第6話 呪われし世界と明ける世界

☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆


華もそうだが梓も俺の為に復讐すると言っている。

だけど俺にとって.....それは何の意味にもならないと思っている。

あんな酷い奴に復讐した所で何になるのか。

そんな事を考えているのだ。


「今日は有難うね。付き合ってくれて」

「...構わないけど俺なんかに付き合って良いの?君は」

「私は前にも言った通り気にしないから」

「...そうか」

「私は...嫌いだなって思う。周りの人達の対応が」

「うん」

「だから私は君に付き合っても差し支えないよ」


そう言いながら横を歩く山吹さん。

鞄を前にしてから笑顔になっている。

俺はその姿を見ながら苦笑しつつ歩く。


そしてCDショップに着いた。

本屋兼CDショップ。

俺はゆっくりとそのショップのビルを見上げる。


「色々有るよね。昔の歌手の人達の歌って」

「そうだな。マイナーなものから有名なものまで色々あるかな」

「君は好きなジャンルある?」

「俺は特に無いけど。落ち着いたものが好きだね」

「そっか」


山吹さんは洋楽コーナーに向かう。

それからCDを探す中。

男性たちがみな「可愛いな」とかヒソヒソしながら歩いていた。

「横の男は冴えないけど」という感じもある。


「気にしないで良いよ」


そういう声がした。

俺は「!」と思いながらCDを見ていた筈の山吹さんを見る。

こっちを見て笑みを浮かべていた。

「私は全然気にしないから」とも言う。


「...だけど...」

「私は何と言われようとも気にしないから」

「...」


ここまで言ってくれる彼女の事が好きだな。

それは恋愛感情とかじゃなくて。

格好良い感じだ。

俺は思いながら見ていると「あれ?」と声がした。

その言葉に俺は冷や汗が出る。


「徹?誰?その人」

「お前。何故この場所に居る」

「...私がどこに居たって良いでしょ?」

「...」


俺はイラッとしながら彼女を見る。

成宮祥子だった。

黒髪のポニテに可愛らしい顔立ち。

そして泣き黒子。


俺を見ながら少しだけ小馬鹿な感じの表情を浮かべる。

その姿を見ながら山吹さんは不愉快そうな顔を浮かべた。

そしてCDを置きながら聞いた。


「貴方はもしかして彼の彼女の?」

「そうですね。...貴方は誰ですか?」

「私は山吹。山吹小春。...貴方の噂はかねがねだよ」

「...そうですか?アハハ」

「...正直。貴方のやっている事は...何も言えないけど不愉快だよ」


「何故彼を裏切って寝取られたの」と聞く山吹さん。

すると成宮は「それはあくまで噂の範囲でしょう」と切り出した。

それから目線が冷たくなる。

「私は彼に愛想を尽かされているんです。最近」という感じに話した。

当たり前だけどひっでぇな。


「そんな訳無いでしょう。彼はあくまで一途だから。...ふざけないで」

「...何故そう言えるんですか?私達の彼氏彼女でも無いですよね」

「あくまでそうではないけど。だけど...彼の事を良く知っているから」

「...」

「...彼は一途に人を愛する。...だから貴方は嘘を吐いている」


山吹さんはそう言いながら成宮を見る。

成宮は「...」という感じの冷めた表情をしている。

そして「話にならないですね」と切り出した。

それから「私はあくまで可哀想な子です。...だから貴方の言ってる事は信じられません」と話してから鞄を持ち直した。


「じゃあ帰ります」

「...逃げる気」

「...逃げるとかそんな以前の話に私の話が否定されているので」

「馬鹿なの?それは貴方が変な事を話しているからだよ」


「話がこんがらがって。貴方苛つきますね」と成宮は話す。

俺は山吹さんに「もう良いよ。山吹さん」と言う。

山吹さんは「でも」と言ってきた。

その言葉に俺は成宮を見る。


「もう別れよう」

「...別れるのは構わないけど...」

「...俺はどう考えてもお前の考えには賛同できない」

「...いやいや。考えじゃなくてまず最初に可哀想な人だよ?私は」


山吹さんは「...」という感じで成宮を見る。

成宮は溜息を吐いてからそのまま去って行く。

俺はその姿を静かに見送ってから額に手を添える。

それから山吹さんを見る。


「...ありがとう。山吹さん」

「何がかな?私は何もしてないよ。反論しただけだよ」

「...それだけでも十分だ。ありがとう」

「あの子はかなり歪んでいるね。思想が」

「...太陽と思って関わった俺が悪かったんだよ。色々とね」


そう言いながら俺は「じゃあ続き。CDを見ようか」と踵を返す。

するといきなり山吹さんが両手で俺の両頬を挟んだ。

それから「何かあったら言ってね。私に」と話してくる。

俺は「!」と思いながら山吹さんを見る。


「私は...貴方の味方でありたい」

「...山吹さん?」

「いつまでもね。...君に救われたんだから」

「...???」


山吹さんはそう言いながら俺から手を離す。

それから「じゃあ続きをしようか」と笑顔になる。

「デートの続き」という感じで...え!?

俺は慌てて反応した。

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