森は僕らの遊び場

みやこのじょう

第1話・森の拠点

 僕の家の裏には山がある。

 母屋の後ろになだらかな斜面と畑があり、そこから先に鬱蒼とした森が広がっている。子守りがてら畑仕事をする祖父母からさほど離れていない森の中は、昔から僕の遊び場となっていた。


 あまり外で遊ぶのが得意ではない僕だけど、ここでは思い切り走り回れる。足が遅いと揶揄からかう子もいないし、木登りでマウントを取ってくる子もいない。自分のペースで遊べる自分だけの空間が好きだった。


「じいちゃん、コレ要らないなら頂戴」

「穴ぁ開いとるぞ」

「いいよ、じゃあ貰うね!」


 畑のマルチに使う黒いビニールシート。使い古され、農具置き場の片隅に丸めて置かれていたそれを抱え、僕は再び森の中へ戻った。

 少し窪んだ場所に一際大きくて斜めに生えている木がある。木の下の地面は綺麗に平らになっていて、落ち葉を退ければちょっとしたスペースになるのだ。

 僕はそこを遊びの拠点にすると決めた。


 木の枝や廃材を掻き集め、まずは骨組みを作っていく。太めの長い枝を地面に突き刺して柱にし、つるで縛って固定する。斜めに生えた木の幹に骨組みを立て掛け、そこに黒いビニールシートを被せて屋根とした。ところどころ穴が空いているが、ズラして二枚重ねにして塞いだ。小雨くらいなら凌げるだろう。


 ここは少し窪んだ場所で、森の中の通り道からは死角となっている。茂みに分け入らないと見つからない。


 僕は自分で作った拠点の出来栄えに満足し、ど真ん中に腰を下ろした。ポケットから今日の分のおやつである飴玉を取り出し、口の中に放り込む。


 あまり好きではないはちみつレモンの飴が、その日は格別に美味しく感じた。

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