第14話 Dear(14)
それから彼女と陶芸の話を夢中でした。
作品の一つ一つを丁寧に説明をしてくれて
そんな彼女の横顔を見つめているだけで、気持ちがあったかくなった。
「あ、ごめんね。 仕事そっちのけになってしまって、」
拓馬は我に返ったように言った。
「いえ。 もう今日はいいよって先生にも言われていますから、」
拓馬の脳裏に
『チャンス!』
と誰かが気合を入れた気がした。
「チケットのお礼に。 ゴハンでも。」
いつも女の子を誘うように
軽く言ってしまった。
「え、」
一瞬戸惑ったような彼女の表情を見て、焦った。
「や、ごめん、忙しいよね。」
いつもだったらこんなリアクションで引いたりしない。
好みの女の子がいたら、けっこう強引にプッシュしてきた。
詩織はニッコリ笑って
「いいえ。 暇です。」
そのあっけないほどの返事にまた体中の力が抜けた。
と言って。
普段は女の子を食事に連れていくのも、おっさんたちが行くような焼き鳥屋なんかに行ったりしているのに
こんなお嬢様を連れていけるようなおしゃれな店なんか知らない。
個展が開かれているのは渋谷。
この辺は昔よく友達と飲んだりしていたので、店は知っているけれど
それだって
どーなんだって感じのトコばっかで・・
「さて・・どこに行こうか・・」
拓馬はビルを出てふっと口にしてしまった。
「どこでもいいです、」
詩織は気を利かせてそう言ってくれた。
「おれ、飲み屋しか知らないんだよな~~~、」
思わず本音を漏らすと
「飲み屋さんでもいいです。」
詩織は明るくそう言った。
「えっ、いいの???」
けっこうすごい勢いで彼女を見てしまった。
「そんなに呑めませんけど、」
少し恥ずかしそうに笑う彼女が
ほんとに
ほんとに
かわいかった・・
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