第7話 なぜ戦うか

茜がゴシック風の制服を着てから半月がすぎた。基本カワイイ制服だがもっとカワイくデコレーションすることを考えている。

 部下が茜のもとに書類を持ってきて直ちに自分の席に戻って行った。書類に目を通すと反射的に薄目になってしまう。ある貴族の婦人が付き合ってる若い男が実は獣犯マニアだとか、ある貴族の子弟は洋服の上から女性の裸が観れると言うインチキメガネを買って悪戦苦闘しているとか、ある貴族に飼われている犬が食べているのは実は猫缶だとか、どうでもいい情報ばかり上がってくる。こんな情報ばかり集めて何を分析しろと言うのだ。特務機関と言いながらやってることは興信所と同じである。

「ハメット準男爵、我らが騎士団には情報を扱う部門は他にないのー」茜の気力は言葉と共に口から出ていった。

「騎士団には戦場に赴き、戦闘内容を記録、分析し、戦術方法を立案、計画する部署はありますが我々特務機関とは扱う情報の内容が異なります」

「ああ、そう、分かったわ」と言って、茜は微笑みながら手を振った。が、今度は茜自身の心がエクトプラズムの様に口から出ていった。

 茜は席を立ちお茶を入れにいった。ここにはある飲み物は紅茶だけでコーヒーは無い。周りの者に聞いたが理由は分からなかった。コーヒーが飲みたかったら旧王宮の外に出てカフェで持ち帰り用のコーヒーを買うしかなかった。ま、イングランドが世界を統一したんだから、しゃーないしゃーないと茜は婆くさいことを思った。

 茜が紅茶をすすっていた時、ポップ伯爵から呼び出された。

「マーシャル男爵入ります」茜がポップ伯爵のオフィスに入ると、中にラガー子爵がいた。

「ラガー子爵にも話していたんだが、近々レプの集積地を破壊目標とした奇襲攻撃が行われる。この作戦において王命により偵察部隊を出すことになった」

「マーシャル男爵には16人の騎士を率いて作戦に参加してほしい」茜はあの馬鹿げたことが書いてある書類から解放される機会だと思い、王命を拝命した。

「スカーレット卿」ポップ伯爵からいきなり名前で呼ばれたので、茜はビクッとした。

「卿は他の地球から来たと聞き及んでいる。ここの地球の戦いに参加する義理はないはずだ。あえて問う、なぜこの戦いに参加する?」こう問われて茜は本音を言った方がいいなと判断して、伯爵の問いに答えた。

「私には夢があります。王から戴いた荘園でレプの牧場を作りレプの肉を使ったステーキレストランチェーンを経営することです」茜は小さい胸を張って言葉を続けた。

「この夢を達成することが私の戦う理由です」どうです壮大な夢でしょと自慢げな茜に対し、男二人は眉間を手で押さえて左右にふっていた。

「マーシャル男爵もう行っていい」ポップ伯爵は疲れた声で言ったあと不安そうな顔をした。

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