら見てくる。

俺はボッと顔に火が点いた。

え?と思いながら山吹さんを見る。

四つん這いの山吹さんは俺に迫る。


「えっと。キスしよっか」

「き、す!?は!?」


(何を言ってんだ)と俺は考えた時には時既に遅かった。

肩に手を添えられ唇が唇で塞がれた。

そして顔を離した山吹さん。

真っ赤に真っ赤な顔で俺に笑みを浮かべる。


「この事は内緒だね。2人の」

「やま、ぶきさん?」

「私はね。昔から貴方が好き。ずっとずっと好き。だからこそ想いだけでも伝えたかったから。良かった」


笑顔になる山吹さん。

それから立ち上がってから伸びをする。

手を刺し伸ばしてきた。

俺はその手を掴んでから立ち上がる。


「佐藤くん。貴方は貴方らしく生きて下さい」

「山吹さん...?」

「私は貴方が好きだから。だからこそ貴方が幸せになれる様に行動する」

「優しいね。君は」

「あくまで私がしている事は恩返し。君から貰った絆を返しているだけ」


そう言いながら山吹さんは俺に笑みを浮かべた。

それから俺は考えながら教室に戻ると。

何とまあ。

俺の椅子と学習机が表に出されており。

陰湿な感じになっていた。



「これは何」


教室は笑いに包まれているが山吹さんは一切笑ってない。

寧ろ激昂している様に眉を吊り上げている。

そしてクラスメイトが「いや。何つーかさ。佐藤があまりにも調子に乗るからさ。嫌になって」と言った。

俺は「やれやれ」と呟きながらクラスに机を戻す。


それから椅子を持とうとした時。

山吹さんが手伝ってくれた。

するとギャルクラスメイトが「小春!手伝う必要無いってw」と爆笑しながら山吹さんの手を握った。

その時だった。


山吹さんは友人であるそのギャルを椅子で殴り飛ばした。


当然だが勢いよかったので血が飛び散る。

それからクラスは大騒ぎになった。

俺は唖然としながら山吹さんを見る。

激痛に顔を歪める出血しているギャルを見ながら山吹さんは「もう我慢できない。貴方達がやっている事に」と怒りの声明を発した。

厳しい目でクラスメイトを見る。


で。


これがきっかけで俺のイジメ問題は教師達や保護者の間に大いに明るみに出た。

そしてクラスはカーストバランスが崩れ。

そのギャルは軽傷。

ギャル母が立件?を取り下げた為に傷害罪とはならなかったが俺は対応待ちになり。


山吹さんはというとこれまでの経歴を鑑みられ一応、形としては反省文と停学となった。

次やったら退学になるレベルだが。

だけど山吹さんがこんなに何故キレたのかあまりよく分からなかった。

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