第17話 また王宮

作戦の終了後、特務機関オフィスに戻ったその日に王宮から呼び出しがあった。

「激戦を戦い、帰ったその日に呼び出しかよ。もう何日かゆっくり体を休める日が欲しいなぁ」茜は愚痴を言ったが、報告を待っている王を待たせるわけにはいかないのですぐに王宮に向かった。王宮に向かう道すがら茜は憂鬱な顔をしていた、報告内容が気の重くなる内容だから。

 王宮に着くと謁見室に通されしばらく待っていると王が入ってきた。王との形式的な挨拶を交わしたあと、本題に入った。

「裏切り者は見つかったか?」

「見つかりませんでした」

「そちの能力を持ってしても見つからなかったか?」

「誤解のないように言うと裏切り者など最初からいませんでした。レプに味方して利益を得るものなど、そもそもいないのですから・・・・」

「では余の情報が間違っていたと?」

「正確に言うとレプの侵略により利益を得たものがいます。しかし、その者はレプに情報を渡してもいないし、ましてや味方などしていません」

「その利益を得たものとは誰か?」

「・・・・」茜は返事をわざと遅らせた。

「順番に説明します。まず第一にレプが中国行政区に進撃したとき、行政官はその進撃を食い止めるか、進撃速度を遅れせる必要がありましたが、行政官は自らの無能を露呈しレプの進撃を許した上、大勢の犠牲者を出したため解任されました。また行政官を任命した議会に対し市民から責任問題を追及され、議員たちは互いに責任の擦り合いを続け、後任の行政官を選ぶことすらできないほど混乱して、議会は機能停止状態となっています」

「第二にレプの進撃を食い止めたのは陛下の部下である貴族たちであり、行政は陛下が遣わした代官が行なっています。当然市民の支持は王に集まることになります」

「これらにより約九百年続いた議会はその役目を終えて、王による中央集権が始まろうとしています」王は黙って茜の話を聞いていた。顔色も変えずに。

「レプの進撃により中央集権化と言う利益を得たのは、王よ、あなたです」

「よくぞ見抜いた。ではなぜ卿に裏切り者を探せと言う勅命を出したと思う?」

「それは私のテレパシー能力と捜査能力が今後、王のお役に立つか試したんだと思います」

「そこまでわかっていたか、今度出す勅令はさらに難しいものとなるだろう。こころせよ。下がって良い」

 王宮の出口に向かって歩いていると、メロン女が声をかけてきた。

「マーシャル男爵、ごきげんよう。今日は私のお茶会に付き合っていただけますわね」メリーシープ第二王女が話しかけてきた。

「メリーシープ王女様、ではご一緒させていただきます」イヤな女だったが、相手は王族なので邪険にするのは得策ではないと思った。また、お茶会と言ったから、他にも貴族の娘たちがいるに違いない。


 甘かった、テーブルには椅子が二つしかなかった。給仕が高級そうな紅茶を入れてくれたので一口飲んだが、普段特務機関で飲んでる紅茶との違いはわからなかった。

「テーブルにあるお菓子は全部私が好きなお菓子なんだけど、あなたの口に合うかしら?」自分の好みを押し付けるな!と茜は思った。

「先の戦ではマーシャル男爵は大活躍だったと聞いています。お父様から何かご褒美でもあったのかしら?」報告内容は極秘扱いになるだろうから褒美がもらえるとは思わなかった。

 あれ? 視界の端から黒いものが広がり、見える場所がだんだん小さくなっていく、ヤバいと思った瞬間意識がなくなった。


 気がつくとそこは豪華なベッドの上だった。しかも裸で、おまけに手足がベッドに紐でくくられてる。よく見るとムームー姿のメロン王女もいる。

「茜ピーンチ!」と心の中で叫んだ。

「さあ、私を楽しませてね」王女の舌が茜の顔に近づいて、頬を舐めた。

「あなた、あっちの毛も栗色なのね」王女の舌が下半身に向かおうとした時、

「私のカワイイ仔豚ちゃん、もう逃さないわよ」この言葉が茜をマジにさせた。太りやすい体質の茜に豚と言うワードは禁句だった。

「あん!今お前なんつった!」茜は馬鹿力を出し、手足を縛っていた紐を引きちぎり、王女の前で仁王立ちになった。全裸で。

「豚はお前だろ、このメス豚め!」茜は引きちぎった紐をムチのようにして王女のお尻を叩いた。

「あぁ、やめてお姉様〜」メロン王女が悲鳴をあげた。

「何がお姉様だ、お前の方が五つも年上だろ。婚期が遅れてるからってこんな遊びしてんじゃねーよ」

「あん! お前今なんつった!」今度はメロン王女がマジギレした。二十四歳にもなって婚約話が一つもない王女には婚期が遅れてるはNG Wordだった。

「大きなお世話じゃこのボケー」と言いつつパンチを繰り出した。茜はパンチをかわして頂肘を繰り出した。しかし王女は茜の腕を取り、茜の腹に膝蹴りを入れた。すかさず王女は左フックを茜の顔に叩き込んだ。茜は鉄山こうで応酬して、王女との間合いをつめた。茜は王女を素人じゃないと判断した。あっちの意味ではなく・・・・

 部屋の外では二人の侍従が

「ずいぶん激しいですな」

「お二人ともお若いから」と、のんびりした雰囲気で的外れな会話をしていた。

 その間も、二人は殴る、蹴る、関節をとりにいく動作を繰り返した。もやはコブラvsマングースの戦いと化していた。いやこの場合、マングースvsマングースが正しいかもしれない。

 しばらくして茜が判定勝ちを収めた頃、

「今日はこのぐらいで勘弁してやる」と倒れながらメロン王女が負け惜しみを言った。

「私の制服と下着は?」真っ裸で帰るわけにもいかないので、茜は聞いてみた。メロン王女が指を刺した方に行ってみたが下着は見当たらず、制服はナイフのような物で縦に切られていた。よほど飢えていたんだなと茜は思った。

「下着と洋服借りるぞ」下着収納ボックスらしきものを見つけて開けてみた。

「・・・・」ショーツに、子供でもあるまいしプリントが入っていた。豚のキャラクターだった。ブラは諦め、何事もなかったように収納ボックスを閉め、次にクローゼットに向かった。中には豪華なドレスがたくさん掛けられていた。もちろん豪華なのは収めるべきメロンの方だったのだけれど。茜は適当にドレスを取り出して着てみた。

「しまった!ベアトップのドレス取っちまった」茜は下着収納ボックスからブラを取り出し中にパッドを左右それぞれ五つ入れて着てみたらドレスは下にずれなくなった。茜のプライドはドレスの胸の部分からブラの形をした羽が生えて飛んでいった。

 茜は堂々とドアから出て行て王宮を後にした。顔と腕はアザだらけだった。その様子を見た侍従たちは新しい性の解放を想像した。

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