第38話 神狩りとダンジョン殲滅
――神を狩る。
それは、行きの飛行機でフレアと話している時に生まれたアイデアだった。
フレア曰く、
「いい? 本来神の世界と人の世界は隔てられていて、互いに干渉することは出来ないわ。だからこそ、神は直接攻撃せずにダンジョンを作るという世界のルールに則って侵攻してきてるのよ」
大昔、人が世界の支配権を神から奪う事に成功した際に作られた世界のルール。
人と神、力の差があり過ぎる両者が同じ土俵で戦う為のいわば救済措置だ。
それは絶対的なもので、如何に神とて破ることは叶わない。
「……でも、私思ったのよね。今の勇者って旧冥王の力をそのまま使えるわけでしょ? 私が干渉して抑え込んだ《神滅スキル》じゃなくて、本物の神の力を。ならもしかして、今なら神に直接攻撃出来るんじゃないかしら」
……とのことだ。
以上回想終了。
というわけで、いつの間にか俺は絶対の世界のルールすら破れるとんでもない存在になってしまっていたらしい。
果たして俺は人と神、どちらに分類されるのだろうか。
最近ちょっと気を抜くと掴んだだけで物壊したりすることが増えて来たからなぁ。ワンチャン人かどうか怪しいかもしれない。
「とりあえず、神がどこにいるのかを探すところからだな……」
人の世界の外に広がるという神の世界。
そこに直接殴り込みに行ければ話は早いのだろうが、その行き方は流石のフレアも知らなかった。
地球の外には無限の宇宙が広がっているし、物理的にこうどっかの壁をぶち抜いて行くというのは難しいだろう。
色々と行き方を考えてはみたが、正直さっぱり見当がつかない。
というわけで俺はこう結論付けた。
「——よし。分からないのなら、知っている奴に聞こう」
と。
***
てわけで高速ジェット機で羽田空港に帰還した俺は、用意しておいたヘリに乗り換えた。
因みに、これはダンジョン省の用意したものではなく自腹でチャーターしたものだ。
俺がこれからやろうとしているのは政府の決定に反する事だからな。
1日貸し切りで600万くらいかかるが、今回の深層遠征で腐る程金が増えたのでもはやこの程度は大した出費じゃない。
因みに、フレアの方は心配いらない。
流石のジョージも股間を潰された直後にお痛はしないだろうし、フレアのスキルはかなり強力なものが多い。自衛くらいなら問題なくこなせるだろう。
ヘリに乗ってやって来たのは、都内にあるダンジョン。
ここは現在政府指定の未踏破ダンジョンの一つだ。
ダンジョン崩壊による被害が大きくなったことにより、政府は冒険者を総動員して各地のダンジョンをクリアしようと動いた。
日本国内で存在が確認されているダンジョンはおよそ200。その内100程はクリアされたが、残りは処分保留となっていた。
海ほたるダンジョンのように難易度が高すぎてクリアできないケースやら、後はダンジョンで利益を得ている人は無数に存在するので、壮絶な利権問題が起きているんだとか。
だがまあ、そんなのは関係ない。
俺は今からそれを破る。破りまくる。
手当たり次第にダンジョンを攻略しまくって、日本からダンジョンそのものを消し去ってやるのだ。
ダンジョンとは、神による地上の侵攻手段。
それをハイペースで壊され続ければその内どこかの神が焦って接触してくるだろう。
人類が負けた後もお前だけは助けてやろう、的な感じで。
「ま、ダンジョンオタクの俺が、まさかダンジョンを消して回ることになるとは思わなかったけどな……」
そんな風にぼやきながら、俺はステータスを全開にして、風のようにダンジョンの中を駆け抜けて高速で攻略していく。
スキルの覚醒によるパワーアップと、魔帝シリーズのセット効果で黒風の使用時間が伸びた俺に、もはや普通のダンジョンなど何の障害にもならない。
そうやってダンジョンを消してはヘリで速攻移動してを繰り返し、ガンガン攻略を進めた結果、丸1日かけて20個程のダンジョンをクリアすることに成功した。
下層のドロップやらルーレット報酬やらで収納カバンの容量はすっかりパンパンだ。
まあ金もアイテムもあって困るものではないし、貰える物は貰っておこう。
その後はヘリポートのある超高級ホテルでヘリの操縦者さんと共に一晩ぐっすり眠り、再びダンジョンクリアの旅へ。
そうして三日かけ、俺は関東から東北にかけてのダンジョンを殆どクリアしてしまった。
なぜ北上したのかというと、単純に一方向に進んだ方が猫宮さんたちの守備範囲が狭まって楽になるかなぁと思ったのと……後は勘だ。
ほら、東北って不気味な神話とか独自の信仰とか結構残ってたりするし、神が潜んでいるとすればそっちの方が可能性高いかなぁと。
因みに旧歌舞伎町ダンジョンだけは例外的に残してある。
あそこ無くなったらエリクサーの補給できなくなって困るし。
そうして辿り着いたのは東北の最北端、青森県。
その山奥にある、最近見つかった超高難易度らしいダンジョンをクリアしようとしたところで――
「……お久しぶりですね、古瀬伴治様」
遂に俺の前に、超巨乳巫女・樋代栞菜さんが現れた。
急に出て来た辺り、《転移》を使ったのだろう。
「よく平然と顔を出せたな。突然消えたくせに」
俺はそんな彼女を睨みつける。
接触してきたのは狙い通りだが、喜ぶのは何となく癪だった。
「姿を消した理由なら、もうご存知なのでしょう?」
「はっ……その様子じゃ、おたくの神様は余程焦ったみたいだな」
声を掛けて来た理由は明白。俺が壊したダンジョンがあのロリババ神の管轄だったのだろう。
淡々としていながらも、俺たちの間に流れる空気は張り詰めていた。
「古瀬伴治様。貴方を我々組織の本拠地へとご招待します。話はそれからに致しましょう。……神も、あなたと話したがっておりますので」
そうして俺は、不気味な山道を奥へ奥へと誘われていく。
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