SHRINY DAYS ~神社巡りの日々~
隠井 迅
序
前詣 テンプルとシュライン
今現在、〈神社仏閣巡り〉や〈御朱印集め〉を趣味にしている方も多いにちがいない。かくゆう書き手もそんな一人である。
神社仏閣巡りにおける〈神社〉は、書かれているままなので、語に関する詳しい説明は不要であろうが、これに対して、仏閣は、文字通りに仏教の宗教施設を意味し、簡単に言ってしまうと、寺の事である。
日本人が海外旅行をする際に、たとえキリスト教を信仰していなくても、観光として教会を訪れる事があるように、神道や仏教を信仰していない海外からの旅行客が、神社仏閣を、日本文化への知見を広げるために訪れる場合も多々ある。
そして、神社や寺は、例えば〈ninjya〉や〈tempura〉のように、〈jinjya〉や〈tera〉と日本語の音をそのまま横文字にして用いているわけではない。
英語や仏語では、〈寺〉に対しては〈temple〉という同じ訳語が当てられている。ちなみに、英語は〈テンプル〉、仏語は〈ターンプル〉と発音するのだが、いずれにせよ綴りは同じで、そもそも〈temple〉は、キリスト教やイスラム教以外の宗教、例えば、ユダヤ教、ヒンドゥー教、あるいは仏教などの神殿や寺院などを表わす場合に使われてきた。すなわち、すでに、英語や仏語においては、仏教の宗教施設を〈temple〉と呼んでいたので、日本に存在している仏閣にもそのまま、この語が当てられたのであろう。
語の定義上、〈temple〉が、キリスト教やイスラム教以外の宗教施設を指し示すという事は、〈神道〉の祭祀施設である〈神社〉に対しても同様に、〈temple〉を用いても誤りではないように思える。実際、仏語では、神社を〈temple shinto〉と表現したりもするのだが、英語では、神社に関しては、〈shrine(シュライン)〉という訳語が当てられている。
そもそも、〈shrine〉とは、聖人の遺骨や遺物などを祭った聖堂や、それを収めた聖骨箱、あるいは、神聖視されている場、いわゆる〈聖地〉を指し示す語なのだが、仏閣と神社を敢えて区別する場合、英語においては、単に形容詞的な語句として宗教名を付けるのではなく、寺を意味する〈テンプル〉とは異なる語として、〈シュライン〉という語が採用されているようだ。
実は、書き手は、趣味として〈神社仏閣巡り〉をしているだけではなく、日本神話を題材にした作品の取材目的でも、神社を参詣している。そこで、書き手が神社を巡った日々の記録を、『SHRINY DAYS』という題名の随筆として綴る事にした次第なのだ。
ちなみに、〈shriny〉という形容詞は、英語には存在しない単語で、これは書き手による完全なる造語である。
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