【The last page】〜それぞれの事情〜
紫風 春紀
第一章 Where was the real ?
…*…Prologue…*…
十九歳になる
……いや、〝遭った〟というよりも〝
めちゃくちゃになったぼくの体は、緊急搬送された先の病院で、医者が手をつくしてくれたけど、ダメだった。意識不明が続いたらしく、数日後、ついに医者が口ごもりながら
「息子さんは、おそらくこのまま……植物状態です」
母さんは
……このとき誰も気づいてくれていなかったけど、ぼくにはハッキリ聞こえていたし、見えてもいたんだ。
だからさ、告げられた張本人のぼくだって、心がズタボロに引き裂かれたし、混乱もした。
意識はちゃんとあるのに、いったいぜんたい、どうなっているんだよ! って。
かといって泣くに泣けない。頭を
すごくイライラしたなぁ。できることなら発狂したいとも、本気で思った。
怖くはない。どちらかと云えば、
母さんがぼくの瘦せ細った手を握りしめ続けてくれてるし、兄さんも父さんもそばにいる。
こんなかたちの死にぎわだけど、きみを想わずにはいられない。というか、ずっと考えていたんだ。
医療用ベッドで長いこと横になりっぱなしだったからさ、あらゆる事をあれこれ考えた。……なにがいけなかったのか? とか。
意味の無い答え合わせをしたり、自分と向き合ったりして、きみとの違った未来を想像していたんだ。
はぁーあ、……
紫穂が笑って幸せな毎日をすごしているなら、ぼくはそれだけで満足なんだ。きみの笑顔は最高に──綺麗だから。
ああ、ヤバいなっ!
もうその時が
……できるなら、もう一回だけでいいから、紫穂の笑顔が見たかったのに!
ぼくはずっとここで待っていたのに!
卒業式の日みたいに、最後の最後には走って来てくれるんじゃないかって、期待して待っていたのに、なんだよ、ちくしょうっ!
きみはぼくの最期に間に合わなかったのか、
それとも、そもそもぼくの死を
(ぼくの、心臓が、停止した音が聞こえる……)
──だけど、まあ、そういうのも、もういいや。つべこべ弱音をはいたり、考えたりする苦しみは、もういやってほど味わった。
だからさ、ごちゃごちゃしたもん全部ひっくるめて、飛び越えたうえで、ぼくの願いがたった一つだけでいいから、きみに届けばいい。
記憶のなかにぼくは生きつづけているから、
きみが苦しくなったら、その時は
ぼくを思い出のなかから
いつでも逢いに来たらいい
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