ろーくーわっ!〜「自分」であるために〜
「そっか。今言わなくちゃいけないかぁ。」
そうぼんやりと天然キャラ風にあいつはつぶやいた。
「ここだと気まずいから、どっか人気のないとこ行こ!」
と若干期待を露わにした声で、俺を連れてった。
そこで見たのは、見たことないこいつの姿だ。俺は、自分の目を疑った。
(おいおい…まじかよw)
そう、こいつは男だったのだ。
誰もいないとはいえ、下半身を一瞬だけ露出した。陰茎をほんの一瞬だけ出したあいつの目は、死んでいた。なぜ死んだのかはなんとなく察した。
その後にカツラを外す。サラサラな髪の後ろも、めちゃくそに綺麗な黒髪だった。サラサラな黒髪は変わらないけど、長さが明らかなショートカットだ。俺もあれくらいサラサラになりたい。まっっっじでずるい。クソだるい。ほんまにあんなのなりたい。
こいつ、トランスジェンダーなんだな。そう悟るのも、時間の問題。
そして、俺は理解してしまった。こいつは、トランスジェンダーだ。
20人に1人で、決して珍しくないとはいえ、やはりびっくりしてしまう。
こいつ目と顔が死んでる。やっぱり嫌なんだろうな。
性別適合手術するにもお金がかかるし、そうじゃなかったら自分のプライドが傷つけられる。
今、これは何を言えば良いんだ?難しい。
何を言ったら傷つくかわからないし、救われるかもわからない。
1秒1秒がきっとあいつのプライドを傷つける。削り取る。
そんなことがあってはならないとわかっていても、やっぱり言葉を思いつかない。
一文字ミスるだけで、もしかしたらあいつが自殺してしまうかもしれない。
でも、何か言わないと。
「そっか」
その一言しか出なかった。
絶対しでかした。こいつは、きっとまた傷つくだろう。
そうして、俺の人生は幕を閉じる。
そう思っていた。
「まぁそういう反応になるよね〜」
案外能天気な返事。
あまりにもびっくりして、ちょっと面白かった。
現実は、そううまくいかないと思ってたけど案外うまく行くのおもろい。
俺は、目玉が0.00000001mmくらいになるみたいに、びっくりした。
「そ、自分トランスジェンダーなんだ〜
一応肉体は男子。でも、心は女子」
そう言いながら、彼女は…いや彼か。そう呟いた。
「トランスジェンダーってさ、辛いんだよね。LGBTQの中に入ってるけど、やっぱりレズとかゲイとかみたいに普通に生きていけない。
更衣室は男女どちらかしかない。体は男だから男行かないといけないのに見た目が女だから更衣室にほとんど入れない。」
そんな風に、こうやって生きてきた様を語ってきた。
辛いだろうな。俺にはわからない領域だけど。
わかってやりたい。助けてやりたい。母性本能が働きかける。
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