第23話

「お、皆そろったね!じゃあ力ちゃんから説明をどうぞ!」

鈴木先輩が椅子に座りながら深瀬先輩に話を振る。深瀬先輩は急に話を振られたことに苦笑しつつ話し始める。

「駅前のスーパーに行くんだけど、買うものの担当を決めてレジ前で待ち合わせっていう形をいつもとってるんだ。今日買うのはホットケーキミックス、バター、はちみつ、卵、いちごの5個だからちょうど一人一つ担当になるね。」

「昨日私たちが適当に決めた担当でいいかな?」

鈴木先輩の問いにうなずく。私はホットケーキミックス、小春はバター、島田君ははちみつ、鈴木先輩は卵、深瀬先輩はいちごの担当になった。

目的地の駅前のスーパーはいつも登下校時に外観を見るだけで、中に入ったことはない。小春と島田君も入店経験はないらしく、初体験の場所に期待を膨らませているのかワクワクしたような表情を浮かべている。きっと私も同じような顔をしているだろう。

「じゃあ、そろそろ行こうか!各々外履きに履き替えて、校門に集合ね!」

クラスや学年で下駄箱の位置が違うため、校門での再集合となった。小春と共にローファーに履き替え、昇降口を出て校門に向かう。部活に行ったり帰宅したりする生徒で校門までの道は意外と人が多い。

「深瀬先輩、特に美恋のメイク姿に反応なかったね。やっぱり男子って鈍感なのかなあ。」

小春は不服そうに頬を膨らませている。そんな小春をなだめるように、本当は少しがっかりしている自分を慰めるように私は言葉を紡いだ。

「ちょっとの変化だし、しょうがないんじゃない?」

「そうかもだけど、乙女心的には気づいてもらいたいじゃん!」

そんな話をしていると、校門が見えてきた。すでに鈴木先輩と深瀬先輩、それに島田君は合流しているようだ。一旦話をやめて駆け寄る。

「ごめんなさい、お待たせしました。」

私が謝ると、鈴木先輩が「私たちも今着いたところだから大丈夫!」とからっと笑った。

「皆そろったし、出発しようか。10分くらいで着くと思うよ。」

深瀬先輩が踵を返し、校門の外に向かってゆっくりと歩を進めたため着いていく。


10分ほど歩くと、目的地のスーパーに到着した。入り口で別れ、各自コーナーへ移動する。初めての場所のためきょろきょろしながら歩いていると、偶然にも粉系統が売っている場所が見つかったため足を止めてホットケーキミックスを探す。

(お、あった!これでいいんだよね?)

買うべきものとして昨日グループチャットに送られてきた写真と見比べると、同じ商品だった。一安心した私はレジ前で合流しようと通路に出ると、ばったり島田君と会った。手にはまだ何も持っていない。

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