第26話
「美恋!どんなエプロン持ってきた?」
調理実習当日。ジャージに着替えてから家庭科室に向かう道中、隣を歩く小春が聞いてきた。私は手に持っていた紙袋から最近新調した淡いピンク色のエプロンを取り出して見せる。
「調理部入ったから買ったんだ。シンプルだけどかわいいよね。」
「そうだね、かわいい!私は家にあったやつ持ってきた!」
歩きながらリュックサックの中を探り、青いギンガムチェック柄のエプロンを小春が取り出した。
「お、小春のもかわいいね。実習、楽しみだね。」
「本当だね!楽しみ過ぎて昨日眠れなかったもん!」
通りで今日は授業中やたら船を漕いでいたわけだ。苦笑しながら歩いていると、家庭科室に到着した。中はもうすでに先輩方が来ているようでにぎわっている。
「お疲れ様です!」
小春の声に先輩たちがおつかれ、と声をかけてくれた。適当な椅子に腰かけてから、先輩に倣ってジャージの上にエプロンを着て、三角巾を装着する。
「皆やっほ~!お、もう着替えてる子が多いね!」
ジャージ姿の鈴木先輩と深瀬先輩が家庭科室に入ってきた。制服姿しか見たことがなかったので、ジャージを着ている深瀬先輩は新鮮だ。慣れた手つきで紺色のエプロンのひもを結ぶ仕草に思わず見惚れてしまい、ドキドキした。
全員着替え終わってそろったところで、もう一度作り方を復習した。今日の鈴木先輩と深瀬先輩は新年度初の調理実習ということでサポート役に回るらしい。
「じゃあ、各グループ材料を前に取りに来たらスタートしていいよ!何かあれば力ちゃんか私に言ってね!」
鈴木先輩の指示を聞いてから、黒板前の長机に材料をとりに行く。私が属するグループは島田君と小春と私の3人だ。
「じゃあ、始めよっか。お菓子作りは計量が命だからね!」
小春が話しながら水を計量カップで量っている。よくお菓子を作るという小春がいてくれて心強い。島田君は棚から取り出したボウルに慣れた手つきで卵を割りいれた。
「島田君も普段料理するの?」
私は卵を割りいれたボウルにホットケーキミックスを入れながら島田君に話しかける。すると島田君は照れたようにはにかみながら言った。
「一応ね。昼飯の弁当は自分で作ってる。」
「すっご!私なんて親にまかせっきりだよ~。」
横で聞いていた小春が褒めたことで島田君はますます照れ臭そうだ。小春が汲んだ水もボウルに加え、ゴムベラでしっかりと混ぜ合わせる。思ったより生地が重くてボウルからホットケーキミックスを少しこぼしてしまった。でも小春が「これくらいなら気にするレベルじゃないよ!」と言ってくれたので、何とか生地は完成した。
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