第22話 夢
「まあ、謝ってくれるんだったらいいけど。それで……今日、同じ布団で寝ない?」
「はあ?」
なんという申し出だ。俺にはその申し出を受け入れることは出来ねえ。
「すまん。無理だ」
と、断っておく。流石に年頃の男女が二人で寝るのは完全なるアウトだ。それは恋人がするものだし、俺たちはそもそもカップルじゃねえ。ティアはおそらくそう言う意味では言っていないと思うが、だが、それにしてもだ。
本当にティアには申し訳ないが、俺の理性が持つかわからないしな。
「本当にだめなの? 別に一緒に寝るのくらい良くない? それに今までもさ、隣で寝てるみたいなもんじゃん」
そう言って、ティアは二つのベッドを指さした。
「だめだ、男女で一緒に、一緒の布団で寝るのなんて許されざることなんだ」
「え? じゃあだめなの?」
「ああ」
「でもさあ、そう言うってことって、私のことが好きなの?」
「はあ!?」
何を言っているんだ、この女神は。どう言う事もできねえ。もしかしてこの状況詰んでねえか?
「俺は……」
本当どう返したらいいんだ。くそ、こんなに難しい質問投げかけてくんじゃねえ。俺にどうしろと。
「人としては好きだ。だけど、恋愛対象とは見ていない。
「じゃあ、一緒に寝てもいいんじゃないの?」
「ばか、そう言う話じゃねえ」
「えー、いいじゃん。寝ようよ」
そしていろいろと言いあいをした結果、一緒に寝ることになった。俺にはだめだった、断るという行為が出来なかった。まああでも、よく考えたら兄弟で寝てる人もいるし別にいいのか?
そして結果的に一緒に寝ることになったが、
「寝れない……」
隣ですやすやと寝ている美少女女神よ! どうやって寝ろと言うんだ。寝れるわけがねえ、こういう時は羊でも数えていたらいいのか? 羊が一匹、羊が二匹、羊が3匹、羊が4匹、羊が……
寝れん!!
こいつ、俺の期も知らんとぐっすりと寝やがって、どうしろと言うんだ、本当にさあ。
はあ、目を閉じて、無心になれ、俺よ。
「雅夫さん……」
こいつ、寝言を言って俺にくっついてきやがった。だから嫌だったんだよ。異性として意識してるとかしてないとかとは違う話だろ。
やべえ、ティアの肌の感覚が俺に来ている。これじゃあ、寝れるわけがない。
もう。寝るの諦めるしかないのか? でも明日も学校だし。困った、本当に困った。
困ったなんて言っている場合じゃねえな、寝なければ。考えても何も解決策は出てこないのだ。
ティアが尚もくっついてきている。
しかもこれ、若干ティアの胸が俺の肌に当たっているんだが。
ティアの胸はそこまで大きくない、どちらかと言えば貧乳と言えるだろう。知らないけど。
このままじゃあまずい、何とかティアに離れてもらわないと。ティアこんなに寝相悪くはなかったと思ってたのに。
どうしようどうしようなんて思っていると、ティアが寝返りを打って向こうに行ってくれた。これで少しだけましだ。良かった。これで寝れるだろう。
「雅夫さん、付き合おう!」
「え?」
「付き合おうよ! 男女として」
「それってカップルという事か?」
「もちろん!」
「いや、駄目だ」
「なんで?」
「俺は、お前の事そう言う……」
「だめなの?」
ちくしょう可愛いな。
「お願い! 付き合って?」
そう、ティアが上目使いで頼んでくる。男子としてこれに耐えうる方法はない。
「分かった……」
「え?」
「付き合うわ!」
「分かった。じゃあ、早速雅夫さんのお父さんとお母さんに付き合う報告しようよ」
「え? いきなり?」
「いいでしょ」
「まあいいけど」
「じゃあ行こう!!!」
「あ……ああ」
そして俺たちは俺の両親のもとに向か……。
その瞬間目が覚めた。ティアが隣ですやすやとp寝ている。
夢!? 夢だったのか? 嘘だろ、夢!? 夢!? 嫌、なんか変な気持ちだ。
もちろんティアとはそういう関係ではない。ただ、そう言う夢を見てしまったという事実が俺に重くのしかかる。
俺は知らないうちにティアを恋愛対象に入れていたのか。
どうしよう、ティアが起きて俺に話しかけた時にどういう顔をすればいいんだろうか、俺はどういう返事をしたらいいんだろうか。
夢と言うのは考え事だと俺は捉えている。脳が寝ている間に考えていることと。
