My sweet home~恋のカタチ。23 --jade green--

森野日菜

第1話 Dear(1)

「あ、たーくん!」



ななみは白川家の居間で本を読んでいたが、外から戻った拓馬に気づいて嬉しそうに立ち上がった。



「おう。 ななみ。 なんか背え伸びたなあ。」



拓馬も嬉しそうにななみの頭を撫でた。



「でも、まだクラスで一番チビなの。 このまえもよその人に『小学校3年生?』とか言われて。 もうすぐ6年生なのに、」



ななみはちょっと膨れた。



「女の子はちっこいのがカワイイって。」



「え~? そうかな~。」



「そうそう。 おれはちっちゃいななみが好きだから、」



拓馬の笑顔にななみの表情は花が咲いたように明るくなった。



「今日は? こんな時間にどうしたの?」



拓馬は時計を見て言った。



もう夕方の6時を指している。



「塾から帰って来たの。 このまえおばあちゃんちにカーデガンを忘れちゃったから取りに寄ったの、」



「塾? ななみ、塾なんかに行ってるの?」



そこに母がやって来た。



「ななみはさあ、学校も休みがちでしょう? 近所に個人塾があるからってこの前から通うことにしたんだって、」



「あー、そうなんだ。 でも、塾なんか行ったらまた遅くなったりするだろ? 大丈夫なのか?」



「うん。 ここのところあんまり発作も起きなくなったから、」



ななみは屈託なく笑った。



志藤家の次女・ななみは生まれた時から喘息で身体も弱く



学校も休みがちだった。



1年に1度は激しい発作で入院をしたりして



今もみんなを心配させていた。



「でもね。 ななみはすっごくデキがいいんですって! その塾の先生もびっくりしててね。 私立中学を受験してみたらって言ってくれて、」



母は自分の娘でもあるまいにやや自慢げにそう言った。



「へ~~~、すげえじゃん。」



そこに長男・和馬の妻である優花子が拓馬にお茶を持ってきた。



「でも。 ななみちゃんは遠くの学校に通ったりするのも大変だからって・・・ゆうこさんたちは考えてないようなんだけど。 お義母さんの自慢なんですよね~、」



と、母を見て笑った。



「ま。 兄妹たちの中でもゆうこはデキが良かったからねー。 幸太郎ちゃんだって国立大学出てるし。 ひなたはほんっと勉強できないってゆうこも嘆いてたけど、ななみはしっかり親の血を引いてるね、」



「バババカ・・」



拓馬は頬杖をついて呆れて言った。




「じゃあ、帰るね。」



ななみはカーデガンを持って立ちあがった。



「あ、おれ送ってくよ。」



拓馬も立ちあがる。



「え、いいよ・・すぐそこなのに。」



「暗いから。 危ないだろ、」



「じゃあついでにモーリスの散歩の頼むね。 今日は莉子ちゃんも部活で遅いって言ってたから、」



母に余計な用事を言い遣って、ちょっと迷惑そうに眉間にしわを寄せた。



「しょーがねえなあ。」



と、そこにあったリードを手にすると、いきなりどこからかモーリスがすっ飛んできて拓馬に縋りついて尻尾を振った。



「おまえはエスパーか?」



拓馬の言葉にみんな笑った。


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