有名ダンジョン配信者に逆恨みで突き落とされた【最弱の風スキル】使いの俺、奈落の底で覚醒して生還したら一躍時の人に!

くろの

1章 奈落の底

第1話 いじめられっ子、誘われる


「なあ古瀬。放課後ダンジョン見学行くんだけど、お前も行かね?」



「は……へあっ!?」



 それは、あまりにも唐突な出来事だった。

 

 というのも、俺、古瀬伴治(ふるせ ばんじ)はいわゆるガリ勉のいじめられっ子である。

 伴治とかいう変な名前のせいで、小学校の頃からバンバンジーだの、バンジージャンプだの、散々なあだ名で笑われてきた。

 よって当然友達もいないので、今日も今日とて教室の隅っこで独り息を潜める孤高のナイスガイと化していた。

 そんな俺に、クラスのトップカーストである陽キャ3人組がいきなり声を掛けて来たのだ。

 そりゃ、死にかけのウルト〇マンみたいな変な声も漏れるってもんだ。


「え……なんで俺?」

「なんでって……聞いたぜ。お前、学年で一枠しかない防衛大のダンジョン対策学科に推薦決まったんだろ?」

 

 思わず素で聞き返した俺に、意外な答えが返って来た。


「えっと……まあ、うん」


 隠していてもいずれ貼り出される事なので、俺は素直に頷く。


「お、やっぱマジなんだ。すげえ、未来のダンジョン管理官じゃん! なあ、頼むよ。今日配信する予定だったんだけど、解説役のコラボ相手が急に来れなくなっちゃってさぁ」


 確かに、俺は推薦を勝ち取る為にずっとダンジョンのことを勉強してきたし、面接もその知識のおかげで好感触だった。

 よって彼らの言っていることは間違っていない。間違ってはいないのだが……


(有原……昔から俺を下に見て散々いじめまくってたお前が、それを言うのか?)


 声を掛けてきた陽キャグループの中心、有原淳也(ありはら じゅんや)は小学校からの同級生にして、最初に俺名前をいじって来たいわば諸悪の根源である。

 ぶっちゃけ死ぬほど恨んでるので、本来であれば絶対協力したくないんだが……このエセ陽キャは最近縦型のショート動画アプリで何やらバズったらしくSNSでの人気を得ているのだ。

 有名YouTuberともちょくちょく絡んだりしていて、今やクラスどころか学校中の有名人。

 そんな奴に逆らった日には、俺のようなカースト最底辺は学校で人間扱いすらされなくなってしまうだろう。


「誘いは嬉しいけど……俺みたいなが一緒に付いて行って、本当にいいのか?」


 あくまで角が立たないように自分を卑下しながら、俺はやんわりと探りを入れる。


「やっぱ今まで色々言ってきたこと根に持ってるよな……ほんとごめん! 虫が良い話なのは分かってるけど、マジで困っててさ、力貸して欲しいんだ! この通り!」


 どうやら俺の言葉を責められていると受け取ったらしく、有原は顔の前で手を合わせて頭を下げてくる。


 クソ、長年のいじめられっ子体質のせいで人との会話が上手く出来ないな……

 だがまあ、この場合は結果オーライか?

 有原も真面目に頼んできてるっぽいし、ここで恩を売ればもしかしたら、卒業までの半年まともな高校生活が送れるかもしれない。

 彼女が欲しいとか親友が欲しいとか、そんな高望みは今更しない。

 だが俺だって一度くらい、話しかける度に嫌な顔をされたり……というかそもそも無視されたり、そんなことのない普通の学校生活を送ってみたいのだ。


「……分かった。俺でよければ力を貸すよ」


 そうして、俺は有原の提案に頷いた。

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