と言うことはティアとカップルになりたいという欲望が俺の中にあったということを示唆しているということになる。
はあ、どうしよう。どうやってこの変な気持ちを封印すればいいのだろうか、どうやって、封じ込めれば……
「おはよう、正雄さん!!!」
早速その時が来てしまった。悟られてはだめだ、夢でティアと付き合う夢を見たなどとは。
ばれないように堂々と、堂々と、
「ああ、おはひょ」
「……」
「……」
「噛んだ?」
「噛んだな。すまん」
堂々とできなかった。
「まあ、いいや。正雄さんと遊べれば」
「ああ、そうだな」
無理に考える必要なんてない。どうせ俺とティアは付き合う事なんてないんだ。このまま平常心でいれば。
「じゃあ行くか」
と、家を出た。
「今日も学校楽しみだね!!!」
「ああ」
「ね! 手繋ご!」
「え?」
流石に今の状態で手なんかつながれたらどうしようもねえぞ。
「だめなの?」
「はあ、仕方ねえな」
と手をつなぐ。しかし、やりにくい。あの夢を見た後だと、どうしても意識してしまって、ティアの手の感触が俺をドキドキさせてしまう。これじゃあ、だめだ。俺の気力が持たねえ。
さて、耐えるか。頑張って。
「ねえ、今日はどこ行く?」
「今日も放課後どっか行くのか?」
「うん!」
駄目だ、笑顔がまぶしい。意識しないようにしたいのに、意識してしまう。
「私はね、今日もルティス抜きで何かやりたいんだ」
「ルティスは仲間に入れてあげないのか?」
「私は二人がいいもん!!」
駄目だ、そう言う気持ちじゃねえ。友達としてだ。も言う俺のこの変な気持ち消えてくれ。
そんな俺を横目にティアは「水族館は行ったしなあ」と、次に行く場所を考えている。
「じゃあさ、山登りする?」
「じゃあ山登りにするか」
と、今日のお出かけは山登りになった。
そして学校。
「おはよう!! る……浩美!」
「おはよう、真里」
浩美が返事をした。
「ん? ちょっといいかしら、高塚さん」
「俺?」
「なに? 私の友達とるの?」
そう真里が俺の目の前に出る。
「ちょっとだけいいかしら。別に時間かけさせないから」
「まあ、それならいいけど」
そして、浩美の手によって教室の外へと出された。
「あなた、意識してるわね」
そうだった、女神は心を読めるのか。くそ、油断した。
「くそとも思ってるわね」
「それやめてくれ!!」
「どれでどうなの?」
「これはただの気の迷いだ。すぐに治る」
「治らなかったら? 私はティアに恋心のあるあなたとティアが友達関係でいることはだめだと思うわ」
「……」
そう言われては、何も返す言葉がない。俺も同じ考えなのだ。
「でも、もしティアと恋仲になるんだったら私は構わないわ。私が言いたいのはなあなあではだめっていう事」
「そうは言われてもなあ……これはただ一緒に寝たせいだ」
「それが信用できるの?」
「ああ、たぶんな」
「……まあいいわ。あなたとティアがどうなろうと、あなたたちの勝手だし」
「そりゃあどうも」
と、教室の中に戻った。
「どんな話してたの?」
と、入ると早速真里に話しかけられた。それを言ったら俺は終わるんだよ。
「昨日あの後真里と何をしてたかと言う話をされただけだ」
「えー、本当にそれだけ?」
勘が鋭いな。
「それだけ」
嘘をつくことに若干の罪悪感は感じたが、俺のウソがばれてはとんでもないことになる。少なくとも共に過ごすことは出来なくなるかもしれん。
「という訳だ、安心しろ」
「私が嫉妬してると思ってるの?」
「ああ」
「私はもう大人だからそんな嫉妬なんてしないよ」
ふう、何とかごまかせたか。
そしてホームルームが始まった。いつも通りの日々が始まる。後違うのは……
「じゃあ、ここからは自習ね」
と、自習の時間を設けられたことだ。自習の時間は勉強の事なら何でもしてもいいということになっている。
「じゃあ、一緒に自習しよ」
「私もいいかしら」
と、またまた二人に勉強を教えることになりそうだ。まだ昨日に比べたら勉強を教えるのは楽だが、今は真里との夢での件もあってなんとなく気まずい、しかも浩美は俺の例の件も知っている。そんな中教えるのはなかなかきついものがある。
あの夢さえ、あの夢さえなかったら。
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